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為替レート
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為替アナリストとして私がこれまで最も多く受けた質問は、「1ドル=何円が適正水準か?」というものです。質問をする方は、おおよその目安を知りたいのだと思いますが、為替調査を専門としている者にとっては重大事です。なぜなら、この質問は、「為替相場に適正水準は存在するのか?」という難問につながるからです。
結論からいうと、為替がマーケットで決まる限り、適正水準=均衡点はあるはずです。しかしその均衡点は、「為替の神様のみぞ知る」と考えています。
為替相場を動かす要因は様々です。1980年代までは、貿易収支が大きな影響を与えていました。原材料や製品の輸出入にかかわる資金の移動が為替相場を動かし、貿易収支の黒字国の通貨は強く、逆に赤字国の通貨は弱くなる傾向にありました。
その後、資本取引の自由化が進み、特に主要先進国同士の投資資金の移動が活発になるにつれ、為替相場は様変わりしていきます。現在では、資本取引の中でも、海外の株式や債券などの金融商品の売買にかかわる証券投資が大きなウエイトを占めるようになり、各国の市場金利の動向が為替相場を動かす大きな要因となっています。
では、金利を比較していれば、強くなる通貨がわかるのかというと、
そうは単純にいきません。高金利通貨であっても、その国の金利が将来下がりそうなら、金利低下を見越して売られていきます。金利だけをとっても、水準と方向性を分析する必要があるのです。
さらに、為替市場では、前述した貿易に伴う資金の移動、あるいは、各国の金融当局者や政治家といった人たちが為替相場に言及し相場へ影響を与えることも多く、相場を動かす材料に事欠きません。
また、為替取引をする市場参加者は、株式取引以上に多種多様です。貿易をするメーカーや商社に加え、資本取引を行なう金融機関、さらに為替相場で利益を上げようとする投機筋や個人投資家など、さまざまな参加者の思惑が交錯しています。為替は、株式や債券以上に相場を動かす要因が多様で、複雑怪奇な動きをするのです。
しかしそれでも、為替相場の決定理論を探る努力は、長く続けられています。そのなかでももっとも有名なのが、「購買力平価説」でしょう。「2国間の通貨の交換価値は、長期的にはその購買力の比率で決まる」という考え方で、例えば、日本でミカンが1個=100円、米国でオレンジが1個=1ドルで売られていて、それを食べたときの日本人と米国人の満足度が同じなら、ミカンとオレンジは等価値で、「1ドル=100円」という通貨の交換レートが成立する、という理論です。
ただ、ここで問題になるのは、購買力の基準を何とするかによって大きくレートが変わってしまう、という点です。
例えば、英エコノミスト誌は、世界中のマクドナルドでほぼ同じ規格で販売されているという「ビッグマック」を基準にした「ビッグマック指数」を公表しています。同様の発想で、「コカコーラ・マップ」「ipod指数」などもありますが、それぞれ購買力平価は異なります。
私もちょっと遊び感覚で、06年12月にメジャー・リーグに移籍した、松坂大輔投手の年俸を基準とした購買力平価を考えてみました。移籍時の年俸は約867万ドルで、日本球界時代の最後の年俸は3億5000万円(推定)でした。松坂投手のピッチングを見た日米の野球ファンの感動が同じだったとすると、「松坂大輔平価」は、3億5000万円÷867万ドルで、1ドル=40円38銭となります。
同じように、映画『ハリー・ポッターと謎のプリンス』で比べてみると、ニューヨークの映画館で上映された鑑賞券は12・5ドル。東京は1800円なので、「ハリー・ポッター平価」は1ドル=144円になります。
いずれにしても、いまの為替レートとは大きな開きがあり、これらの購買力平価をもとに「今後は円高、または円安に向かう」などと考えても、あまり納得してもらえないでしょう。


