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【注目トピックス 経済総合】マネックス証券【金融テーマ解説】ドイツ銀行と他行への波及:株価底打ちも、抜本的な改善には時間(1/2)

2016年10月11日 19:18


今週はドイツ銀行の米司法当局への支払いが安く済むとの報道から銀行の株価が回復した。10月6日には、IMFも早期の和解を促しており、金額はどうあれ、この司法問題は収束間近と予想される。
それでも、世界の大手行の株価純資産倍率(PBR)は、資本力の強い米銀と北欧の銀行という健全5行を除き、すべて1倍を割っている。不安が一服した現在、世界の金融機関の株式や債券は投資好機と言えるのか。
ドイツ銀行の問題は、今回の司法問題で改めてハイライトされたものの、本質的には収益力と財務力の問題である。収益環境が改善するか、資本比率を引き上げない限り、抜本的な解決にはならないだろう。特に、金融危機後に世界の大手行が発行した「CoCo(ココ)債(Contingent Convertible Bond、偶発転換社債)」(概要を後述)に関わるリスクは何らかの費用発生のたびに再燃することになるだろう。以下にドイツ銀行の課題とそのリスクの影響を解説する。
世界の金融株の連動性の高さは他の業界の比ではない。日々、巨額の銀行間取引が行われており、ある1行の調達コストの上昇は業界全体に波及しうるためである。金融業界では、ライバル会社のリスクは、市場シェアを奪える等の好機ではなく、むしろ「一蓮托生」的である。特にドイツ銀行の不安は世界の金融機関に影響を与えやすいと、IMFは6月のレポートで指摘している。
投資対象としては、様々な外部要因で相対優位にある米銀がベターであるが、それ以外の金融機関については、株・債券ともに、依然慎重スタンスで臨みたい。当面の注目イベントは、ドイツ銀行の米司法当局への支払い額決定(時期未定)、欧州各行の9月期決算発表(ドイツ銀行や英主要行10/27、モンテパスキ10/28)、イタリア憲法改正に関わる国民投票(12/4)などである。

ドイツ銀行の課題1:法務関係費用のリスク

ドイツ銀行は、住宅ローン担保証券の販売に関する米司法当局に対する支払額を1.4兆円(140億ドル)から半分以下の5,400億円(54億ドル)程度に節約できる可能性が高まってきた。これなら、ドイツ銀行が金融危機後昨年までに計上してきた法務関連費用累計額約1.6兆円や、累計で1行当り3~4兆円規模の費用を計上してきた米国大手行と比較してもさほど突出した金額ではない。しかし問題は、これらの費用が利益や資本と比較して重たいという点である。では、ドイツ銀行の利益と資本にはどんな課題があるのか。

ドイツ銀行の課題2:脆弱な資本

ドイツ銀行の資本比率を、二つの側面から見てみたい。いずれの側面からも課題が多く、今回の司法関連費用の問題がなかったとしても、資産圧縮や資本増強が早期回復への近道と思われる。
一つめは、現在の規制の中心になっている「普通株式等Tier1比率(CET1比率)」である。7月に発表された欧州のストレステストの結果、悲観シナリオ下でのドイツ銀行の資本比率は、9%の最低所要比率に対して1.2%ポイント不足する。これはバークレイズの1.7%ポイントの不足に次いで大きい。
このストレステストには、今後の法務関連費用は含まれていない。この影響度を試算すると以下の通りとなる。
ドイツ銀行の資本比率の分子は、約5.0兆円で、分母のリスクアセットは約46兆円程度(=€402billion因みに邦銀で近い規模のところがないが、みずほの62兆円や三井住友トラストの18兆円の間)。資本は約5.0兆円(€43billion)で、比率は10.8%となっている。
規制当局がドイツ銀行に求める最低比率は9%であるが(今はまだ移行期間で、完全施行は2019年)、世界の大手行の平均は15年 12 月末時点で、既に11.7%とドイツ銀行より遥かに高くなっている。
規制上の最低比率を割り込むと、業務が制限される事態となるが、その可能性はあるだろうか。今後の利益等も考慮すれば、追加法務関係費用がおよそ1.7兆円を超えない限り、恐らく規制最低比率を本当に下回ってしまうという事態は生じないだろう。
しかし、資本の問題はこれだけではない。金融危機後に新たにBISが策定したレバレッジ比率がより深刻だ。この指標では、ドイツ銀行は、世界の大手行の中で最低レベルとなっている。現在この規制上の最低比率は試験的に3%とされているが、BISは2017年に引き上げを決める可能性がある。仮に最低比率が4%に引き上げられた場合、ドイツ銀行を含むいくつかの銀行は、決められた期間内に何らかの形で比率を引き上げなければならない。レバレッジ比率の分母は調整後総資産であるため、調整後総資産160兆円のドイツ銀行の場合、0.5%ポイントの不足につき8,000億円規模の資本が必要になる計算である。

(以下、2/2につづく)

マネックス証券 チーフ・アナリスト 大槻奈那

(出所:マネックス証券「金融テーマ解説」より)



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