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相続放棄の手続きは意外に簡単 代行で頼んでも10万円以内に

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相続放棄の手続きは意外と簡単(相続放棄申述書)
相続放棄の手続きは意外と簡単(相続放棄申述書)

「相続放棄」――というとお金をドブに捨てるのかといったイメージがあるが、実際は放棄した方が得になるケースも少なくない。たとえば親が現金と田舎の実家を遺した場合、現金だけを相続することはできない。しかし田舎の家は維持費が嵩む上、廃屋化した場合には地方自治体から数百万円もの撤去費用を請求されるなどの例もある。

 そんなときの一つの選択肢が相続放棄だ。その手続きは意外に簡単だ。相続人は相続が発生した(被相続人が死亡したことを知った)日から原則3か月以内に、被相続人(故人)の住所があった地域の家庭裁判所に「相続放棄申述書」と戸籍謄本などを提出する。

 申述書は相続人と被相続人の本籍地や住所、死亡日時の他に、〈遺産が少ない〉〈債務超過のため(故人に借金がある)〉など6項目の放棄理由の該当項目に丸を付けるようになっている。相続財産の面積や金額、負債額などを書き込む欄もあるが、「面積がわからなければ、宅地や農地欄に丸を付けるだけでいい」(税理士)という。

 その後、家裁から自宅に「相続放棄照会書」が郵送されてくるので、必要事項を記入して送り返し、裁判官が受理すれば手続き完了である。

「改めて照会の手続きを取るのは、相続放棄の申請を行なったのが相続人本人かどうかを確認するためです。照会内容は公表していないが、概ね申述書と同じ。一般に、財産や負債が正確に網羅されていなくても受理される」(東京地裁総務課)

 手続きを自分でやれば費用は印紙代の800円と切手代のみ。手続きは面倒だと思うなら、弁護士や司法書士に依頼すれば全部代行してもらえる。相場は10万円以内のケースが多い。相続発生を知ってから3か月を超えても「相続放棄」が認められるケースがある。ただし、その場合、家裁で裁判官の審問を受ける場合もある。

「放棄できる条件は限られていて、主に被相続人に借金があったことを知らなかったケースです。審問ではいつ、被相続人の借金の存在を知ったかの確認や相続発生後に遺産を使っていないかを尋ねられることが多いが、不正がなければ放棄は認められます」(北村真一弁護士)

 これで相続の煩わしい手続きも、使わない家や土地を相続して余計な費用負担がかさみ、「しまった」と後悔することもなくなる。

「親が亡くなって子供が相続放棄した場合、相続権は第二順位の祖父母、第三順位の親の兄弟姉妹(亡くなっている場合はその子供)に移る。礼儀として、叔父叔母や従兄弟に、“相続放棄したので土地の相続権はそちらにあります。負債はありません”などと連絡した方がいいでしょう」(同前)

 逆に、従兄弟が相続放棄して叔父叔母の遺産の相続権が自分に回ってくることもある。放棄によって身軽になる――そうすることが“最強の相続対策”となるケースは少なくない。

(*週刊ポスト2018年6月1日号)

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