*11:01JST 上新電機 Research Memo(1):2025年3月期業績は期初計画から下方修正
■要約
上新電機<8173>は、日本の大手家電量販店の1社であり、家電製品や情報通信機器、エンターテインメント商品、住宅設備機器などの販売を中心に手掛けている。また、製品販売だけでなく、その付帯業務や商品の修理、配送、保守業務までカバーしており、販売にとどまらない充実した周辺サービスの提供に強みや特徴を持っている。
1. 2025年3月期第2四半期の業績概要
2025年3月期第2四半期累計の連結業績は、売上高が前年同期比2.8%減の191,986百万円、営業利益が同59.9%減の1,838百万円、経常利益が同60.9%減の1,777百万円、親会社株主に帰属する中間純利益が同29.4%減の2,196百万円となり、期初に発表した第2四半期業績予想である売上高198,000百万円、営業利益4,600百万円、経常利益4,600百万円、親会社株主に帰属する中間純利益3,200百万円に対し、全ての項目において下振れての着地となった。特に売上高に比べて営業利益以下の未達幅が大きくなっているが、これは前年同期と比較して売上総利益率が26.8%から26.5%へと0.3ポイント低下、一方で販管費率は24.5%から25.5%へと1.0ポイント上昇したことによる。
2. 2025年3月期の業績見通し
2025年3月期の連結業績は2024年10月25日に下方修正が発表され、売上高が410,000百万円から400,000百万円(前期比0.9%減)、営業利益が9,000百万円から4,000百万円(同52.2%減)、経常利益が9,000百万円から4,000百万円(同51.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益が6,000百万円から3,800百万円(同22.3%減)へとそれぞれ引き下げられた。通期の営業利益率の見通しは1.0%で、前期の2.1%から1.1ポイント低下する見通し。上期実績の1.0%に対して下期も1.0%の見通しと大きな改善は見込めない予想だ。販売面では同社が強みとするゲーム機などエンターテインメント分野の売上高が任天堂Switchがモデル末期であることや家庭用ゲーム市場自体の停滞から想定以上に落ち込んだほか、コスト面で人件費や情報システム投資の増加が想定以上に利益を圧迫した形である。
3. 中期経営計画「JT-2025 経営計画」の進捗状況
同社は2023年5月に2026年3月期を最終年度とする3年間の中期経営計画「JT-2025 経営計画」を公表した。数値目標としては、2026年3月期に売上高4,200億円、営業利益110億円、営業利益率2.6%、ROE8.0%以上、ROA及びROIC5.0%以上、配当性向30%以上(2024年3月に40%以上へ引き上げ)、3ヶ年営業キャッシュ・フロー累計400〜450億円、また、2031年3月期のあるべき姿は、営業利益率4.0%レベル、ROE10.0%以上、ROA及びROI7.0%以上、配当性向30%以上持続としている。ただし、2025年3月期の業績予想が大幅に引き下げられたことで、中期経営計画最終年度である2026年3月期の数値目標の達成は容易ではないとみられる。第2四半期の決算を見る限り、同業の家電量販店と比較しても同社の販売の弱さや利益率の低下が顕著な点はやや気がかりであり、今後の早期挽回に期待したい。
■Key Points
・2025年3月期第2四半期は期初計画に対して売上高、営業利益ともに下振れて着地。競合他社と比べ売上比率の高いエンターテインメント分野の外部環境の悪化、白物家電の販売弱含みが損益面で影響した
・2025年3月期は中期経営計画2年目として増収増益を計画し、初年度の出遅れからの回復を狙っていたが、2024年10月25日に通期業績予想が大幅に下方修正された。競合他社と比べて厳しい決算で、早期の利益率回復が課題に
・家電量販店は小売業のなかでも利益率が相対的に低く、専業ECとの競争も厳しい。同社は規模の拡大を追い求めず、アフターサービス体制の強みなどを生かした顧客ロイヤルティの向上で差別化を推進、中長期的に利益率の向上を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 永岡宏樹)
<HN>