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為替介入直前から米ドルを買い下がった理由

よく為替は一方向に動きやすいといわれるが、だからといってトレンドに従った〝順張り〟トレードだけで、FXで大きく儲けることはできない。大きなトレンドが反転する時の〝逆張り〟に成功すれば、その後の利益は順張り時よりも大きなものとなるだろう。

実際私も、過去に大きく円高に動いたときは、トレンドに反していても豪ドルなどの高金利通貨を仕込むようにしてきた。FXは為替差益で儲けるだけでなく、通貨間の金利差であるスワップポイントによっても利益が積み上がる。そのときのポジションが、後のトレンド転換によって大きな利益を生んだ。

つい先日も、こうした大きなトレンド転換時の〝逆張り〟を狙うトレードを行なった。2011年10月31日に行なわれた、政府・日銀による円売り介入前に円が対米ドルで、連日最高値を更新していたとき、私は米ドルを買い下がっていったのだ。

そのとき、私のファンクラブの会員の方々からは、「どうトレードすればいいですか?」という質問を受けていて、買い下がることをアドバイスしていた。しかし、円が勢いよく上昇するのを目の当たりにして、なかなか手が出せなかった会員も多かったようだ。

その後は円売り介入の効果でドルは反発し、ドルの買い下がりは成功したわけだが、私は別に介入を予想してトレードしていたわけではない。あくまでチャート分析の結果、1ドル=75円台でドルがいったんは反発すると予想していたのである。

そのため、76円台からドルを買い始め、75円台では買い増しをした。もし、74円台に入っていたら、さらに買っていたと思う。74円台はオーバーシュートだと考えていたからだ。

介入によってチャートは底ばい状態から上放れ

このように、普段からテクニカル、主にチャートの分析をし、相場の節目をあらかじめ把握していれば、相場が大きく動いたときに実際にトレードすることができる。

あの2001年の「9・11」同時多発テロのときも、とんでもないスピードで円高が進んだ。そのとき、私は日頃のチャート分析から、そろそろドルが底を打つレベルに来たと見てドルを買おうとしたのだが、当時取引していたFX会社の担当の人は、「やめた方がいいですよ」といって私の注文を受けなかったことがあった(当時のFXは、電話取引が中心だった)。その後、私の予想通りドル/円は大きく反発したわけだが、相場激変時は業者の人でもトレードを躊躇する。先日の1ドル=75円台の円高時、再びこのエピソードを思い出してしまった。

相場が大きく動いたときほど、大きな利益を上げるチャンスである。しかし、大きく動くときほどなかなか手が出ない。そんなときのトレードを後押しするのが、日頃のチャート分析による予想なのである。

私は、2011年10月31日の為替介入直前につけた円の最高値、1ドル=75円台前半が、当面の円の天井になる可能性が高い、と考えている。

2011年後半の短期的な円高トレンドの起点は、8月に行なわれた円売り介入後のドルの高値である80円台前半。それまで、東日本大震災以降では、短期的に2回の円高トレンドがあり、前2回の円高の値幅はいずれも5円強。その値幅を3回目の今回に当てはめると円の高値は75円前後となる。だからこそ、私はドルを買い下がったわけである。

また、介入によって75円台から79円台までドルが一気に上昇したが、それまでは8月前半から76~78円のレンジ取引が続いていた。相場格言に、「天井3日、底100日」というものがあるが、介入によって8月初めからの底ばい状態が、チャート的にはいったん上放れた格好となっている。

ドル/円5年サイクル〟が後ろにズレこんだ理由"

以前、マネーポストでも解説したことがあるが、もともとの私の予想は、2010年の年末から2011年の初頭にかけて、円は天井を付けるというものだった。その根拠のひとつは、過去、ドル/円の高値・安値のサイクルが5年程度だったことによる。つまり、たとえ2011年10月31日の75円台前半が円の天井だったとしても、当初の予想は1年程度ズレてしまった格好だ。

そうなった理由としては、海外の機関投資家を中心にした、日本および円の過大評価による円買いがある。

円が金とともに安全資産と見なされて買われているのは、日本の国債は、ほぼ国内の金融機関が保有し、自国の資金で消化されているからであろう。しかし、いまやその世界的な常識もどんどん怪しくなっている。

銀行や保険会社、ゆうちょといった国内の金融機関が保有しているということは、私たち国民が保有しているのと同じだ。個人金融資産は、2011年3月末時点で1476兆円あるが、負債も366兆円あり、負債を差し引いた純資産は1110兆円ある。つまり、1110兆円までは国債を国内で消化することができることになる。

2011年3月末時点の国債の発行残高は924兆円で、これを1110兆円から差し引くと186兆円残る。毎年40兆円ずつ新規の国債を発行していくと、5年で186兆円の枠が埋まってしまうことになる。

実際は、毎年の新規国債発行額は40兆円では収まらず、東日本大震災の復興費用などもあって、この先3年程度で186兆円の枠はなくなるだろう。その可能性が日増しに高まっている現在、いつ日本売りが起きてもおかしくはない。

さらに、2011年11月のG20(主要20か国・地域)サミットで、野田首相は消費税の引き上げについて言及した。日本の財政破綻が現実味を持ちつつあるという認識が背景にあったのだろうが、消費税の増税も大きな円安要因となることを付け加えておきたい(下記囲み記事参照)。

QE3は比較的小規模なものになると予想

チャート上でも、円安に向かう環境は整っている。では、いつ頃、円安のトレンドが明確になるのだろうか。

私は、米国で量的金融緩和策第3弾、通称「QE3」が始まったときが、そのタイミングだと考えている。

EUでは、欧州金融安定化基金が大幅に拡大され、中央銀行による利下げも行なわれた。すでに、大規模な金融緩和に踏み出している。オーストラリアも利下げをしたし、2011年10月にはブラジルも利下げをしている。しかし、円は、介入前の高値を更新してはいない。つまり、円相場はすでにこうした各国の金融緩和を織り込んでいるのだ。

唯一、円相場がまだ完全に織り込んでいないのが、米QE3である。その規模がどれくらいのものになるのか、現時点ではわかっていないからだ。

金融市場には、2012年秋に大統領選挙を控えたオバマ大統領が再選を確実にするために、是が非でも景気回復を図ろうとして大規模なものになるという予想もある反面、QE3が実施される可能性は少ない、という見方まである。もし、大規模なものとなれば、ドルはさらに売られて、円が最高値を更新する可能性もあるだろう。

しかし私は、QE3は実施されるものの、比較的小規模なものにとどまるのではないかと予想している。米国では、雇用統計も地道に改善しているし、物価の上昇も始まっている。金利も上昇基調にある。力強さを欠いているとはいえ、米国の景気が回復基調にあることは間違いないだろうからだ。

もし、QE3が私の予想通り、それほど大規模なものにならなければ、発表された段階で〝材料織り込み済み〟となり、円安が進行するだろう。時期としては、2012年の前半だと考えている。

2~3年の間に1ドル=100円程度へ

すでに2011年10月31日の為替介入時に円は天井をつけており、円安トレンドへの転換は始まっていると見ていいだろう。私の予想では、さらにそのトレンドが2012年前半のQE3発表後から加速していく。前述したように、過去、ドル/円の高値・安値のサイクルは5年程度となっている。つまり、今はドル/円を大底で仕込める〝5年に一度のチャンス〟といっても過言ではない。

実際、過去のサイクルから分析する限り、一度トレンドが転換すると、最低でも20円程度は円安方向に動いている。今回もその通りであるならば、2~3年の間に1ドル=100円程度にはなるだろうし、それ以上の円安になることも十分考えられる。

こうしたチャンスを逃す手はない。FXで勝つための一番のコツは、大きなトレンドが生まれるとき、いかにその波に乗れるかどうか、だからだ。

もちろん、短期的には円高方向に動くことはあると思う。そうしたときこそ、逆に仕込みのチャンスと思ってもらいたい。日々チャートを見ながら、少しでも安く仕込んでいく。そうやって積み上げていったポジションが、数年後には大きな利益となって帰ってくるだろう。

私のセミナーなどでは、参加者の方々から、激しい為替市場の動きに直面して、どうトレードしてよいのかわからない、といった声をよく聞く。私も、相場の難しさをあらためて実感する日々だが、こういうときこそ人は成長するのだと思う。

相場が激動しているときほど、きちんとした予想を立てて相場に臨み、的中すればよし、外れたときは自分の予想のどこが間違っていたのかを検証する。いまは、ゲーム感覚で超短期売買のトレードをする人も多いが、私にいわせれば、それは、トレードの楽しみを自ら放棄しているようなもの。

ピンチこそ最大のチャンス。相場とともに、投資家として大きく成長して欲しい。

「マネーポスト」2012年新春号に掲載