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【注目トピックス 日本株】ワコム Research Memo(6):“ペンタブレット”企業として電子ペンを生かした技術と事業にこだわる

2016年6月13日 16:15

■ワコムのキー・テクノロジー

ワコム<6727>のペンタブレットがクリエイティブ市場で世界の90%近くを占めていることや、テクノロジーソリューション事業(コンポーネント販売)がサムスン電子グループ向けに急拡大したことは、同社のテクノロジーの高さゆえである。テクノロジーこそが同社の強みであるといえる。以下では同社のキー・テクノロジーについて紹介する。

同社のテクノロジーを理解する前提として、同社の主力製品であるペンタブレットと、同社が関連銘柄として語られるタッチパネルについて整理しておく。

ペンタブレットはコンピュータへの入力装置であり、表示装置を持たないのが本来の姿だ。構成パーツは電子ペンと“紙”に相当するセンサーボードだ。一方、タッチパネルは一般には入力装置と表示装置とが一体化したものをいう。両者には表示装置の有無という違いに加えて、入力道具が電子ペンか指かという点で大きな違いがある。同社は“ペンタブレット”企業として電子ペンを生かした技術と事業にこだわっている。反対にタッチパネルについては、指による入力ということで、自社の事業領域外に存在しているという認識だ。同社のペンタブレットとタッチパネルは、競合関係にあるのではなく共存関係にあるのだと理解すべきであると、弊社では考えている。前述したサムスン向けのコンポーネント売上急増はその好例と言える。

(1)電磁誘導(Electro Magnetic Resonance, EMR)方式

同社はペンタブレットの技術に電磁誘導(EMR)方式を採用してきた。他には簡便でコストも安い抵抗膜方式や表面弾性波方式(両者をまとめて“感圧式”と呼ぶこともある)などの方式がある。同社がEMRにこだわった理由は、反応の高速性や高精細さにある。前述のように、同社はクリエイターや愛好家を対象とするクリエイティブ市場において90%近い圧倒的な世界シェアを有しているが、その要因は高性能、すなわち高精細さにある。EMRと同社の発展は切り離せない関係にあるといえる。

EMRは専用の電子ペンを必要とする。ペン以外で反応しないことは、不用意な画面操作を防げることを意味するほか、ペンを使うことで筆圧の検知が可能になり、電子消しゴムなどの機能を追加して直感的な操作が可能になるという面もある。何よりも指では細い描写は難しく、何らかの指を代替するものが必要だ。結局はペンが必要となるのは自明だ。同社はEMR技術の特性を生かして電子ペンをバッテリーレス化している。

同社の技術的差別化のポイントはIC技術にある。ペンで入力した情報を実際に表示する過程ではコントローラICが」不可欠だ。同社は長年のEMR製品のブラッシュアップの過程でコントローラICの技術を蓄積してきており、この技術は今後の同社の競争力維持・強化の点でもプラスに働くと弊社では考えている。

(2)アクティブES(AES)方式

一般にスマートフォンやタブレットは、指での入力を前提に、マルチタッチを可能とする静電容量方式のタッチパネル(以下、“静電タッチパネル”)を入力装置として採用している。そのもっとも象徴的なものはアップル社のiPhoneやiPadだ。しかしこの市場において、指よりも“もっと細い指”、すなわちペンを利用してより細かい入力を行って使用価値を上げようという流れが広がってきている。

この静電タッチパネルに良くフィットする電子ペンという目的で同社が開発した技術が、アクティブES(Electrostatic、静電結合)テクノロジーだ。EMR方式ペンタブレットをタッチパネルと併用する場合にはタッチパネルの下にEMRセンサーボードを張り合わせる必要がある(前述のサムスンのケース)があるが、AESは静電タッチパネルをペンタブレットにおけるセンサーボードとして活用して入力を行えるシンプルな構造の技術だ。EMR方式の電子ペンをヘビーユーザー向けとするなら、AES方式の電子ペンはミドルユーザー向けという位置付けだ。

同社のAESペンの特徴としては、筆圧検知対応、ホバリング機能を有し、高精細を確保している点や、デジタルインク及びアプリケーションとの共用で高い利便性を実現できる拡張性を有している点などが挙げられる。また、EMR技術で蓄積したペン入力とタッチ操作を円滑に処理するコントローラICを搭載して、高い使い勝手を実現している点も重要なポイントだ。EMRのケースと同様、ここに同社の差別化要因がある。一方で、EMR技術とは異なるためペン内に電池を内蔵している。

同社のAES電子ペンは、ブランド製品事業においては、コンシューマ部門の製品(「Bamboo Smart」シリーズ)となって販売されている。これはサードパーティのモバイル端末利用者向けの電子ペンの単品販売ということだ。また、テクノロジーソリューション事業においては、DELL、HP、東芝、Lenovoなどのパソコンやタブレットに採用されてOEM供給されており、ペン搭載型パソコンの電子ペンとして主流の技術となっている。このように、AESは今後の同社の成長をけん引する重要な意味合いを有している。

(3) WILL

WILLはWacom Ink Layer Languageの略で、同社が開発した“デジタルインク”のソフトウェアフレームワークだ。電子ペンで入力された情報を液晶ディスプレイなどに入力する際に必要となるソフトウェアを、ペンで紙に表示する役割を担うインクになぞらえ、デジタルインクと称する。現状のデジタルインクはいくつか存在しているが、OS(Windows、Android、iOSなど)をまたぐと文字化けや色味の違いが出るなどの現象が起きる。WILLはこれを解決したソフトウェアだ。

同社はWILLのSDK(ソフトウェア開発キット)を無料でリリースしている。WILLのフレームワークのデジタルインク・ソフトウェアを自由に開発してもらい、それらと本質的に相性の良いはずの同社の電子ペンの販売加速につなげる狙いだ。同社のペンタブレットの世界シェアの高さを考えれば、WILLによって収益を上げるという選択肢も可能であったと思われるが、同社は、まずはWILLの普及を促し、将来的に何らかの課金の可能性を残しつつも、当面ペンタブレット製品・コンポーネントで収益拡大を目指す戦略だ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)

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