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現在は極貧生活を送る磯貝氏も、かつては億単位で資金を動かし相場に少なからずインパクトを与えるFX投資家として、業界でもその名をとどろかす存在だった。その資産がピークに達したのは2007年夏。円安の波にも後押しされ、ポジションの時価評価額は10億円に達した。
今思えば本当に怖いんですけど、儲けまくっていたころのトレードにはこれといったルールもなく、ほとんど相場観だけで取引していました。ちょっとしたニュースや指標に、「これは買いだ!」と反応して、どんどん買いを進めていったんです。よく取引した通貨ペアは、ポンド/円です。なんたって値動きが大きくスリリングですから。しかも1枚(1万通貨)や10枚なんてまどろっこしい買い方しません。最低でも100枚単位(100万ポンド単位。当時のレート、1ポンド=約250円で計算すると、2億5000万円単位!)で取引してましたね。
それにしても円安ってすごいですよね。こんなギャンブルみたいな取引でも、面白いように儲かっちゃうんですから。当時はひと月の収支がプラス5000万円とか、スワップだけで2000万超えたりとか、普通でした。
そのころの武勇伝はまだありますよ。一時は1億ポンドをロング(買い注文)したこともあって、「日本で一番ポンド/円を持つ男」といわれてました。為替が1円動くと、資産が1億円動くんです。僕が買いを入れたとき、通信社が「本邦機関投資家がまとまった買いを入れた」と誤配信したこともあったくらい。当時はFX会社に電話で注文してたんですけど、金額が大きすぎて、業者がカバー先の銀行ディーラーに直接電話してもさばき切れず、複数の銀行に電話してやっと注文できた、なんてこともありました。
でもそんなウハウハな時代も、長くは続きませんでした。資産のピークを迎えた2007年7月に、急激に為替が円高に動いて、10億円がたった一晩で6億円になってしまったんです。一晩で4億円スッちゃうヤツなんて、そうはいないですよね。さすがにヘコんで、オープンしたばかりのザ・リッツ・カールトン東京の一室でシャンパンを飲みながらひとり反省会をしました。
それなのに、また同じことやっちゃったんですよね、テキトーな外貨買い。そしたら、残りの資金もあっという間に半減。それからはもう石が転がるように資産が減っていきましたね。この年は結局、トータルで3億円を超える損失を出してしまいました。続く08年もリーマン・ショックの影響もあり、成績はさんざん。06年までの儲けもふっとんでしまいました……。
この莫大な損失に追い打ちをかけるように、東京国税局の査察を受け、極貧生活に転落したのは前述の通り。 磯貝氏は3年間のFXの収益4億5000万円を申告していなかったため、それだけで1億6000万円の所得税を支払わなければならない。ただし、磯貝氏の場合はさらに延滞税、重加算税と罰金が科せられる可能性が高いという。その金額は今後裁判を経て決定されることになる。
こんなことになったのも、すべては僕の無知からです。今回の告発は04年から06年までの収益に対する所得に対してですが、07~08年にかけては、最大7億円以上の損失を出したこともあり、自分が税金を納めなければいけないという感覚がなかったんです。
たとえば店頭取引のFX会社だと、利益がほかの所得と総合課税されるし、累進課税になりますが、くりっく365に参加しているFX会社で取引していれば、税率は一律20%。ボクは取引ツールの使い勝手のよさだけでFX会社を選んでいましたけど、税金面についてはほとんど意識していませんでした。しかも、申告を怠れば重い重加算税を課せられる。身から出たサビとはいえ、本当に高い授業料でした。
その後、修正申告しましたが、まだ支払わなければならない税金が、1億3000万円残っています。今も1日あたり約5万2000円の延滞税がプラスされ、僕が支払うべき税額は日に日に膨らんでるんですよね……。
それでも僕は、FXをやめるつもりはありません。さすがに、以前のような相場に翻弄される取引からは足を洗いましたけどね。今は確実に収益を積み重ねていく新しいトレードスタイルを模索しているんです。
そのひとつが、フィボナッチ・トレード。最も美しく安定している比率とされる「黄金比」に使われる0.382、0.618といった数値を、チャート上に当てはめて節目を予想する方法です。簡単にいうと、為替レートが38.2%や61.8%の押しや戻しの後で反転するという考え方。自然界にも多く存在するこの数値が、チャート上でもピタリとはまることが多いんです。
最近はこのフィボナッチを軸に節目を重視する投資術を検証しているんですが、実はこのトレードスタイルにはけっこう手ごたえ感じてるんですよね。なんたって最近はこの相場でもほとんど負けなくなりましたから。勝てばデカイけど、負けるとしばらく立ち直れなかった昔とは大違いです。
ヒルズを追われ、資産はすべて差し押さえられ、莫大な負債を背負っちゃいましたけど、それでも僕は絶望してません。金銭的な天国と地獄を味わった体験は、お金の価値、お金以外のモノの価値、納税の意義、そして本当に信頼できる人間とはだれかということを私に教えてくれました。これはお金には替えがたい貴重な経験です。
FXで作った借りは、FXで返す。懲こりないヤツだと思われるでしょうけど、残りの税金はFXで稼いで、耳を揃えてきっちり支払うつもりです。さらには、かつての私みたいに納税意識の薄い投資家が同じ過ちを犯すことのないよう、投資と税に関するセミナーや啓蒙活動にも取り組んでいきたいですね。今回、僕が告発されたことで、口座を借りていた友人や関係者、国税局、ひいては国民の皆さんに多大な迷惑をかけてしまいました。僕の経験を社会に還元することで、せめてもの罪滅ぼしができればと思っています。
とはいえ、僕は全然ヘコんでなんかいませんよ!つい先日も、友人と一緒になけなしの小遣いで買ったトト・ビッグで4等に当選し、1万4240円をゲットしちゃいましたからね。そろそろツキも戻ってきたんじゃないでしょうか(笑い)。今後の目標は、FXで残りの税金をキッチリ払った上で、なおかつ10億円を稼ぐこと。今検証中の新しいトレード術が軌道に乗った暁には、天国から地獄に落ち、また這い上がった男の奇跡の投資術として皆さんに披露させてもらいます。どうぞ期待してください!
「マネーポスト」2009年7月号に掲載