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原油価格がマイナスになった仕組みを解説 今後はどう推移するか

 とはいえ、今回のマイナス価格は、単にテクニカルなローカルルールによる異常現象と片づけ、無視できるものでもないと思います。昔から同じルールで行なってきたわけで、過去も不況期にクッシングの貯蔵能力が限界に近づいたこともありましたが、一度もマイナス価格がつくことはありませんでした。いかに原油の需給バランスが崩れているかを表しており、世界的に原油価格が大きく下落していることは確かなのです。

 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない米国では、西海岸のサンフランシスコからロサンゼルス沖にかけて30数隻もの大型タンカーが満タンの原油を積んだまま行くあてもなく滞留しています。洋上貯蔵庫と化しているその量は2000万バレルにものぼるといわれています。世界中で1日に3000万バレル近くの需要減が予想されており、原油があり余るかつてない事態が原油価格を暴落させています。

金融的な混乱に発展する可能性は今のところ小さい

 今後の原油価格については、やはり経済活動がどれだけ早くコロナ以前の状態に戻るかにかかっていると思います。需要が戻らなければ価格は戻らないからです。ただ、需要がV字回復で戻っていくような事態は現時点では想定しにくく、少なくとももうしばらく原油価格は低迷した状態が続きそうです。

 ロシアをはじめ旧来の産油国の目論見として、原油価格を下げることで、採掘コストの高い米国のシェール業界(*)に打撃を与えたいという思惑もあるようで、戻ったとしても、ゆっくり、かつ緩やかなものになると予想します。たとえば、WTIの2020年12月物の原油先物価格は27ドル前後、2021年7月物は31ドル前後、2021年12月物は33ドル前後で推移しているので、年内で考えると、戻ったとしても30ドル以上にはなりにくいのではないでしょうか。

【*地下深くのシェール(頁岩)層に含まれる原油(シェールオイル)や天然ガス(シェールガス)を採掘・販売する企業群】

 原油安は世界的な景気悪化を示すといわれますが、だからといって悪いことばかりではありません。生活面でいえば、日本国内のガソリン価格は大きく下がってきています。ガソリン価格の約半分は税金なので、原油価格の下落割合がストレートにガソリン価格に反映されるわけではありませんが、それでもここまでの原油価格の下落分は、ガソリン価格にすべて織り込まれておらず、まだ下がる余地があると見込まれます。

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