大前研一 「ビジネス新大陸」の歩き方

菅首相が自賛するふるさと納税制度が「セコい日本人」を大量に生んだ

「ふるさと納税」制度を導入した結果…(イラスト/井川泰年)

「ふるさと納税」制度を導入した結果…(イラスト/井川泰年)

 菅政権がスタートした。これからはコロナ対策と社会経済活動を両立していく舵取りが重要となってくるだろう。これまでの菅義偉氏の足跡を振り返りつつ、今後はどのような課題が待ち受けているのか、経営コンサルタントの大前研一氏が考察する。

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 菅義偉内閣の顔ぶれは、全くサプライズも新鮮味もなく、がっかりした。安倍晋三前首相の弟、秘書として仕えた代議士の息子、官房長官時代の官房副長官、同じ神奈川県選出の国会議員、初当選同期など、いわば「義理人情内閣」である。

 とはいえ、菅内閣への期待は高い。マスコミ各社の世論調査によると、内閣支持率は74~62%に達している。各地の知事からも「秋田出身の苦労人で、地方のことをよくご存じ」(静岡県・川勝平太知事)、「地方行政を十分知り尽くしている方」(長野県・阿部守一知事)、「地方創生の推進へ力添えをしてもらえる」(長崎県・中村法道知事)といった歓迎の声が報じられた。

 しかし、多くの人は誤解している。周知の通り、菅首相は安倍前首相の女房役として二人三脚でやってきた。つまり、アベノミクスの失敗をはじめとする安倍政権の「負の遺産」を7年8か月にわたって積み上げてきた人物であり、「安倍総理が進めてきた取り組みを継承していくことが私の使命」などと言っている。

 だが、安倍政権の負の側面を検証、反省、修正しなければ日本が21世紀の世界で繁栄することはできない。

 最もダメージが大きいアベノミクスの間違いは、20世紀の延長線上で考え、政府が市場経済に積極的に関与するニューディール的な政策を8年近くも続けたことだ。日本政府はデジタルディスラプション(デジタルテクノロジーによる破壊的で創造的なイノベーション)やDX(デジタルトランスフォーメーション/デジタル技術で人々の生活をより良い方向に変化させたり、既存のビジネス構造を破壊したりして新たな価値を生み出すイノベーション)などの新しい潮流に対応できる準備を整え、組織運営体系を大きく変えねばならなかったのに、20世紀を引きずった安倍前首相が長居しすぎたため、世界から8年も遅れてしまったのである。

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