田代尚機のチャイナ・リサーチ

中国が導入したコロナ対策システム どこで誰と接触したか克明に記録

中国がコロナ対策で導入した健康情報管理システムは他の国でも受け入れられるか?(北京の博物館。Imaginechina/時事通信フォト)

 新型コロナウイルスの脅威は依然として世界を覆っているが、いち早く封じ込めの成果を出した中国と、いまだに多くの新規感染者が出ている欧米では、その対策にどのような違いがあるのだろうか。

 中国が新型コロナウイルスを早期に封じ込めることができた最大の要因は、感染者や、感染者と濃厚接触した人物を高い精度で見つけ出し、自宅待機あるいは医療機関での隔離を徹底させることができるシステムを導入した点にあるだろう。

 地域によって多少の違いがあるようだが、吉林省(長春市)の例を紹介すると、外出時には必ずスマホを持って出なければならない。テンセントの微信(ウィーチャット)でミニプログラム“吉事弁”をダウンロードし、自身の健康情報データ管理システム “吉祥碼”を身分証明書番号を使って登録、取得しなければならない。

 この吉祥碼は二次元バーコードとなっており、地下鉄でも、オフィスでも、スーパーでも、公共施設でも、あらゆる場所でスキャンすることが要求される。個人がいつ、どこで、誰と接触したかを克明に記録・チェックするシステムである。吉祥碼は5分ごとに更新されるが、もし、過去に感染者と接触したことが判明した場合、読み取った瞬間、読み取り側で信号の色が示される仕組みとなっている。

 緑色は異常なし、黄色はPCR検査は異常ないが、体温が37.3℃以上、橙色は感染者もしくは疑似感染者と濃厚接触しており、隔離が必要、紅色は感染者、疑似感染者、白黒はデータがなし。

 政府が個人行動の詳細を把握するシステムでもあるが、現地の知人の意見を聴く限りではプライバシーの侵害に不満を持つ人はない。むしろ、感染を防げること、あるいはこうしたシステムを応用することで犯罪捜査や、危険人物の監視などに利用できることから、メリットを評価する意見が多い。

 中国ではこのシステムがほとんどの人民にとって抵抗なく導入されているが、はたして他の国で受け入れられるだろうか。コロナ・ショックは、国と人がどう関わり合うかという、大きな問題も突きつけているようだ。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(http://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。