大前研一 「ビジネス新大陸」の歩き方

7人に1人が辞職希望 官僚を幸福にしない自民党政権というシステム

官僚たちはなぜ忙殺されてしまうのか(イラスト/井川泰年)

官僚たちはなぜ忙殺されてしまうのか(イラスト/井川泰年)

 憲政史上最長の在任日数となった安倍晋三政権が終わり、新しい首相を迎えようとしている。この間、日本の行政は未来へ前進したのか。経営コンサルタントの大前研一氏が、今後も続くであろう自民党政権というシステムの弊害について考察する。

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 歴代最長の安倍晋三政権下で官僚は著しく劣化した。

 それかあらぬか、8月下旬の人事院の発表によると、中央府省庁の幹部候補となる国家公務員総合職(キャリア官僚)の2020年度採用試験の合格者数トップは東京大学の249人で前年度より58人減少し、記録が残る1998年度以降で最少となった。人事院は、採用意欲の高い民間企業に東大生が流れたとみているという。

 また、内閣人事局が6月にまとめた調査では、30歳未満の若手男性官僚の7人に1人(14.7%)が、すでに辞職を準備中か1~3年程度のうちに辞める意向だと報じられた。その理由は「もっと魅力的な仕事に就きたい」「収入が少ない」「長時間労働で仕事と家庭の両立が困難」などである。

 実際、働き方改革コンサルティング会社ワーク・ライフバランスが8月3日に発表した国家公務員の働き方に関する実態調査の結果によると、回答者の時間外労働は37%が“過労死レベル”と言われる「単月100時間」を超え、5%余は「200時間以上」だった。さらに、国会議員とのやり取りは未だに86%がメールではなくFAXで、議員へのレク(説明)も「オンラインに移行せず対面のまま」という回答が8割を占めた。「不要不急のレクを設定」「数時間待ちぼうけを余儀なくされることも」「同じ党の議員から(中略)何度も同じ説明をさせられる」という声もあった。

 要するに官僚は、無能な大臣や議員の資料要求・レク要求、質問・答弁対応、資料づくりなどに忙殺されているわけで、しかも安倍政権下では自分の意に沿わない忖度だらけの仕事をやらされることもあったに違いないから、嫌気が差すのは当然だろう。「7人に1人」どころか、2人に1人がさっさと辞めようと考えても不思議ではない。

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