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アイチ・森下安道伝 バブル紳士が頼った「マムシが死んだ」

2021年10月30日 19:00 週刊ポスト

トランプタワーで行われた安倍晋三首相とトランプ大統領の会談(2016年当時)
トランプタワーで行われた安倍晋三首相とトランプ大統領の会談(2016年当時)

 そうしてニューヨーク在住の不動産ブローカーから、トランプタワーが売りに出されていると聞きつけた森下自身が即決した。当人の記憶によれば、当初5部屋を購入したそうだが、うち2部屋をすぐに転売し、残ったのが3部屋だったようだ。
 
 ティファニーの隣にあるトランプタワーは、マンハッタンの中心街に位置する。そこを拠点にすれば、どこへ行くにも便利だ。が、その分購入価格も高い。売り出された部屋は100坪前後で、300平米の広さがあった。日本円にして一部屋あたり10億円もしたという。つまり30億円の買い物なのである。
 
 ちなみに、現在の相場だとトランプタワーは当時の3倍に跳ね上がっているとされるから、100億円だ。安倍晋三が第二次政権を発足させて訪米した際、トランプからそこに招かれた。トランプの自宅は58階の最上階にあり、眩しいばかりの黄金の部屋で二人が歓談していたその光景が、テレビ画面に繰り返し流れた。
 
 もっとも森下によれば、ビルの造りは見た目ほど豪華ではないという。202メートルの高さで58階建てだから、単純計算すると1フロアーあたりの天井高は3メートル50センチほどしかない。池袋にある高さ240メートルの「サンシャイン60」の天井高は平均4メートルだから、トランプタワーのほうがずい分低い。森下はそれがやや不満だったようだ。
 
「あそこは割とセンスのいい女性のデザイナーの設計だそうで、天井から床までガラスの窓。そこから五番街を見渡せました。当時そういうつくり方が斬新で受けたんでしょうけど、アメリカの建物はもっと天井が高い。トランプはビルの階数を増やすために天井を低くしたのでしょう。トランプに連れられて金ピカの応接室にも行ったけど、天井の高さは同じでした」
 
 そんなトランプタワーをなぜ3部屋も買ったのかといえば、当人にとって30億円がさほど高い買い物ではなかったからだ。トランプが米大統領になった頃、その話題になり、森下はこうも言った。
 
「あの頃のトランプはあんなに太ってなかったし、もっとスマートでハンサムだったよ。いっしょに昼メシを食おうとなって、レストランじゃなく、トランプタワーの最上階にある彼の部屋に呼ばれたんだよ。ステーキをご馳走になりました。たしかそこに、何とかというボクサーも来ていたな」

 森下が食事をしたのは日米の首脳が会談した黄金の間ではなく、隣の応接室だったという。実は会食に同席したのは、ヘビー級のマイク・タイソンである。
 
 1985年3月に18歳でプロデビューしたタイソンは、破竹の11連勝を飾り、全米で一躍有名になる。森下がタイソンと食事をともにしたのは、1986年11月にタイソンがトレバー・バービックに2ラウンドTKO勝ちしたすぐあとのことだった。森下は日本からいっしょに来た秘書たちとともにトランプやタイソンと米国流の分厚いステーキに舌鼓を打った。
 
 トランプは30億円の部屋を買ってくれた取引相手に気遣い、史上最年少のWBC世界ヘビー級王者を同席させたのだろう。もっとも当の森下はボクシングやタイソンのことには興味がないので名前も思いだせなかった。タイソンはボクシングの話題しかなく、せっかくの会食もさほど話が弾まなかったという。
 
 森下が買ったトランプタワーの3部屋は、絵画の買い付けのための拠点となった。1980年代後半の森下は、ここからニューヨークのオークション「サザビーズ」に出向き、ヨーロッパの名画を手当たり次第に買い漁っていった。またついにロンドンにある英オークション会社「クリスティーズ」株まで買って筆頭株主に躍り出る。やがて世界の画商のあいだで世界の2大オークション会社のオーナーとしてその名が轟き、ゴッホやピカソ、ルノアール、モネといった「森下コレクション」が有名になる。森下は本格的に絵画を学んだわけではない。だが、不思議な審美眼を備えているといわれる。本業の金融業とともに絵画や骨董の美術品取引は森下の蓄財を支えた。
 
 森下は本業の金融業はもとよりゴルフ場開発や不動産の転売、仕手筋との取引、それぞれの事業で大儲けした。ビジネスを支えてきたのは、拝金主義といわれた独特の嗅覚だろう。それを頼り、政財界の大物から暴力団組長にいたるまで、大勢の著名人が吸い寄せられてきた。

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