ホンダとの経営統合破談で海外企業からの買収防衛策を失った日産自動車(時事通信フォト)
白紙撤回となったホンダと日産自動車の経営統合。業績が悪化していた日産は自力再建の道を選んだが、ホンダという統合相手を失うことにより、世界中から割安の「出物」として狙われる懸念が浮上している――。
ホンダと日産は昨年12月、経営統合に向けた基本合意書を結んだ。新たな持ち株会社を作って、傘下に両社を置く計画だった。以前から電気自動車(EV)などの分野で協業を進めてきたが、両社の急接近の裏には外圧があったと全国紙経済部記者は解説する。
「台湾電機大手・鴻海精密工業が日産株を買って経営に参画しようと、水面下で(日産株主の)仏ルノーに働きかけていることが業界で伝わりはじめました。これを受けて、日産とホンダは焦り、経営統合に舵を切りました。両社の急接近には、買収防衛策としての側面があったのです」
経営統合への基本合意書には「独占交渉義務」が設定され、第三者との提携などを結んだ場合には解約手数料として1000億円を相手方に払う、と盛り込まれた。互いに課した制約で、第三者の介入を防ぐ意図があったとされる。
しかし、業績不振にあえぐ日産のリストラ策にホンダ側は「物足りない」と苛立ちを募らせる。日産に任せていても埒があかないと、当初の対等合併構想を捨て、100%子会社化案を打診。これに強く反発した日産側は、協議を打ち切る考えを伝え、経営統合は破談となった。日産はホンダの力を借りずに自力再建を目指す道を選んだわけだが、経営統合の破談は同時に買収防衛策を失うことを意味する。