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FiscoNews

【注目トピックス 日本株】京セラ:構造改革と資本効率改善を推進、新成長戦略を今期末までに発表予定

*13:12JST 京セラ:構造改革と資本効率改善を推進、新成長戦略を今期末までに発表予定
京セラ<6971>は1959年、稲盛和夫氏により京都セラミックとして創業された電子部品・機器のグローバルメーカー。アメーバ経営による徹底した部門別採算制度を基盤に、ファインセラミック技術を核として部品から完成品、サービスまで多角化を推進してきた。素材技術に立脚した垂直統合型モデルと、強固な財務体質が伝統的な特徴だが、近年は保有するKDDI株式等の資産の有効活用やROE(自己資本利益率)向上に注力するなど、構造改革を推進している。

同社の事業は3つのセグメントで構成される。主力のコアコンポーネントは、売上高の3割程度を占め、半導体製造装置用ファインセラミック部品や有機パッケージ、車載カメラ用部品などを扱い、AI・デジタル社会のインフラを支える最も収益性の高い部門である。電子部品は、売上高の2割程度を占め、コンデンサやコネクタ、水晶デバイス等を展開し、通信・車載市場に強みを持つ。米国子会社Kyocera AVX Components Corporation(以下、KAVX)もここに含まれる。ソリューションは売上高の5割程度を占め、一般向けから各種産業用の工具、ドキュメント機器(複合機・プリンタ)、通信機器、情報通信サービス等を扱っている。

同社の強みとしては、祖業であるセラミック分野における高い技術・市場占有率、長年の実績に基づく顧客との関係性がある。また、ドキュメントソリューションにおいては、国内外で様々な顧客接点があり、幅広い同社製品をクロスセルすることが可能になっている。

事業環境については、生成AI普及に伴うデータセンター投資の拡大が商機になりうる。半導体製造装置向け部品事業やセラミックパッケージ事業など、同社が事業拡大できる余地は大きいだろう。ソリューションにおいては、ペーパーレスが進展する中、中長期的にはプリンター、インクジェット関連などは需要減が見込まれるものの、データ管理や産業用プリンターなどの新規事業を開発することで対応を急いでいる。

2026年3月期の通期連結業績予想は、売上高は前期比3.2%減の1,950,000百万円、営業利益は同156.4%増の70,000百万円、税引前利益は同83.9%増の117,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は同294.2%増の95,000百万円へと上方修正されている。第2四半期累計実績では、売上高は為替の円高進行(主に対米ドル)の影響等で微減となったものの、税引前利益は前年同期比31.1%の大幅増益で着地した。課題であった半導体部品有機材料事業や子会社KAVXの収益性が改善し、構造改革の成果が数字として表れ始めている。

2026年3月期を最終年度とする中期経営計画では、売上高2.5兆円、ROE7%以上などの目標を掲げているが、足元の進捗を踏まえると目標達成には距離感がある。一方、経営陣は戦略の見直しや構造改革を優先しており、課題事業の黒字化や売上高2,000億円程度の事業見直しを断行している。なお、当期末までには新たな将来ビジョン、成長戦略などが発表される予定であり、成長路線への再回帰に対する期待が高まろう。

同社は構造改革を進める中、株主還元の強化を打ち出している。保有するKDDI株式の一部売却を実行し、約2,100億円の資金を確保する一方、上限2,000億円という過去最大規模の自己株式取得枠を設定し、買付を実施している。配当については、配当性向50%程度を目安とし、今期は年間50円を維持する方針である。政策保有株の縮減と積極的な還元姿勢は、PBR1倍割れに対する強いコミットメントと言えよう。

投資の視点では、KDDI株売却による資本効率の改善、事業見直しによる収益性の向上、そしてAI関連需要の取り込みが見込まれるなど、成長路線への再回帰が期待される。構造改革の更なる進展や新たな成長戦略を確認する必要はあるが、足元の株価バリエーション(PBR0.88倍、予想配当利回り2.42%)を踏まえると投資妙味があると考える。

<HM>

fisco

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