*11:46JST 高島 Research Memo(6):新中期経営計画を策定、2029年3月期に営業利益30億円、ROE8%以上を目指す
■中長期の成長戦略
高島<8007>は2026年5月に、2027年3月期を初年度とする3ヶ年の新中期経営計画「中期経営計画2028『サステナ+スパイラル』」を策定した。テーマは「持続的好循環(サステナ+スパイラル)を創出し、成長を軌道に乗せる」ことである。前中期経営計画では、戦略投資やM&A、事業ポートフォリオの組み換え、株主還元の強化などに取り組み、堅実経営から持続的成長へ経営方針を転換してきた。一方で、2026年3月期の実績は売上高906億円、営業利益21.0億円、当期純利益12.2億円、ROE5.2%となり、前中期経営計画で掲げた売上高1,100億円、営業利益26億円、当期純利益19億円、ROE8.0%以上には届かなかった。投資やM&Aに伴う減価償却費、のれん償却費の増加が利益を圧迫しており、新中期経営計画では投資リターンの向上による業績成長と資本効率の改善が課題である。
新中期経営計画の基本方針は、「資本コストと企業価値を意識した経営の推進」「投資の好循環の創出」「稼ぐ人財の持続的輩出」の3点である。具体的には、社会課題と成長性を捉えた事業ポートフォリオの変革、累進配当による積極的な株主還元の継続、グループシナジーの拡大によるリターン向上、100億円規模の戦略投資の継続、多彩なキャリア型人財による稼ぐ人財輩出基盤の確立、成長支援体制の運用と投資の実行を進める。定量目標として2029年3月期に売上高1,100億円、営業利益30億円、当期純利益20億円、ROE8.0%以上を掲げている。2026年3月期実績と比較すると、売上高は21.3%増、営業利益は42.6%増、当期純利益は63.2%増を目指す計画であり、売上拡大だけでなく、投資効果の発現による利益率改善と資本効率の回復を重視する内容である。
事業戦略では省力化、省資源化、再エネ化を主要な戦略テーマに設定している。同社の戦略テーマは建設現場や物流現場の省力化、資源循環、再生可能エネルギー関連需要の拡大などと親和性が高い。各事業を成長性とROICで評価し、戦略テーマに該当する事業と高成長事業に経営リソースを集中することで、事業ポートフォリオの高度化と資本効率の向上を図る方針である。
セグメント別では、建材セグメントを成長ドライバーとする。同セグメントでは、営業領域の拡大と建築請負機能の強化により元請けビジネスを推進し、グループ会社が持つ加工・物流・施工機能との連携を深める。短工期のシステム建築、内装・水回り工事、太陽光・蓄電池設置、基礎工事などを組み合わせ、複合的なソリューションを提供する方針である。2029年3月期の目標は売上高730億円、営業利益27億円であり、2026年3月期実績の売上高584億円、営業利益17.2億円から大きな成長を見込む。産業資材セグメントでは、生産機能の強化とエンドユーザービジネスの推進により利益率改善を目指す。リサイクル資源を用いたカスタム物流資材や医療分野でのソリューションを成長領域として育成し、2029年3月期に売上高220億円、営業利益14億円を計画している。電子・デバイスセグメントでは、部品販売に基板実装機能を組み合わせることで付加価値を高め、ASEAN地域での拠点展開や工場設備投資、外資系企業への拡販を進める。2029年3月期の目標は売上高150億円、営業利益5.0億円である。
グループ経営の面では、経営管理本部を経営統合本部に再編し、全社横断での戦略策定と価値創造を加速させる。M&Aで取得した企業や既存グループ会社との協業を進め、同社が持つ商社機能とグループ会社の施工・加工・実装などの機能を組み合わせることで、投資リターンの引き上げをねらう。また、DX戦略ではAI活用とデジタル人財育成を進め、全従業員によるDX推進を掲げている。事業分野別に社内DXパートナーを設置し、顧客接点のデジタル化、サービス付加価値の向上、生産性改善を進める方針である。
資本配分方針では、財務規律を維持しながら戦略投資と株主還元を継続する。同社は計画期間中の営業キャッシュ・フローを約85億円と見込み、有利子負債の活用も含めて投資と還元の原資を確保する。財務規律はD/Eレシオ1.0倍以下、インタレスト・カバレッジ・レシオ10倍程度を目安とする。キャッシュ・アウトでは、株主還元に約50億円、戦略投資枠に100億円を配分する計画である。戦略投資枠の内訳は更新投資15億円以上、事業・設備投資35億円以上、M&A資金50億円以上としている。投資目標は既存事業の機能獲得・強化、戦略領域での事業拡大、周辺領域への展開である。株主還元については累進配当と機動的な自己株式取得を組み合わせ、従来と同等以上の積極的な還元を続ける方針である。
非財務戦略では、サステナビリティ戦略と人財戦略を重点施策とする。環境面では再生可能エネルギー関連事業と省力化関連事業を拡大し、2031年3月期に省エネ化及び省力化商材のサービス売上で2023年3月期比130%の増加を目指す。温室効果ガス排出量についてはScope1・2の連結排出量を2036年3月期に2025年3月期比で46%削減する計画である。社会面では多様な人財が能力を発揮できる環境づくりを進め、研修受講率100%、外国人管理職比率30%、女性役員比率30%以上、女性管理職比率20%などを目標とする。人財戦略では「稼ぐ人財」の育成を掲げ、成長支援投資については2029年3月期に投資単価5万円、投資時間20時間以上、再投資率1.0%以上、投資効率30倍以上を目標とし、人財獲得、能力開発、エンゲージメント向上に投資する方針である。
同社の新中期経営計画は、前中期経営計画で実行した戦略投資の収益化を進め、そのリターンを次の投資に振り向けることで成長の好循環を目指す内容である。事業面では、建材セグメントを中心に、省力化、省資源化、再エネ化の需要を取り込みながら、商社機能に施工・加工・実装などの機能を組み合わせることで付加価値の向上をねらう。財務面では、戦略投資と株主還元を両立させながらROE8.0%以上への回復を目指す。今後はM&A企業のPMI、グループシナジーの実現、戦略投資の採算改善などが業績目標達成と企業価値向上の重要な論点になると考えられる。
■株主還元策
新中計では累進配当により積極的な株主還元を継続する方針
同社は株主還元策として、配当と自己株式取得を実施している。前中期経営計画では2024年8月に2年間の限定措置として株主還元方針を引き上げ、配当性向80%以上、総還元性向100%以上を掲げていた。新中期経営計画ではこれまでの高水準な還元姿勢を維持しつつ、株主還元方針を「累進配当+機動的な自己株式取得」へ変更した。財務規律を維持しながら戦略投資と株主還元を継続する方針であり、3年間累計で株主還元に約50億円を充当する計画である。
2026年3月期の1株当たり年間配当金は45.00円となった。2025年10月1日付で普通株式1株につき2株の割合で株式分割を実施しており、2026年3月期の配当は株式分割考慮後ベースで前期比2.00円の増配である。2027年3月期の1株当たり年間配当金は46.00円を計画しており(中間配当23.00円、期末配当23.00円)、2026年3月期から1.00円の増配を見込む。親会社株主に帰属する当期純利益を前期比30.6%増の1,600百万円と予想しており、利益回復を見込むなかで累進配当方針に沿った増配を計画している。今後は戦略投資による利益成長と累進配当の持続性が、株主還元策を評価するうえでの重要な論点となろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 吉林 拓馬)
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