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電子書籍から紙媒体に出戻りする人たち「このままじゃ本を読まなくなる」

紙媒体の良さを再発見した人たちも

紙媒体の良さを再発見した人たちも

 オンライン会議、ハンコレスなど、近年デジタルシフトが一気に進んでいる。紙媒体から電子媒体への流れもその一つだろう。インプレス総合研究所による「電子書籍ビジネス調査報告書2020」によると、2019年度の電子出版全体の市場規模は3750億円(対前年比120%)と推計されている。

 一方、そうした流れに逆行するかのように、電子書籍から紙の本に出戻りする人たちがいる。デジタル化が広まりつつある今、なぜ紙媒体なのだろうか。

 メーカーで働く30代の男性会社員・Aさんは昨夏、引っ越しを機に読み物はすべて電子化してタブレット端末にすべて保存した。新居のスペースを考えてのことだった。

「書籍や漫画、雑誌などがかなりのスペースを取っていたんです。ワンルームだったこともあり、結構手狭に感じていました。しかも在宅勤務になると圧迫感がすごい。新居では、居住空間を少しでも広く感じたかったのです」(Aさん)

 所有する本は裁断してスキャナーで取り込んで、タブレット端末に保存。新規購入も電子書籍に移行するなど電子化を徹底した。引っ越した当初は「スッキリ感」に満足していたというが、次第に自身に変化が起き始めたことに気がついたという。

「以前と比べて、本を読まなくなりました。在宅勤務で時間ができたので、たくさん読めるようになると思っていたんですが、実際は読書量が激減しています。本棚に入れていた時は、なんとなく取り出して、ベッドに寝転がりながら読んでいたのですが、タブレットに入れてからは、買っても保存したままみたいな感じの本が多くなってしまいました。紙だとどうしても視界に入るので、消化しなきゃと焦るからでしょうか」(Aさん)

 IT企業に勤める30代の女性会社員・Bさんは、紙の本と電子書籍を併用していたところ、思うところがあった。

「紙媒体で読んでいたときは、読み終わって飽きたら古本屋で売っていました。新品を購入して売るのはもちろん、中古で買って売るということもできた。でも、電子書籍だと売ることはできない。物理的な邪魔にはならないけど、いらない本を保存しているのも落ち着かない。かといって、少しでもお金をかけたものなので、削除もしにくい……」(Bさん)

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