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今、アジアをはじめとする新興国の株式市場に投資しようと思ったら、個人が一番手軽に利用できるのが投資信託である。
投資信託とは、大勢の投資家からお金を集め、ファンドを作り、それを通じて世界各国の株式や債券に分散投資するという金融商品だ。1万円程度の少額資金で投資できること、さまざまな株式などに分散投資するパッケージ商品なのでリスク分散ができていること、そして日本から直接株式に投資できない国にも投資できること、などの特徴を持っている。
最近は、個人投資家が直接、海外企業の株式に投資できる環境が整ってきているが、新興国の株式市場となると、なかなか難しい。たとえばインドなどは、海外の個人投資家による株式投資が規制されている。中国本土(上海・
)のA株市場もそうだ。
しかし投資信託を利用すれば、このような市場にも投資することができる。新興国の株式市場は、先進国のそれに比べて値動きが荒く、投資リスクも高い。そのリスクを軽減するためには分散投資が欠かせないが、投資信託なら、幅広い国の株式市場に分散投資できるので、リスク軽減という点でも有利だ。
新興国に投資する投資信託といっても、いくつかのタイプがある。たとえば、単独の国に投資するファンドと、「BRICs(ブリックス)」(ブラジル・ロシア・インド・中国)4か国など複数の国に分散投資するファンド。リスク分散を考えるのであれば、複数の国に投資するファンドを選んだ方が良いだろう。対して単独の国に投資するファンドの場合、その国の株価が上昇した時のリターンは大きくなるが、値下がりした場合は、その影響を直接的に受けることになる。この点、分散投資されたファンドなら、ある国の株価が値下がりしても、他の国の株価が値上がりしていれば、それによってリスクを相殺できる。
ファンドを選ぶ際の注意点は、やはり純資産残高の推移だろう。短期で見ると、08年のリーマン・ショック時のように、一時的に大きく値下がりする場面もあるが、新興国の経済発展は、今後10年、20年という長期にわたって続く可能性が高い。経済成長が続く限り、株価の上昇も続く。そう考えると、新興国への投資は長期的視点に立って行なう必要があるが、投資信託は解約によって純資産残高が急減したり、純資産残高そのものの規模が小さかったりすると、繰上償還されてしまうリスクがある。長期保有を前提にするなら、できれば常時、100億円以上の純資産残高を持っているファンドを選ぶのが良いだろう。
また、投資信託は1万円程度から買えるという特徴を活かすのであれば、時間を分散し、複数回に分けて投資するのがお勧めだ。世界的に景気が本格回復局面に入ったのかどうかが不透明な時期だけに、大きく下げた時に買えるだけの資金的余力は残しておきたいところだ。
ETF(上場投資信託)も広義では投資信託の一種だが、大きく違うのは、普通の株式と同じように、ファンドが株式市場に上場されており、いつでも自由に売買できるということ。国内の証券取引所では、東証と大証にETFが上場されている。また、海外の証券取引所に上場されている海外ETFに投資するという方法もある。
ETFと通常の投資信託のどちらを選んだ方が有利なのか。この点についてはなかなか迷うところだが、単純にコスト比較をすれば、ETFの方が有利だ。投資信託の場合、2%程度の購入手数料に加え、保有期間中には年2%程度の信託報酬がかかる。ETFの場合、ネット証券で売買すれば、売買手数料を格安に抑えられるうえ、年間の信託報酬率は1%にも満たない。
また、いつでも市場を通じて売買できるという点も、ETFならではのメリットだ。もちろん、新興国投資は長期保有が鉄則だが、値動きの大きなマーケットだけに、株価の上下動を捉えて、トレーディングに近い投資をしてみたいという投資家もいるだろう。ETFなら、こうしたニーズに応えることができる。加えていえば、東証と大証に上場されている国内ETFは信用取引の対象にもなるので、最大3倍程度のレバレッジをかけることもできるし、売りから入って値下がり局面で利益を得ることも可能になる。
ETFは国内の証券取引所に上場されているものだけでなく、海外の証券取引所に上場されているものも取引できる。ニューヨークや香港に上場しているETFは、多くのネット証券会社が扱っている。証券会社ではSBI証券と楽天証券が、海外ETFの取り扱いに積極的だ。
海外ETFの場合、国内ETFに比べて投資対象が幅広い。アジアでは、香港市場はもちろんのこと、マレーシアやメキシコ、台湾などにも投資できる。ただ、国内ETFに比べて若干コストが割高になる。
また、海外ETFは投資する際に円を外貨に替える必要がある。米ドルの場合、1ドルあたりの買いと売りの往復で50 銭程度の為替手数料がかかる点にも留意しておきたい。
国内ETFでも中国A株、ブラジル、インド、ロシアなど主なエマージング市場には投資できるので、それ以外の国や地域に投資したいというのでなければ、国内ETFで十分に事は足りるだろう。
ETFはインデックス(株価指数)連動型なので、ファンド選びに神経質になる必要はない。インドに投資したいと思ったら、インドのETFを買う。新興国全体の成長を享受したければ、日興アセットマネジメントが2月24日に上場させた「上場インデックスファンド海外新興国株式」(東証・1681)のように、エマージング市場全体の値動きを示すインデックスに連動するタイプのETFを選べば良いだろう。
投資信託やETFの場合、数多くの銘柄に分散投資するため、個別銘柄投資に比べると、株価上昇時のリターンも低く抑えられがちだ。より大きなリターンを目指すなら、個別銘柄への投資が良いだろう。
ただ、新興国の個別銘柄に投資する場合、いくつか注意しなければならない点がある。
まず、情報量の問題。最近はインターネットなどを通じて、外国株の情報がある程度、入ってくるようになったが、それでも言語のハードルもあって、日本企業の業績をチェックするようにはいかない。優良な個別銘柄を発掘するといっても、なかなか難しい。
流動性の問題も要注意だ。中国の株式市場ともなれば、ある程度の市場規模があるので問題はないが、ベトナム市場のように発展途上にある市場になると、株を売りたいと思った時に、それに対応する買い手が現われないこともある。その結果、どうしても値動きが荒くなってしまうことも注意点のひとつだ。
このように、情報量が少ない、売りたい時に売れなくなる、値動きが荒くなるという3つのリスクに留意したうえで、個別銘柄投資を行なうかどうかを決める必要がある。
次は証券会社選びだ。新興国の個別銘柄の場合、すべての証券会社が取り扱っているわけではないし、取り扱い銘柄もまちまちだ。インドのように、個別銘柄に直接投資できない株式市場もある。
アジア新興国のなかでは、やはり中国・香港株を扱っている証券会社が多く、証券会社選びではそれほど苦労することもないが、たとえばベトナム市場になると、扱っている証券会社はごく一部に限られている。現在、アジア新興国の個別銘柄では、アイザワ証券が、中国、香港をはじめ、ベトナム、タイ、フィリピン、インドネシア、シンガポール、マレーシアなど、幅広く扱っている。もしできるだけ多くの市場の個別銘柄に投資したいのであれば、このように、数多くの国を扱っている証券会社を選ぶ必要がある。
また、インドなどは個別銘柄への直接投資が認められていないが、ADR(米国預託証券)を通じての取引が可能だ。ADRとは米国の証券取引所で売買されている外国企業の株式のことで、中国やインドをはじめ、ブラジルやロシアなど、多くの新興国の主力企業が、このマーケットに上場している。やはり、取り扱い銘柄数は証券会社によって異なるが、SBI証券や楽天証券などで外国株式口座を開けば、米ドル建てのADRを取引することが可能だ。
個別銘柄投資の場合、銘柄をいかに選ぶかという問題があるが、新興国の場合、企業の経営体力が脆弱なところも少なくない。今後、競争の激化で、弱い企業が大手企業に飲み込まれていくケースも十分に考えられる。その意味では、業界トップ企業を中心に、複数銘柄に分散投資した方が無難だろう。もちろん長期保有が鉄則だ。
「マネーポスト」2010年3月号に掲載
