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バブルの王様 アイチ森下安道伝

アイチ森下安道伝 元山口組系組長の仕手筋・池田保次の金主として

2022年3月19日 19:00 週刊ポスト

コスモポリタングループを率いた池田保次(写真/AFLO)
コスモポリタングループを率いた池田保次(写真/AFLO)

【連載『バブルの王様』第二部第3回】貸付総額1兆円超のノンバンク・アイチを率いた森下安道は、その資金力をもとに「投資ジャーナル」の中江滋樹や「コスモポリタングループ」の池田保次といった仕手筋たちの金主となり、バブル経済を支配していった。『バブルの王様 アイチ森下安道伝』の第二部第3回、ノンフィクション作家・森功氏がレポートする。(文中敬称略)

 * * *
「兜町の風雲児」と証券界にその名が鳴り響いた中江滋樹は、何度も昔の夢を見ていたのであろう。刑務所から浮世に舞い戻ったあとも、株式投資にのめり込んだ。だが、もはや当人に往年の神通力はない。カネ集めのためには、以前に増して危ない橋をわたる以外になかった。
 
 1998年、人材派遣大手「パソナグループ」代表の南部靖之の投資指南役となって、老舗の鉄鋼メーカー「ヤハギ」株の仕手戦を演じ、資金繰りに窮して三井物産グループの倉庫会社「三井埠頭」の手形を乱発した一件は前回書いた。このときアイチの森下安道が3億円を用立て、中江はそれを持ったまま行方をくらましてしまう。ここから中江は事件を引き起こすたび、自らの姿を隠した。
 
 三井埠頭の額面総額160億円の手形を乱発した中江は、同時に株の仕手戦にも乗り出した。それを間近で見ていたのが、森下の秘書の一人だった大野晃である。

「三井埠頭の仕手戦で中江さんの金主となったのが、山口組系の金融会社でした。中江さんはそれを返せなくなって失踪してしまった」
 
 大野はアイチの札幌支店や大阪支店の営業部にいた経験があり、仕手筋との付き合いも多かった。コスモポリタングループの池田保次と取引したこともある。中江とも親しかった、と次のような裏話を打ち明けてくれた。
 
「あの(1998)年の4月でした。中江さんのお父さんが亡くなり、私も実家のある滋賀の近江八幡でおこなわれた葬儀に参列しました。葬儀の席には、中江さんにカネを貸していた(山口組系の)金融会社の社長が焼香に駆け付けていた。その葬儀の場の別室で打ち合わせが始まりました。中江さんによれば、社長から借金のかたに三井埠頭の株を担保にとられているという。中江さんはその席で、『この先の資金繰りのため、一時的に担保の三井埠頭株を戻して欲しい』と頼んでいました。で、金融会社の社長が社員に株を届けさせたらしい。その翌日のことでした。中江さんは株を持ったまま、連絡が途絶えてしまったのです」

 この金融会社は新宿区四谷にあった。山口組の中でも直参と呼ばれる東海地方の直系二次団体の武闘派組織が傘下に置いてきた。警視庁が山口組の大きな資金源の一つとして企業舎弟に認定してきた、名うての闇金融業者だった。
 
 のちに中江の関係者に確かめたところ、このときの借金は5億円だった。中江は融資の担保として10億円分の株券を闇金業者に預けていたという。それを業者からいったん返してもらい、新たな仕手戦を仕掛ける腹積もりだったようだ。仕手戦を始めるには、タネ玉と呼ばれる最初に売り買いする株が必要になる。そのタネ玉は多ければ多いほどいい。
 
 中江は10億円分の株があれば、それを使って他の金融機関から融資を受けることもでき、それで窮地を切り抜けられると考えたのかもしれない。改めて仕手戦の勝負に出た。それは一発逆転狙いの危ない賭けといえた。

 中江が最後に仕掛けた仕手銘柄は、四国・高松市の農機具メーカー「コムソン」株だった。三井埠頭の手形を乱発したのも、株を買い占める資金づくりだったに違いない。株に投じる資金に困った中江は、福岡県警がのちの2001年9月に投資詐欺容疑で摘発した「エンジェルファンド」事件にも関与していた。
 
 中江の狙ったコムソンは1990年代初頭、あの許永中が51.8%という過半数の株を取得し、話題をさらった時期もある。いわゆる狙われやすい仕手銘柄として知られた。中江がそこに触手を伸ばした、と評判が立ち、いっときは株価が上がった。だが、それも長続きせず、1999年3月に倒産する。すでにパソナが資本参加したヤハギも前年9月に倒産しており、中江にとっては万策尽きた格好だ。コムソン倒産から2カ月後の1999年5月、中江は行方をくらました。アイチの大野は当時の様子を目の当たりにしている。こう述懐した。
 
「むしろ真っ青になったのは(企業舎弟の)金融会社の社長でした。中江さんの担保株持ち逃げは、すぐに山口組直参の親分の知れるところとなり、社長が呼び出された。無茶苦茶に殴られ、そのあと会ったときには、社長の顔面がドッジボールのように膨れ上がっていました。見るも無残でした」

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