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原油価格がマイナスになった仕組みを解説 今後はどう推移するか

原油価格はなぜマイナスになったのか(ニューヨークのガソリンスタンド。Avalon/時事通信フォト)

「コロナ・ショック」が世界の金融市場を襲うなか、4月20日には原油先物価格が「1バレル=マイナス37ドル」と史上初の“マイナス”を記録。価格がゼロを下回る前代未聞の異常事態はなぜ起こったのか。そして、この先はどう推移していくのか。海外の市場動向に詳しいグローバルリンクアドバイザーズ代表の戸松信博氏が読み解く。

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 最初に、原油価格をめぐって、よく「WTI」という言葉を聞くと思いますが、これはウエスト・テキサス・インターミディエート(West Texas Intermediate)の略で、ニューヨークマーカンタイル商品取引所(NYMEX)で取引されている、原油の先物価格です。このテキサス産の軽質(硫黄が少なく、精製しやすい最高級)原油が、俗に言う「原油価格」の指標となっており、「原油価格」=WTIという感覚で日本では報道されることが多いです。

 そのWTI原油先物の5月物(5月に受け渡される原油価格)は、売買最終日の前日である4月20日に、前日比マイナス55.90ドル安の「1バレル=マイナス37.63ドル」と史上初となるマイナス価格をつけました。

 マイナス価格は、原油を買う側ではなく、売る側がお金を払って買い取ってもらうことになるというもので、過去に例のない異常事態です。なぜ、そんなことになったのか。そこには米国独特のルールが関係しています。

 まず、WTI原油は米国の狭い一部地域でのみ産出され、しかも米国内でしか消費されない石油で、欧州や日本にはほとんど入らない「ローカル石油」です。在庫量を見てみると、米国商業用在庫のおよそ10分の1程度を占めるにすぎません。

 世界全体で見ると、WTIを含め、大きな消費地別に3つの大きな価格決定の指標となる原油価格があります。北米の指標となるWTI、欧州の指標である北海ブレント原油価格、アジアの指標である中東ドバイ原油価格です。日本は当然アジアに属し、たとえば、東京商品取引所でも、輸入量が多い中東ドバイ原油価格を指標とする現金決済先物取引が行われています。

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