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このように購買力平価は、基準によって算出されるレートが大きく変わり、「絶対的な購買力平価」はいつまでたっても、見つかりません。そこで、そうした欠点を補うために考え出されたのが、「相対的購買力平価測定法」と呼ばれるものです。 ここでは購買力平価の基準として、各国政府が公表している「物価指数」で測定したインフレ率格差を使います。
下のグラフは、日米の「企業物価指数」を使って測定した購買力平価と、現実のドル/円レートの対比です。グラフを見ると、相対購買力平価線はほぼ一貫して円高方向へ動いており、90年代半ば以降、現実の為替レートとの乖離幅が縮小していることがわかります。
これは近年、為替市場がより合理的になってきたことが要因だと考えています。
為替市場の市場規模の拡大に加え、インターネットの普及で、市場参加者の情報格差がなくなってきています。その結果、為替市場の合理性が高まり、完全なマーケットに近づいている、という見方ができるのではないでしょうか。
ここまで見ると、長期的なドル/円レートは日米企業物価指数を使った購買力平価に均衡すると考えられるかもしれません。しかし、「インフレ率を測定する〝物差し〟として企業物価指数が正しいのか」、また、「過去のどの時点を基準として現在までのインフレ率格差を測定するのか」という問題が残っています。
やはり、絶対的な購買力平価の水準は、相場と同じように「為替の神様のみぞ知る」としかいいようがありません。
たとえ長期的な適正水準をおおまかに推測できたとしても、中短期的には、購買力平価と為替レートが乖離したまま放置されることも珍しくありません。特にFXを行なう個人投資家にとっては、短期的な流れに乗らずに利益を上げるのは難しいでしょう。
その意味で単純な「値頃感」だけで判断するのは禁物です。「ドルがかなり下がって来たからそろそろ買い場だろう」といった考え方は、短期的な適正水準が存在しない以上、相場を見誤る大きな原因となります。
為替相場の流れとは、「ファッション=流行」です。服装のファッションと同じように、市場が飽きてしまえば、どんどん変化していくものです。
リーマン・ショック以降の為替相場では、「リスク回避」がファッションとなっています。特に今年の前半は、欧米の金融機関の損失額が市場の注目を集め、金融機関の決算の内容で、市場は大きく動きました。
しかし、金融危機が収まり出し、景気後退に歯止めがかかってくると、今度は、米国の景気の回復度合いが注目を集め始めました。米雇用統計や新築・中古住宅販売件数といった経済指標に市場は大きく反応するようになったのです。雇用統計は、昔から貿易収支とともに重要指標でしたが、新築・中古住宅販売件数などは、かつては誰も見向きもしなかった指標です。
最近は少しずつ、中国の経済指標も注目されるようになってきています。今後、世界経済の中で中国の存在感が増すにつれ、中国の経済指標発表で、為替相場が大きく変動する日が訪れるのかもしれません。
このように、市場が注目するファッションは、今後も変容を続けるでしょう。個人投資家にとって重要なのは、ファッションに敏感となり、その変化に注意を払い続けること、ではないでしょうか。
「マネーポスト」2009年11月号に掲載


