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FiscoNews

【注目トピックス 日本株】キヤノン:成長領域を拡大し収益基盤を強化するグローバル総合メーカー

*12:33JST キヤノン:成長領域を拡大し収益基盤を強化するグローバル総合メーカー
キヤノン<7751>は、精密機器大手としてオフィス向け複合機やプリンティング機器、医療機器、デジタルカメラをはじめとするイメージング機器、さらに半導体・FPD製造装置といった産業機器まで幅広く事業を展開している。グローバルに事業基盤を構築しており、売上規模は4兆円を超える日本を代表する製造業の一角である。事業構成は「プリンティング」「メディカル」「イメージング」「インダストリアル」の4事業が中心で、いずれも世界市場で高いシェアを有する。特にカメラ分野ではミラーレス機で世界的存在感を持ち、医療分野ではCTやMRIを提供するキヤノンメディカルを通じ成長市場を開拓している。近年はネットワークカメラや生成AI向け半導体露光装置など、新たな需要に対応した高付加価値製品群の投入を加速しており、売上高・利益水準ともに底堅く推移している。

同社の強みは、第一に多角的な事業ポートフォリオによる安定性にある。従来のカメラ製造やプリンティングによる巨大な事業基盤を有する一方、医療機器や半導体製造装置も展開することで全体収益の拡大を図っている。売上の約8割が海外向けとなっており、国内経済に依存しない収益体制を築いている。第二に研究開発力の高さである。年間3,000億円を超える研究開発費を投じている上、強力な知財管理部門によって多くの特許を確保している。また、動画撮影特化型の「EOS/PowerShot Vシリーズ」や商業印刷カットシート機である「varioPRINT iX3200」など新製品投入を積極的に行い、市場需要を的確に取り込んでいる。第三に、構造改革と経費削減を背景とした収益改善力が挙げられる。特に海外販売網での改革効果により営業利益率は改善傾向を示しており、資本収益性向上に寄与している。

2025年12月期の上半期の業績は、売上高2,198,567百万円(前年同期比2.0%増)、営業利益214,308百万円(同8.0%増)と増収増益となった。売上高は過去最高となっており、ミラーレスカメラやネットワークカメラの堅調な販売、医療機器の米国・新興国需要の伸長がある。メディカル、ネットワークカメラ、半導体向け露光装置などの成長も寄与しており、事業ポートフォリオの多角化の進捗を示す結果となっている。通期予想は売上高4兆6,000億円(前期比2.0%増)、営業利益4,600億円(同64.4%増)と大幅な増益を計画している。これは前期のメディカル領域での約1,650億円ののれんの減損からの反動増が大きいが、全体として収益性改善のモメンタムは継続している。

今後の成長見通しとしては、2025年がグローバル優良企業グループ構想Phase VIの最終年であり、次の成長段階に移行する重要な節目である。2026年以降のPhase VIIでは「販売構造の見直し」「メディカル事業の強化」「生産拠点の再編」の3つの構造改革を着実に完了させ収益性を高めるとともに、売上拡大を図る。とりわけ生成AI需要を取り込む半導体露光装置や、社会課題解決に資するネットワークカメラ、さらには次世代のペロブスカイト太陽電池向け高機能材開発など新領域での成長が期待される。足元では半導体の露光装置の生産キャパシティ増強のため宇都宮に新工場を建設するなど、更なる事業拡大の動きを活発化させている。また、半導体製造に活用できるナノインプリント技術や環境配慮型製品の開発を強化しており、長期的な成長ドライバーとして機能する見通しである。こうした姿勢の下、来年には中期経営計画の新フェーズに突入し、さらなる成長分野の拡大を目指していく。

株主還元については、配当性向50%を目途とする方針のもと、2025年12月期の年間配当は160円(前年比5円増配)を計画している。自社株買いについても直近で3,000億円規模を実施済みであり、成長投資と株主還元の両立を志向している。直近株価ベースでは配当利回りは3.6%となっており、安定的かつ積極的な還元姿勢が評価できる。

総じて、同社は多角的な事業ポートフォリオと高い研究開発力を背景に、安定成長と収益性改善を両立させている。生成AI向け半導体露光装置やネットワークカメラといった成長分野を取り込みつつ、株主還元も積極的に実施しており、今後の業績拡大と資本効率改善に注目していきたい。

<HM>

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