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土壌微生物による温暖化解決の研究 農地由来の温室効果ガス80%削減を目標

今も謎が多い微生物の解明に取り組む東北大学特任教授の南澤究氏

今も謎が多い微生物の解明に取り組む東北大学特任教授の南澤究氏

 日本政府が「2030年までに二酸化炭素排出量を2013年度比46%減」との目標を掲げるなか、脱炭素に向けて科学の力で立ち向かう科学者がいる。そこではどのような研究がなされているのだろうか──。

 地球温暖化の原因になる温室効果ガスは、二酸化炭素(CO2)が76%寄与しているが、メタン(CH4)も15.8%、一酸化二窒素(N2O)も6.2%寄与している。CH4やN2Oは地球を温める効果がCO2に比べて非常に大きいので、これらも減らしていかなければ、CO2を削減しても温室効果ガスの排出削減という目標は達成できない。

「N2Oの人為的排出源の59%は農業由来です。化学窒素肥料の登場で食料生産は飛躍的に増加しましたが、それによって農地からのN2O発生増という問題も引き起こされました。また、水田は微生物によるCH4の排出源になっており、CH4の人為的排出源の11%を占めています。これらの点からも、温室効果ガスを大量に排出する食糧生産過程の改変は、地球温暖化の問題を解決していくうえでも必要不可欠です」

 そう語るのは、内閣府のムーンショット型研究開発事業「Cool Earth via dSOIL(微生物による地球冷却)」のプロジェクトマネージャーを務める東北大学特任教授の南澤究(きわむ)氏。このプロジェクトでは植物共生微生物や土壌微生物の働きを活かし、2050年までに農地由来の温室効果ガス(CH4・N2O)を80%削減することを目標として研究を進めている。

N2OをN2に還元して温室効果ガスを削減

 このプロジェクトが立ち上がる以前から、南澤氏は土壌の中に含まれる微生物や植物に共生する微生物が、温室効果ガスの削減にどうつながるかを研究してきた。そこでカギを握る存在となるのが、ダイズなどのマメ科植物の根に共生する根粒菌である。

「根粒菌には、大気中のN2Oを窒素(N2)に還元する酵素(N2O還元酵素)が含まれていることが、以前の研究で明らかになっています。そこから『N2O還元酵素の活性を強化すれば、N2Oの発生が削減できる』と考えて、ダイズ根粒菌のN2O還元酵素活性を数倍に上昇させた菌の作成を行なっています」(南澤氏)

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