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バブルの王様 アイチ森下安道伝

アイチ森下安道伝 バブル期に銀行株の買い占めに動いた“街金の帝王”

2022年1月22日 19:00 週刊ポスト

 森下はこの頃、真正館建設のために武井や他の金融業者仲間と頻繁に欧州旅行に出かけた。パリの家具通りを訪ねたあと、森下は武井たちを何度もベルギーの王立ゴルフ場「ロイヤルクラブ」に案内した。
 
 在ブリュッセルの日本大使館には、1970年に自衛隊の市ヶ谷駐屯地で割腹自殺を遂げた小説家・三島由紀夫の実弟、平岡千之が参事官として勤務し、ベルギーのボードゥアン第5代国王と親しくしていた。親日の国王のおかげで日本人のツアーガイドも宮殿に出入りでき、森下が最初にブリュッセルに立ち寄ったときには王立ゴルフ場でラウンドさせた。それで味を占めた森下が武井たち貸金業者を「ロイヤルクラブ」に連れて行くようになったのだという。

 企業相手のアイチに対し、武井が率いた武富士もまた1970年代後半になると、個人の小口金融で業績を伸ばして急成長した。1975年に貸付残高が30億円に到達し、1977年には121億円と100億円を突破する。
 
 武井はその勢いに乗って1982年に30億円を投じて高井戸に豪邸を建設した。研修施設『真正館』を兼ねたその豪邸は、田園調布の森下邸よりさらに大きく、鉄格子の門と鬱蒼とした森に囲まれた1500坪の敷地に、地下1階地上2階建ての延べ床面積600坪の洋館が建つ。武井は地下にプールを設け、そこで泳いだ。
 
 武富士は1996年に株式を店頭公開、1998年には東京証券取引所第1部への上場を果たした。ピーク時の2001年の売上高が4000億円に達し、都銀並みの利益をあげていった。
 
 一方、手形金融から不動産開発、株や絵画の取引にいたるまで幅広く手掛けるようになった森下は、1980年代に一挙に狂乱景気が膨らむと、1日に400億円を動かすといわれるまでになる。アイチグループの取引額は89年1年だけで1兆4172億円に上った。

銀行そのものを持つことが悲願だった

〈王は大遠征に身を滅ぼし、貴族は私闘のうちに力を失い、平民が通商で富を蓄える。金銭の影響が国事の上に現れだす。交易は権力への道を開く新たな拠点であり、金融業者は一つの政治権力となり、人に蔑まれつつも、また人におもねられる〉
 
 フランスの思想家A・トクヴィルは名著『アメリカのデモクラシー』の序文にそう書く。森下安道は、まるでバブル経済の王様のように君臨した。

 森下はこの間、さまざまな場面で話題を提供したが、わけても株の取引は、金融市場を震撼させた。端緒は宮城県仙台市に本社のあった第二地銀「徳陽相互銀行」株の買い占めである。1986年の有価証券報告書に、いきなりアイチが10番目の大株主として登場し、証券界の注目を浴びた。
 
 アイチとともにクローズアップされたのが、池田保次が率いた仕手集団「コスモポリタングループ」だ。コスモポリタンはアイチより上位の6番目の株主となっていた。徳陽相互銀行株の発行済み株式全体に占める割合は、197万株を購入したアイチが2.5%、252万株のコスモポリタンが3.2%となり、合わせて5%を超えた。
 
 元山口組系の暴力団組長として鳴らした池田は、仕手筋に転じて暗躍してきた。目黒にあった老舗の「雅叙園観光」や廃棄物処理プラント「タクマ」株を買い占め、株価を吊り上げてきた。その仕手戦の資金を融通してきたのがアイチであり、森下はすでに池田に300億円以上を貸し付けていた。徳陽銀行のケースでも、コスモポリタンの金主がアイチなのは明らかだった。

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