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【注目トピックス 日本株】三井化学 Research Memo(3):自動車業界を対象とする事業・製品の集合体

2017年1月6日 7:38

■各事業セグメントの詳細

(1)三井化学<4183>のモビリティ事業

a)事業の全体像
モビリティ事業は自動車業界を対象とする事業・製品の集合体だ。その製品群別売上構成比は、海外PP(ポリプロピレン)コンパウンドが47%と最も大きく、エラストマー、機能性コンパウンドが続いている。最大構成比を占める海外PPコンパウンドは、主な用途が自動車のバンパーだ。“海外”というのは米国を主体に、アジア、欧州など日本以外の市場で、日系メーカーの現地工場及び海外メーカーに供給していることを表している(日本国内の自動車工場に対しては、国内工場からPPコンパウンドを供給しており、それは基盤素材事業に属している)。

売上高の地域別内訳は、海外PPコンパウンドの約60%が北米で、約40%が中国を含むアジアで販売されていることもあり、地域別売上構成比もそれに沿った形となっている。機能性コンパウンドやエラストマー、機能性ポリマーは地域的に日米欧アジアの各自動車工場にバランスよく販売されているとみられる。自動車業界の地理的勢力分布に照らすと欧州の構成比が現状は9%と低いが、この数値は今後、海外PPコンパウンドの欧州自社拠点建設の検討などと合わせて次第に上昇してくる見通しだ。

主力製品のPPコンパウンドは、PP樹脂をベースに、様々な改質剤を配合(コンパウンド化)し、目的に見合った特性を持たせたものをいう。同社の場合はタフマー®という自社開発の改質剤が優れた特性を有していることも、自動車向けPPコンパウンドのシェア獲得につながった。すなわち、同社のPPコンパウンド事業の強みは、タフマー®など添加物質の配合ノウハウと、ベースとなるPP樹脂を世界各地の市場で調達してコストを削減し、コンパウンドとしての性能と価格競争力を両立できている点にあると言える。2016年までにグローバルで生産能力100万トン体制を確立、2017年に現有能力を105万トンに拡大、今後の市場拡大への対応力を整えた。

モビリティ事業ではほかに、ドアシール材、内装表皮、燃料タンクなどの領域において、同社の製品が強みを発揮し、高シェアを握っている。ドアシール材では同社のエラストマー(合成ゴムの一種)である三井EPTが対候性や加工性を武器にシェアを伸ばしている。また、機能性コンパウンドに含まれるミラストマー®がリサイクル可能な点やデザイン性が評価されて内装表皮材としてダッシュボード周りに使用されている。同じく機能性コンパウンドに含まれるアドマー®は、樹脂製燃料タンクの製造時の接着剤として広く利用されている。

b)事業の収益構造
モビリティ事業の販売先は自動車関連業界であるため、販売数量は自動車生産台数の動向の影響を受けることになる。特に同社のPPコンパウンドは北米とアジアで販売されているため、両地域での生産台数の影響をより大きく受けるものの、自動車の軽量化ニーズの高まりに伴い、PPコンパウンド等の需要拡大が期待される。

価格については、販売価格はほぼ一定していると考えてよい。したがって各製品の利幅は、主として原料価格の変動によっての影響を受けると考えられる。原料価格の下落局面では製品価格の値下げを要求されることも多いと想定されるが、逆の場合には価格転嫁できないことも多いとみられる。

モビリティ事業のもう1つの特徴は、為替感応度が高いということだ。1円の変動で年間3~4億円の営業利益インパクト(円安メリット)とされている。これは、PPコンパウンドを始めとした海外現地法人の利益を邦貨換算する際に発生する為替差が主である。

c)注目される成長製品
モビリティ事業には、現在の事業規模は小さいが、高機能や高付加価値を武器に、平均よりも高い成長性と採算性の実現が期待される製品や市場が数多くある。そのうちのいくつかを以下に紹介する。

1)自動車ミッションオイル用添加剤『ルーカント®』
ルーカント®はエラストマー事業の中に属する製品で、潤滑油の添加剤だ。特に自動車のディファレンシャルギアやトランスミッション(特にATやCVT)で使用されるオイルの添加剤として使用された場合、燃費改善とギア長寿命化に優れた効果を発揮する点が評価されている。

同社はルーカント®の販売において、2014年9月に米ルーブリゾール(Lubrizol)と提携を行った。ルーブリゾールはディファレンシャルギアやトランスミッション用オイル、エンジンオイルなどの添加剤パッケージ分野で世界最大手であり、強力な販売網を有している点に特長がある。同社はルーブリゾールとのエクスクルーシブ契約(独占契約)のもと、岩国工場で生産したルーカント®を米国のルーブリゾールの工場に送っている。ルーカント®はそこでギアオイルやミッションオイルの添加剤として調合され、大手石油会社各社の自動車用油脂類となって、最終的には世界中の自動車の中に入っていくという流れだ。アフターマーケットで販売されるギアオイルにもルーカント®が使用されているのは言うまでもない。

2)車載用カメラレンズ材『アペル®』
アペル®は高機能樹脂シクロオレフィン・コポリマーの一種で、透明・高屈折・低複屈折が特長の光学樹脂だ。防湿性や耐薬品性にも優れている。これまでアペル®は光ピックアップレンズ向けに圧倒的なシェアを持つとともに、スマートフォン等のモバイルカメラの撮像レンズ向けにも高い採用実績を誇ってきた。

現在同社がアペル®で取り組むチャレンジは、車載用カメラのレンズへの採用だ。サイドミラーレス車や自動運転車などの実現はカメラ抜きには語れない。車載カメラ台数は現在8,000万台と言われているが、2020年までにはこれが2倍以上に増加するという見通しもあり、同社はここを狙っている。ライバルはガラスレンズとなるが、加工性やコストの面から、ガラスからプラスチックへと素材代替が進む余地が大きいとみての決断だ。

ハードルは熱や湿度などの耐環境性や黄ばみ、変形などに対する要求性能のクリアだ。これまでのところは、これらの点ではガラスレンズが上回っていた。同社は2013年に車載向けレンズをにらんだ開発をスタートしたが、半年後には各種の要求性能をクリアし、車載用レンズとしての採用が決定した。自動車用部材の実際の販売には家電などに比べて格段に長いリードタイムを要するが、2017年3月期中に量産が開始され、2018年3月期からは実際に自動車に搭載される見通しとなっている。

3)金属樹脂一体成型部材『ポリメタック®』
一般に、金属と樹脂(プラスチック)という異種素材の接合には、ねじ止めや溶接などの技術が用いられている。それに対してポリメタック®は金属と樹脂を射出一体成型することで、そうした接合の工程を不要とし、かつ、強度確保と軽量化を実現する技術だ。

自動車に対する軽量化ニーズはよく知られているが、一方でコスト面も重要な視点だ。ポリメタック®は、様々な金属と様々な樹脂を一体成型できる、“つなぐ技術”である点がポイントだ。すなわち、強度と重量及びコストのバランスをとりながら様々な部材の成型が可能となる点に大きな特長がある。

ポリメタック®は既に実用化されており、エアロセンス(株)((株)ZMPとソニーモバイルコミュニケーションズ(株)の合弁企業)の無人飛行機の骨格や、スマートフォンやモバイル機器の筐体(プラスチックと金属フレームを一体成型したボディ材)など、様々な方面で採用されている。しかし、自動車の構造材としての利用には、強度や耐久性など様々な性能試験や評価のプロセスが必要であり、開発から生産までのリードタイムも長い。現在は2020年の自動車用材料としての実用化に向けて開発が進められているところだ。前述のように、ポリメタック®は強度・重量・コストの3つのバランスの実現を可能にする技術であるため、実用化されれば普及は早いのではないかと弊社では期待している。

4)共和工業買収と新たなシナジー追求の取り組み
同社は、上述のような新“製品”のほかにも、“ビジネスのしくみ”という点でも新しいことにチャレンジしている。その一例が2014年9月に行った金型メーカー共和工業(株)の買収だ。

同社は素材メーカーとして、合成樹脂(例えばPP樹脂)を製造し、場合によっては様々な改質剤を加えてコンパウンド化(例えばPPコンパウンド)して自動車メーカーに販売してきた。その過程でも積極的な提案を行いながら営業してきたが、さらに効率性と提案力を高める営業の実現に何が必要かと考えたとき、浮かび上がったのが“見える化”だ。例えば新型コンパウンドのデザイン性や塗装性などを説明する際、実際にモノを作って見せるのが何よりも効果的と言える。共和工業は金型メーカーとして対外的にビジネスを行いながら、一方で同社グループの“社内工場”として提案力やソリューション力の強化に貢献している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)

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