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QE2によって米景気の二番底懸念が払拭された
2011年の世界経済を語るためには、やはり米国経済の行方を分析しなければならない。
2009年に底打ちをしたとされる米国経済だが、2010年中は本格的な回復には至らなかった。失業率の高止まりに見られるように、低調な雇用が続く中、企業の在庫積み増しの動きが一巡し、住宅取得減税の停止による住宅需要の反動減が起きたため、成長も一時的に鈍化してしまった。
しかし、米景気の二番底懸念はない、と言い切っていいだろう。ファンダメンタルズを冷静に分析すると、深刻な不安材料は見られないからだ。企業も家計もバランスシート上の調整は完了し、贅ぜい肉にくはそぎ落とされている。そして、経済成長の大きなエンジンである企業の収益は大きく回復している。そのため、企業の手元資金は過去と比較しても空前の余剰状態にある。本格的な回復への準備は整っているのだ。
問題は雇用だが、私は、「米国景気が二番底に陥る」といったネガティブな心理的要因さえ除去されれば、おのずと回復すると考えている。その心理的要因を取り除き、企業経営者や個人を前向きにさせる切り札が、FRB(米連邦準備制度理事会)が2010年11月からスタートした「QE2(量的金融緩和第2弾)」だ。
QE2の柱は、FRBが2011年6月まで、総額6000億ドルの規模で米国債を買い入れる、という内容である。狙いは、FRBが直接資産価格に働きかけ、金融市場の期待(心理)を改善させることにある。FRBの長期国債購入によって、国債および国債を組み入れた投資信託の価格が上昇し、金融機関や企業、個人の資産を押し上げることが期待されている。
すでに、米国株式市場は、2010年8月に発表されたQE2を実施するというFRBのアナウンスメントだけで反発に転じ、発表された中身が予想の範囲内であったにもかかわらず、FOMC(金融政策決定会合)で正式決定された直後、リーマン・ショック前の水準をあっさりと回復してしまった。この事実だけでも、心理的な効果はすでに十分表われているといえよう。
QE2によって米景気の二番底懸念が払拭され、収益が好調で余剰資金が豊富な米企業は、積極的な投資を始めるに違いない。そうなれば、雇用者数が増加するとともに、個人消費も活発化し、米国経済は2011年半ば頃から力強く回復してくるはずだ。
いったん、米国経済が回復局面に入れば、過去のケースから回復期は5~10年は続く。成長の天井はまだまだ高い。そうしたシナリオの下に、NYダウは、11年内に1万2000~1万3000ドル近辺まで上昇していくだろう。米株高に連れ、世界の株式市場の時価総額も高値を更新していく可能性が高い。つまり、2011年は世界的株高が起きるのである。
これ以上のドル安が進めば協調介入もあり得る
翻って、日本はどうだろうか。景気も企業収益も回復局面にあるが、なんといっても、対ドルで過去最高水準の円高に見舞われているため、今年度下期の企業収益の不透明感が強く、日経平均株価も低迷を余儀なくされている。円高が解消しない限り、日本経済および株価の本格的な出直りは期待できない状況だ。
ではそもそも、この円高は正当化されうるのだろうか? 答えは否である。
OECD(経済協力開発機構)が発表している購買力平価から算出すると、円は現状の日本経済の実力からおよそ5割の円高水準となっている。この円高水準を前提とすると、日本国内の人件費は国際的に割高な水準となるため、円高が続く限り、賃金に引き下げ圧力がかかる。個人消費が盛り上がるわけはなく、日本経済へのダメージは甚大だ。
ではなぜ、そんな実力以上の通貨高となったのか。それは、〝邪悪な資金の流れ〟が引き起こしているに過ぎない。
リーマン・ショック、ギリシャ財政危機を経て、欧米の金融機関の体力が弱まる中、世界中でもっとも選好される通貨が円となってしまったのだ。ほぼゼロ金利ながら流動性が保たれ、デフレで購買力が強まっている円は、世界経済にとって「キャッシュ」にもっとも近い通貨と考えられるようになった。これは、世界がデフレ化するという「デフレシナリオ」に基づくものである。しかし、〝タンス預金〟同様、実質的にゼロ金利である円を保有していても収益は生まれず、資本として活用しない限り経済も発展しない。
こうした〝邪悪な資金の流れ〟は、合理的なものではなく、単なる投機によって生み出されたものに過ぎない。そして、この投機を加速させたのは、米国景気の二番底懸念なのだが、すでに述べたように、米国景気は本格的な回復軌道に乗ってくる可能性が高い。したがって、実体経済からかけ離れた投機は、いつまでも続かないだろう。
2010年10月のG20財務相・中央銀行総裁会議前後に、ガイトナー米財務長官は「米政府は強いドルを望んでいる」というコメントを何度か発し、邪悪な資金の流れを阻止する風潮が醸成されつつある。これ以上のドル安が進めば、それを是正する協調介入もあり得るのではないか。
そうなれば、投機の巻き戻しが進み、さらに米国景気の回復が後押しをすることで、円高は止まるだろう。