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高橋洋一氏 マイナス金利の真意は「銀行はやることをやれ」

 日本銀行の「マイナス金利」導入には収益が下がる銀行業界などが反対していた。実際に、導入を決めた政策決定会合では金融業界出身の委員が反対した。マイナス金利導入の真意とは何か、高橋洋一氏(元内閣参事官)と長谷川幸洋氏(東京新聞論説副主幹)の2人が読み解いた。

高橋:マイナス金利導入は、日銀が銀行に、お前たちもっと仕事しろということ。日銀が買いオペで国債を取り上げたら銀行は当座預金に回したので、今度は当座預金から利息を取り上げて、逆に手数料を払わせてカネを外に出させることにした。

 ところが銀行は自分で投資先なんて考えたくないから、リスクだリスクだと言うんです。手は3つある。1つは貸し出し、2つは株式投資、3つめは海外投資。つまり、銀行がやるべき当たり前のことをやれって話ですね。

長谷川:家計にとっても、悪い話ではなく、国債が下がって住宅ローン金利が下がる。これはうれしい話。

高橋:日銀と銀行の間でマイナス金利はできるが、銀行と我々の間ではできない。そんなことをしたら、我々は銀行に預けなくなるから。マイナス金利は対庶民にはできない。銀行だけが大変になるから、彼らは怒っているんですね(笑い)。

 あと、マイナス金利をしても銀行は貸し出しには向かわず、株ばかりに行くという人がいるけど、それでもいいんです。株が上がれば、株の時価発行増資などで企業は銀行を通さず資金調達できるわけだし。

長谷川:だいたい民主党とか野党は「株価だけ上がるのは問題」と言うけど、株価が上がって何が悪いのか。

高橋:株価が上がると遅れて就業者数が上がるという相関関係について、私は論文を何本も書いている。それは、株価は景気を先取りするから。ある政策をすると株価が上がる。また、良い政策をすると景気が良くなって、就業者数が上がる。だから株価と就業者数に関係があるように見える。

長谷川:経済政策は何のためにやるのかといえば、失業と倒産を防ぐため。その意味では、アベノミクスは大成功しています。実質賃金が下がっているという問題はあるが、これはもう少し時間が掛かるでしょう。ただし、就業者数は直近で28万人も増えていますからね(2015年12月労働力調査)。

高橋:でも、黒田(東彦・日銀総裁)さんもまだ甘いですね。マイナス金利は当座預金のうち新規分についてだけで、これまでの250兆円の残高のほとんどには依然として0.1%が付く。

長谷川:本来なら、いまある残高の0.1%をなくすべきです。

高橋:次にやるでしょう、近いうちに。

長谷川:5月に1~3月のGDP速報が出るし、7月には参院選。4月27・28日に金融政策決定会合があるから、そのあたりでやる可能性があります。

高橋:次のほうが銀行はキャンキャンいうでしょう。

長谷川:もう一つ私が注目しているのは、マイナス金利と一緒に発表された展望リポートで、消費者物価上昇率2%の達成目標を来年9月まで先送りしたこと。これは昨年4月、10月に続いて3回目です。

 つまり、日銀は自らが設定した目標を達成できていないと言っているわけです。そうなると、ますます消費増税ができない。日銀がデフレ脱却の時期を2017年9月に先送りしたのに、2017年4月の増税なんてできるわけない。そういうメッセージだと読んでいます。
 
 高橋:消費増税は延期せざるを得ないだろうけど、でも黒田さんは、デフレ脱却に消費増税の影響なんて絶対言えない。というのも、黒田さんは安倍(首相)さんに、消費増税は影響がないと自分で言っちゃったからです。だからそれは、間違っていたことを“分かってください”という意味なんですね。
 
 長谷川:消費増税が延期となると、それを争点にした衆参ダブル選の可能性がますます高まってくることも付け加えておきましょう。

※週刊ポスト2016年2月19日号

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