高金利通貨の落とし穴と攻めどころ
公開日:2017年10月11日 19:00
最終更新日:2020年2月26日

10月9日(月)早朝、トルコリラが急落しました。対米関係が悪化し、お互いにビザの薄給を停止するという措置を取ったことが急落のきっかけでした。ブルームバーグのデータによると、6日(金)NY市場でトルコリラ円は31.16円前後で引けましたが、週明けの東京市場早朝で29.055円と6.6%もの大きな下落となりました。
トルコリラ円をトレードする個人投資家の一部の人は「強制決済」となってしまった方もいらっしゃるでしょう。また、一部の方は「チャンス」とばかりに買い向かった人もいるかもしれません。
個人投資家の方々には、高金利通貨であるトルコリラや南アランドは人気の様ですが、プロトレーダーの間でこれらの通貨を積極的にトレードする人は、もちろん中にはいますが、こうした何かあった時に大きなギャップを伴い変動するので、避ける傾向にあります。
そもそも、高金利通貨を買って低金利通貨を売る、いわゆる「キャリートレード」は、かつてはほとんど行われませんでした。金利の変動よりも為替レートの変動の方が大きいので、昔のトレーダーの人達はほとんど金利を考慮してなかったと思います。
ただ、全く金利は考慮されないかというと、そんなことはありません。
かなり遡りますが、1980年代のボルカー議長の高金利政策の時は、さすがに米金利が20%を越えましたので、ドルに資金が集中しました。その後のプラザ合意で「金利選好」の時代は終わりましたが、1990年台初頭に比較的金利の高かった北欧通貨に対するキャリートレード、また1990年台後半に日本の政策金利がほとんどゼロになったことから円売りのキャリートレードが活発化しました。
2000年台に入ると、MBAを取得したトレーダーが多くなったこともあり、ポートフォリオ理論を背景としたキャリートレードが様々な通貨ペアに反映されるようになりました。
実は経済理論的にはキャリートレードで儲かることはないということになっています。金利の高さはインフレ率の高さの裏返しでもあり、インフレ=通貨の購買力低下です。高インフレの国の通貨は、チャートが右肩下がりになりがちです。そこを高金利から来るリターンでどの程度カバーできるか、そこが勝負になります。
プロトレーダーの「キャリートレード」は通貨ごとにポートフォリオを構築して行っています。マーケットが薄いことからくる、フラッシュ・クラッシュ的な動きを避ける意味もあります。
個人投資家の場合は、そのような複雑なことは難しいので、「どこで買うか」が勝負の分かれ目のような気がします。南アランドでも、かつて月曜日早朝に急落することがありました。南アフリカの人々にとって見れば、自分達の知らないところで大量のロングを構築され、それが損切りされ、通貨が乱高下する、不思議な思いで見ているのではないでしょうか。
東京市場月曜日、特に休日の日は、フラッシュ・クラッシュが起こりやすいタイミングです。また、その時に付く値段は「異常値」と言ってよいほどの値段になるので、資金に余裕のある方は、そこを買い向かいのチャンスと考えて良いのではと思います。
【PROFILE】志摩力男(しま・りきお):慶応大学経済学部卒。ゴールドマン・サックス、ドイツ証券等、大手金融機関にてプロップトレーダー、その後香港にてマクロヘッジファンドマネジャー。独立後も、世界各地の有力トレーダーと交流し、現在も現役トレーダーとして活躍。公式サイト(http://shimarikio-official.com/)
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