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【注目トピックス 経済総合】【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(5):◆財政出動方針へ、欧州はゆっくりと変わるか◆

2016年10月9日 16:20



〇財政出動方針へ、欧州はゆっくり変わる公算〇

欧州情勢は、今後本格化するブレグジット(英国EU離脱)交渉を控え、英国が新路線を打ち出し、EU側が原理原則を振りかざすだけで守勢に回り始めている印象がある。米国の利上げ接近観測、日銀の政策変更などと重なり、債券主導相場(日欧のマイナス金利競争、ユーロやポンド売りと円ロングの為替組み合わせ)が変節している。

5日、メイ英首相は保守党年次大会で演説し、「我々には英国を一つにし、中道に根付き結束した新しい英国にするという大胆な計画がある」と主張した。時に特権階級に立ち向かうことを恐れず、常に労働者階級の利益に基づき行動する「近代的な保守」を目指すとし、労働党の看板を奪う時だと述べている。金融政策に関して、「超低金利と量的緩和策は金融危機後に必要な応急措置を提供したが、悪い副作用があったことも認識すべきだ」と「変化が必要であり、我々はこれを実行する」。成長促進に向けた新たな方策を模索する時期が来たとの認識だが、財政均衡は維持する考えも示した。

これを受け、ハモンド英財務相は「1人当たりGDPを伸ばすことに集中する」としている。同時に、「英国は世界一の金融拠点機能を維持」を表明。財務省次官だったジム・オニール氏(米GS時代にBRICsの名付け親。キャメロン政権での親中政策を推進)は辞任した。内務省は外国人雇用の制限検討と報じられている。

大まかなイメージだが、米大統領選のトランプ氏、あるいはサンダース氏の格差是正に引き摺られるクリントン氏の主張に似通った面がある。日本でも体系的ではないが、安倍首相の「GDP600兆円」や小池都知事の「都民ファースト」に通じるものがある。金融政策依存から財政出動や構造改革を柱とする先進国改革とも呼ぶべき流れの印象だ。富裕層や既得権益層に逆風となるケースが増えそうだ。

5日付独紙とのインタビューで、ノーベル賞経済学者のジョセフ・スティグリッツ氏は「数年以内にイタリアなどがユーロ圏を離脱する可能性がある」との見方を示した。単一通貨ユーロとドイツの緊縮財政措置が欧州経済の問題を引き起こしているとし、欧州経済を再び活性化させるには、ユーロ圏の解体か、「南ユーロ圏」と「北ユーロ圏」への二分以外に現実的な選択肢はないと指摘。イタリアは12月4日に憲法改正の是非を問う国民投票を行う。敗れればレンツィ政権が大きく揺らぐリスクがある。

これに刺激を受けた訳でも無さそうだが、ドイツは年間63億ユーロの減税措置が17年初めにも実施されると報道された。メルケル独首相も同様の考えを示し、来年の総選挙、内需促進、貿易不均衡是正などの対応する方針。規模は小さいとは言え、ことさら財政均衡を成果としてきたドイツの緊縮財政方針が変わって来るか注目される。9月、相次ぎ地方選挙で敗れ、メルケル首相は難民問題での姿勢を、突然ザンゲした。盤石と見られた政権基盤が揺らいでおり、その動向もドイツの政策転換に影響しよう。


以上



出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(16/10/07号)

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