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【水上紀行の為替相場の本質】第2のリーマン・ショックは現実に?

2015年12月8日 19:00

ユーロ/ドル

 ある情報が耳に入ったのは、しばらく前のことでした。それは、2015年6月に米大手格付け会社スタンダード&プアーズ・レーティングズ・サービシズ(S&P)が、ドイツ銀行の格付けを2段階下げていたということでした。

 ドイツ銀行といえば、ドイツ最大手の銀行であり、なおかつ、世界でもトップクラスの銀行です。

 このドイツ銀行が、デリバティブ(金融派生商品)を使って、ギリシャの債務の保証人という形になっており、ギリシャがデフォルト(債務不履行)に陥れば、ドイツ銀行に無制限の支払い義務が生じることから、2段階の格下げになったもようです。さらに調べてみると、ドイツ銀行のデリバティブ取引の残高は75兆ドルにのぼり、ドイツのGDP4兆ドルをはるかに上回っているということが判明しました。

 そして、10月末に、ドイツ銀行は、従業員8万人のうちの3万5000人を、これから2年間で削減すると発表しました。従業員数のほぼ、半分を削減する一方、デリバティブ取引の残高が天文学的な数字というミスマッチは、いやが上にも、頭の中で警戒信号が点滅しました。その危機の規模といい、世界を巻き込んだ金融危機の再来の可能性があります。

 さらに、ドイツ銀行のみならず、既に大スキャンダルとなったフォルクスワーゲンの不正問題も発覚し、同社に最大で180億ドル(約2兆1600億円)の制裁金が米当局から科せられる見通しとなっています。

 しかも、ドイツの輸出依存度は、対GDP比で44.8%と日本の17.1%をはるかに上回っています。また、ドイツはGDPの10%を自動車産業に依存しているということで、この点からも、フォルクスワーゲンの世界的な販売不振が続けば、ドイツ経済に多大な悪影響を及ぼすことになるものと思われます。

 フォルクスワーゲンの場合、同社の従業員数は55万人もいます。もしもドイツ銀行同様の大規模なリストラをすることになれば、従業員数が多いだけに大きな社会問題にもなりかねません。難民受け入れなど言っていられないような事態に陥る可能性も、今後のドイツにはあると考えています。

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 いずれにしましても、ドイツ発のリーマン・ショック級の危機の発生に対して、心して備えておくべきかと思います。為替では、ユーロ/ドルは、ドイツ銀行危うしがさらに表面化してくると、大きく下落するもの思われます。

 テクニカル的に申し上げれば、2014年5月からの下落が、今年3月にいったんの底をつけたあと踊り場を作ったものの、11月から下落トレンドを再開しているもようです。当面は、1.0000がターゲットになるものと思われますが、たぶんそれでは収まらず、来年はさらに0.9000を目指すものと思われます。

ドル/円

 ドル/円は、2011年の東日本大震災の発生により、日本国内すべての原発が停止し、代替エネルギーとして石油や液化天然ガス(LNG)を大量輸入することになったため、日本の貿易収支は赤字に転落しました。そして、ドル/円相場は、貿易赤字になることによって、それまでの貿易黒字の時代とは全く異なる展開となりました。

 つまり、グイグイと押し上げるように大幅に上昇した後も、それ程の調整的な下押しがないままに高止まりしました。これは、貿易赤字になると輸入の方が多くなり、海外への輸入代金支払のためのドル買いが増えるためで、それまでの、物を輸出して代金をドルで受けとって円に換える、つまりドル売りが多かった時代とは全く異なりました。

 日銀の金融緩和もあって、2012年から3年半で約50円弱のドル高円安となりました。ところが、2014年7月から原油が急落し、これによって、2014年後半、さらに2015年に掛けて、貿易赤字は劇的に減少しました。

 これにより、今までの貿易赤字によるドル買いは大きく後退しており、つまりドルの下支えは脆くなっています。また、ユーロ/ドルの項で述べましたように、ドイツ発のリスクが発生した場合、リスク回避の円買いが大きく出るものと思われます。

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 尚、今のところ高値圏を維持しているのは、まさに3年半という短期間に50円弱もの上昇をしたためだと見ています。たとえて言えば、巨大なタンカーは、曲がるにしても、時間を掛けて方向転換をするようなもので、ドル/円も反転するにはそれ相応の時間がかかるものと思われます。

 ただ、いったん下げ始めると速いと思います。当面110円近辺を目指すものと思われます。ところで、中国の景気後退により、中国向け輸出の減少で貿易赤字が増えるということは、実際に起きています。ただし、原油安による貿易赤字の減少の方が、はるかに貿易収支に与える影響は大きく、貿易赤字の減少は、多少のブレーキはかかったものの、継続するものと見ています。

ユーロ/円

 ユーロ/円は、ユーロ/ドルとドル/円を掛け合わせた通貨ペアです。既に申し上げましたように、ユーロ/ドルは当面1.0000、さらに0.9000を目指すと予想しました。一方、ドル/円は、110円を目指すと申し上げました。

 たとえば、ユーロ/ドルが1.0000、ドル/円が110円になったとしても、ユーロ/円はこれらの掛け算ですから、110円まで下落することを意味します。

 つまり、ユーロ/円は大幅に下落する可能性があります。今一番懸念していることは、ドル/円が2012年から50円弱上昇したわけですが、この時、ユーロ/円も約55円上昇しています。

 しかし、ドル/円とユーロ/円の決定的な違いは、ドル/円は実需取引が中心なのに対して、ユーロ/円は投機が中心です。そして、実需中心のドル/円で投機ポジションは限られるのに対して、ユーロ/円は投機のポジションがまだ大きく残っている可能性が高いということです。

 これでドイツの問題が明らかになった時、ユーロ/円は、マーケットから逃避しようとするパニック売り(リスク回避の円買い)に見舞われることになると思います。ユーロ/ドルが1.0000を割り込み、さらに0.9000を目指すなら、ユーロ/円はさらに100円を目指す可能性があります。ドイツ人の友人がつぶやいた「この冬は、いつになく寒くなりそうだ」と言った言葉が、重く心に残ります。
(2015年11月3日執筆)

※「マネーポスト」2016年新春号に掲載

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