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【注目トピックス 日本株】三井化学 Research Memo(4):ビジョンケア材料、不織布、歯科材料が中核

2017年1月6日 7:41

■各事業セグメントの詳細

(2)ヘルスケア事業

a)事業の全体像
三井化学<4183>のヘルスケア事業は、製品別ではビジョンケア材料、不織布、歯科材料の3製品群が中核となっており、同事業セグメントのおよそ90%を占めている。市場としては、ビジョンケア材料はメガネレンズ市場、不織布は紙おむつ市場や衛生用品市場、歯科材料は歯科治療市場、という対応関係にある。

売上高の地域別内訳は、日本、アジア、欧米が約3分の1ずつというバランスのとれた構成になっている。不織布を日本、中国、タイの3ヶ国で生産しているほか、ビジョンケア材料も日本、韓国、中国の3ヶ国で生産してグローバルで販売している。また、歯科材料はドイツの世界6位の歯科材料メーカーであるHeraeus Kulzerを2013年に買収して業容を拡大した。こうした点が売上高の地域別構成に反映されていると言える。

b)事業の収益構造
ヘルスケア事業のうち、メガネレンズ材料はファインケミカル品の領域に属し、価格は安定的だ。一方、原料価格の変動も販売価格に占める割合が小さく、結果的に利幅の変動も小さいと考えられる。したがって数量の伸びが売上高と利益を決定付けると考えられる。

不織布も価格や原料については安定していると考えている。同社はプレミアム紙おむつの領域に特化しており、性能や機能といった付加価値ゆえに選ばれているため、代替が効きにくいと考えられるためだ。一方で、顧客の幅が狭くなるため、その生産動向に販売数量が影響を受けると考えられる。アジアでのプレミアム紙おむつ市場全体は高成長が期待できても、顧客がシェアを失うようなことがあれば、その影響が同社にも及ぶ可能性があるということに注意が必要だ。

為替レートの影響は小さい。理由は、メガネレンズ材料においては円建て取引を行うケースが多いことがまず挙げられる。また、不織布については、中国とタイに生産拠点を有し、為替影響を排除できていることがある。こうした要因から為替レートの影響はほぼニュートラルとみている。

c)各製品群の詳細
1)ビジョンケア材料
同社のビジョンケア材料事業は、プラスチック製のメガネレンズ用の樹脂材料(形状としては液体)を、レンズメーカーに販売するビジネスだ。メガネレンズの素材はガラスとプラスチックに大別されるが、現状はプラスチックが約80%を占めている。このプラスチック用メガネレンズ市場において、同社のレンズ材料は世界シェア45%を占めている。

メガネ用レンズは光の屈折率により、高屈折、中屈折、低屈折とグレードが分かれている。高屈折レンズは矯正の度数が強くても薄肉化・軽量化が可能だ。この屈折率の特性は、レンズメーカーが加工で実現するだけではなく、同社のようなレンズ材料メーカーが供給する樹脂の特性によっても決まる。同社は得意の光学樹脂の技術を生かし、高屈折レンズの分野から事業を開始し、この高付加価値分野では圧倒的な世界シェアを握るに至っている。

世界的に見た場合、市場のすそ野としては中屈折や低屈折のレンズの市場も大きいため、それに対応すべく、中屈折に強いKOC Solutionを2013年3月に、低屈折に強いACOMONを2011年4月に、また、調光レンズ(光の強さでレンズの濃度が変わるレンズ)用材料に強いSunSencorsを2014年5月に買収し、メガネレンズ市場のサブセグメント全域にわたって対応できる体制を整えた。それが前述の世界シェア45%というトップポジションの獲得につながっている。

プラスチックメガネレンズは表面コーティングがなされているが、同社はコーティング材でも強みを有している。自社技術に加えて、防曇コート材のFSI Coating Technologies(2010年)、UV硬化型ハードコート材のLens Technology International(2014年7月)、熱硬化型ハードコート材のSDC Technologies(2008年)を次々と買収し、 コーティング材でも幅広いラインアップを完成させている。

メガネレンズ市場は世界的に年率4%の成長が続いており、今後もそのペースで拡大すると期待されている。そうした市場拡大に対応すべく、同社は主原料のXDI(メタキシリレンジイソシアネート)について大型設備を建設し2016年3月に営業運転を開始した。高級品から普及品までの幅広いラインアップと、コーティング技術や色素技術やフィルム技術などの幅広い要素技術を武器に、ニーズの拾い上げと新たな価値の提案について、直接の顧客であるレンズ製造メーカーの先の小売店や消費者にまでリーチを広げ、更なるシェア拡大を目指す方針だ。

2)不織布
不織布は繊維を熱や化学的、機械的作用で接着または絡み合わせることで布にしたものだ。繊維の種類を変えることで様々な用途に用いられている。そのなかで同社の不織布は紙おむつ向けで強みを持ち、高シェアを獲得している。50年以上前に登場した紙おむつは、日本や欧米の先進国で発達してきたが、現在では東南アジアなどの新興国にも広く普及し、現地メーカーも増加している状況だ。

そうした今日でも、日本や一部欧米の紙おむつメーカーの製品は“プレミアム紙おむつ”として、中国や東南アジア諸国の消費者から高い人気を誇っている。同社の不織布は、肌触りや伸縮性、フィット感などが評価され、プレミアム紙おむつ市場で約60%~70%のシェアを握っている。1枚の紙おむつには部位に応じて複数のタイプの不織布が使い分けられているが、同社の不織布はその性能を生かし、ギャザーの部分(ウエスト周り)やバックシート等に使用されている。

乳児用紙おむつの世界市場伸長率は年約6%とされているが、人口増加率の高いアジアやアフリカではより高い成長が見込まれている。そうした高成長市場において、日本や欧米の紙おむつメーカーの製品はプレミアムブランドとしての地位を確立しており、当該地域の経済成長及び個人所得増加とあいまって、今後も高い成長が期待されている。同社は、国内において名古屋工場の増設を決定した(15,000トン/年、2017年11月完工予定)ほか、100%子会社のサンレックス工業(株)においても能力増強を計画している(6,000トン/年、2017年11月完工予定)。また中国・天津(15,000トン/年)とタイ(不織布30,000トン/年、通気性フィルム11,000トン/年)に工場を擁し、高まるプレミアム紙おむつの需要拡大に十分対応できる体制を整え、現在の高シェアを維持・拡大していく計画だ。また、高機能という特長を生かし、同社にとっては新分野となるメディカル用途などへの展開も狙っている。

3)歯科材料
同社の歯科材料の歴史は古い。子会社(出資比率70%)のサンメディカル(株)の主力製品である歯科用接着剤(スーパーボンド®など)は30年の実績に裏打ちされて国内で高シェアを獲得してきた。そうしたなか同社は、2013年に確固たるブランドとグローバル展開力を有する世界6位の歯科材料メーカーであるHeraeus Kulzerを買収して歯科治療材料の領域に進出した。

しかしながら、Heraeus Kulzerの買収からここまでは決して順調とは言えない状況だった。北米での低迷や、買収当時に計画していた事業モデルの変更を余儀なくされたりした結果、買収当初の利益計画から遅れが生じた。その結果、2016年3月期において同社はのれんの減損損失約19,500百万円の計上を余儀なくされた。

2017年3月期に入り、Heraeus Kulzerの業況は着実に改善しつつある。歯科材料の素材としてはセラミック、金属、樹脂など複数あるが、Heraeus Kulzerは総合的な品ぞろえを有している。一方、義歯の製造においてはデジタル化が進んでおり、CAD/CAMと3Dプリンタの活用が一般化しつつあるが、Heraeus Kulzerもそれへの対応力を高めるべく注力している。そうした技術的なバックグラウンドに、組織体制や営業体制の再編を実行して、収益貢献への道筋がようやく見えてきたという状況にある。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)

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