マネーポストWEB「マネーポスト」公式サイト

バブルの王様 アイチ森下安道伝

アイチ森下安道伝「アイデン事件」で明らかになった小佐野賢治との蜜月

2022年2月26日 19:00 週刊ポスト

ロッキード事件でも公判中の身だった小佐野賢治氏。森下安道氏の関係は?(時事通信フォト)
ロッキード事件でも公判中の身だった小佐野賢治氏。森下安道氏の関係は?(時事通信フォト)

【連載『バブルの王様』第二部第1回】大手ノンバンク「アイチ」を率いてバブル経済の頂点に君臨した森下安道は、数々の大型経済事件に関わっていく。画商でもあった森下にとって、それはまるで「展覧会」であった。『バブルの王様 アイチ森下安道伝』の第二部1回目、ノンフィクション作家・森功氏がレポートする。(文中敬称略)

 * * *
 摂政時代を含め、2度の世界大戦に直面した天皇が崩御し、元号が昭和から平成に移った。国民が喪に服した1989年、平成の始まりに日本はバブル景気の絶頂へと向かう。連載第一部で報じてきた通り、狂乱景気を謳歌したアイチグループは、貸金取扱高を1兆円の大台に乗せ、森下安道は全国の銀行株を買い占めた。福徳銀行にはじまり、地銀のなかでも最大級の横浜銀行や京都銀行の株を買い、さらに都銀の大和銀行まで触手を伸ばした。
 
 バブルの頂点に君臨した森下は、ここから多くの経済事件にかかわる。森下自身は、1967(昭和42)年から1975年にかけ、暴行や詐欺、出資法違反、恐喝の疑いで4度逮捕されている。だが、起訴はされず、当人はそのほとんどで罪を免れてきた。起訴された刑事事件は意外に少ない。アイチを設立した草創期の1971年に脱税で摘発されたあと、1975年にトイレ洗剤メーカー「サンポール」社長に対する強要事件を引き起こしたくらいだ。

 もっとも、そこから「マムシの森下」、「企業の葬儀屋」、「地下経済の帝王」などというありがたくないあだ名で呼ばれるようになる。それだけに、刑事事件を恐れるようになったのではないだろうか。
 
 その森下が最後に逮捕、起訴されたのは1980年代半ば、照明・オーディオ機器メーカー「アイデン」偽装増資事件だった。東京地検特捜部によって摘発された。それ以来、数多あるバブル経済事件に深くかかわっていながら、本人は捜査対象にはなっていない。それはアイデン事件で何らかの教訓を得たからのように思える。

増資詐欺の元祖の事件

 名機AFスピーカーシリーズで知られるアイデンは、1970年代のオイルショック以降、業績が低迷してきた。資金繰りに窮した創業家の社長・山内礼一や常務の渡辺歳之のすがった相手が、森下だった。山内らは新たな株を発行して資金調達をしようとし、森下がそれに応じた。いわゆる第三者増資である。
 
 森下と山内は1984年2月、1株250円で1280万株、32億円分の新株をトランジスタ製造販売会社「東洋電子工業」社長・橋本孔雄などに引き受けさせた。かねて森下を捜査のターゲットに据えてきた東京地検特捜部は、これを架空の見せかけ増資だと睨んだ。事実、新株を引き受ける予定だった東洋電子やアイデン子会社の「アイデン商事」では、株を買う15億円の金策がおぼつかなかった。そのためアイチが東洋電子に10億円、アイデン商事に5億円を貸し付けた。
 
 むろん森下に抜かりはない。融資する際、2000万円の利息と同時に、株式払い込み保管証書をカタ(担保)にとった。株式払い込み保管証書とは文字通り、出資金が増資した企業の口座に払い込まれたという証明書だ。現在は不要だが、旧商法では株式増資した事実を登記するときに必要と規定され、銀行が発行してきた。
 
 アイデンもまた、この株式払い込み保管証書を使い、東京法務局に増資の登記をした。東洋電子やアイデン商事がアイチから融資を受けたひと月後の1984年3月だ。発行済み株式総数1008万株から2288万株に変更する登記申請をした。

 ただしこの株式払い込み保管証書は、企業が資金を得た証に過ぎない。登記手続きさえ終われば用済みとなる。森下たちはこれを巧みに利用した。アイデンの増資登記が終わったとたん、森下は東洋電子とアイデン商事の2社から15億円の貸金を回収した。その返済原資がアイデンに払い込まれた15億円なのは言うまでもない。とどのつまり、資金をぐるっと回し、登記という事実だけを残すための見せかけ増資にほかならない。
 
 案の定、アイデンは増資したわずか2カ月後の1984年4月、再び資金が枯渇して倒産する。森下はこの間、創業家の山内一族が経営権をアイチに譲れば40億円の融資をする、と持ち掛けた。それがアイデンの労働組合の知れるところとなって「会社の乗っ取りだ」と拒否され、山内は自己破産の道を選んだ。
 
 架空増資をして会社の経営状態を誤魔化し、新株を担保に金融機関などから融資を受ける。アイデンも5億6000万円の融資を騙し取った。増資詐欺は今もたまに見られるが、その元祖の事件だといえる。

不動産売却の完全マニュアル
不動産売却の完全マニュアル
【2021年版】不動産一括査定25サイトを徹底比較!
【2021年版】不動産一括査定25サイトを徹底比較!
【無料】すまいValueで大手6社に不動産一括売却査定
【無料】すまいValueで大手6社に不動産一括売却査定

注目記事

【実取引データ】ほったらかしFX自動売買 3か月で1000pips超の利益

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。

SNSでマネーポストWEBをフォロー

  • facebook:フォローする
  • twitter:フォローする

【お知らせ】

2021年4月1日以降の価格表示に関して

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。