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【注目トピックス 日本株】アンジェス Research Memo(5):HGF遺伝子治療用製品「安静時疼痛」の適応追加向け国内開発は中止を決定

2022年9月16日 15:45

■アンジェス<4563>の主要開発パイプラインの動向

2. HGF遺伝子治療用製品DNA
HGF遺伝子治療用製品は血管新生作用の効果を活用して、閉塞性動脈硬化症のなかでも症状が進行した慢性動脈閉塞症向け治療薬として開発が進められてきた。慢性動脈閉塞症とは、血管が閉塞することによって血流が止まり、組織が潰瘍・壊疽を起こして最終的に下肢切断を余儀なくされることもある重篤な疾患である。治療法としてはカテーテル治療や血管バイパス手術などが行われているが、手術ができない状態になっているケースも多く、新たな治療法の開発が望まれていた。

HGF遺伝子治療用製品は、血管が詰まっている部位周辺に注射投与することによって新たな血管を作り出し、血流回復によって潰瘍の改善や安静時疼痛の緩和といった症状の改善を図るというもの。国内では2019年3月に、「標準的な薬物治療の効果が不十分で、血行再建術の施行が困難な慢性動脈閉塞症における潰瘍の改善」を効能、効果または性能として、条件及び期限付販売承認を取得し※、同年9月より「コラテジェン(R)筋注用4mg」として提携先の田辺三菱製薬を通じて販売を開始した。用法は、虚血部位に対して筋肉内投与を4週間間隔で2回行い(4mg/回)、症状が残存する場合には4週間後に3回目の投与を行うことも可能となっている(薬価は約61万円/1瓶(4mg))。

※本承認の条件は、承認日から5年以内に、1)重症化した慢性動脈閉塞症に関する十分な知識・治療経験を持つ医師のもとで、創傷管理を複数診療科で連携して実施している施設で本品を使用すること、2)条件及び期限付承認後に改めて行う本品の製造販売承認申請までの期間中は、本品を使用する症例全例を対象として製造販売後承認条件評価を行うこと、の2項となる。

条件及び期限付承認となるため、製造販売後承認条件評価を実施することになっており、5年以内に120症例のデータを収集し、非投与群(プラセボ)80症例との比較を行い、同結果をもって本承認の申請を行うことになる。現在の進捗状況について見ると、2021年末に患者登録が完了しており、1年間の経過観察期間を経てデータを収集、評価・分析を行うことになる。2023年前半頃に判明する結果が良好であれば本申請を行い、2024年の本承認取得を目指すことになる。なお、市販後調査についてはデータの集積を目的に今後も継続していく予定となっている。

また、慢性動脈閉塞症の「安静時疼痛」の適応追加を目的に国内で実施してきた第3相臨床試験については、2021年12月に目標症例数40例の投与を完了し、データの整理・分析を進めてきた結果、主要評価項目である二重盲検試験期(ステージ1)において12週後の安静時疼痛の投与前からの変化量において、プラセボ群に対して有意差が得られなかったことから、開発中止を決定した(2022年9月7日付発表)。同社では適応追加により製品価値を高めたうえで薬価の引き上げを目指していたが、今回の開発中止により薬価引き上げの可能性は薄まったと言えよう。国内では「潰瘍の改善」を効果、効能として本承認を取得し、販売拡大を目指していくことになる。国内の慢性動脈閉塞症の患者数は約80万人だが、このうち「コラテジェン(R)」が現在使用可能な患者数※は0.5~2万人程度と同社では推計している。

※投与対象肢の動脈に閉塞又は狭窄部位が認められ、かつ潰瘍を有していること(平均10cm程度、最大約30cmまで)。血行再建術の適応が困難なこと。既存の内科的治療や処置による症状改善が認められないこと。血行動態の指標が一定水準以下であること等。

一方、米国では2020年2月より後期第2相臨床試験がスタートしている。2019年6月に閉塞性動脈硬化症のうち、包括的高度慢性下肢虚血についてのグローバル治療指針※が公表され、同治療指針を踏まえて下肢切断リスクの低いステージ1~2の患者を対象に臨床試験を進めている。国内の臨床試験は症状が比較的重い患者が対象であったが、米国では軽度な患者を対象としているのが特徴だ。主要評価項目は「潰瘍の改善」と「血流の改善」としており、治験プロトコルはHGF遺伝子治療用製品またはプラセボを4週間の間隔を置いて4回投与するというもの。被験者を4mg/回、8mg/回、プラセボの3群に分けて各20症例のデータを収集する(観察期間は12ヶ月間)。

※グローバル治療指針(Global Vascular Guidelines;GVG):包括的高度慢性下肢虚血(CLTI:Chronic limb-threatening ischemia)の初期段階から適切な治療マネージメントを提供することで患者のQOLの向上を図ることを推奨している。本ガイドラインでは臨床ステージを4段階(clinical stage1~4)に分け、それぞれのステージにおける治療方針が示されており、今回の試験では下肢切断リスクの低いclinical stage1と2を対象としている。このステージの患者には、まず潰瘍の治療を考慮することがガイドラインで推奨されており、該当する患者数は閉塞性動脈硬化症患者778万人のうちの約60%を占めると専門家は指摘している。

米国の臨床試験の進捗状況も順調のようで、2022年内に被験者登録を完了し、2024年に試験結果を発表するスケジュールに変わりない。試験結果が良好であれば、RMAT※指定制度を用いて早期承認を目指すことも選択肢の1つとして考えているようだ。米国における閉塞性動脈硬化症の患者数は日本と比べて格段に多いだけに、今後の開発動向が注目される。

※RMAT(Regenerative Medicine Advanced Therapy):重篤な疾患を開発対象とした再生医療の先端治療法で、臨床試験で一定の効果を示したものに対する指定制度。RMAT指定を受けた品目は優先審査と迅速承認の機会を得ることができる。

そのほか、2019年2月にイスラエルのKamadaとイスラエルを対象国とした導出(独占的販売権許諾)に関する基本合意書を締結しており、現在はKamadaが規制当局と協議を進めるなど申請準備段階にある。また、2020年10月にはスペシャルティ薬(特定疾患専門薬)を扱うトルコのEr-Kimと、トルコでの導出に関する基本合意書を締結したことを発表している。今後、Er-Kimが薬事承認を取得後に独占販売権を締結し、販売、マーケティング、現地での医療活動に関する役割を担っていくことになる。薬事承認に先立って、Named Patient Program※を活用したトルコでの販売を開始する予定にしている。

※Named Patient Programとは、特定の患者に代わって、医師からの要求に応じて、人道的見地から当該国での未承認の医薬品を提供するプログラムのこと。同プログラムに申請して承認されれば、患者は後期段階の臨床試験中の薬や他国で既に承認済みの薬の提供を受けることが可能となる。

なお、「コラテジェン(R)」の販売承認を条件付きながらも国内で得られたことで、国内初の遺伝子治療用製品となっただけでなく、世界初のプラスミド(DNA分子)製品及びHGF実用化製品、末梢血管を新生する治療用製品、循環器医療領域での治療用製品となり、遺伝子医薬のグローバルリーダーを目指す同社にとっては大きな第一歩を踏み出したものと評価される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

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