2018年は円高・円安、どちらでも納得? 来年の為替相場を考察
公開日:2017年12月27日 18:00
最終更新日:2020年2月26日

各社の2018年予想が出揃う時期になりました。2017年が史上3番目に動かなかった1年だったので、各社の2018年予想も「穏当」なものになっています。
極端な予想がない。円高派の人で105円程度、円安派の人でも120円。100円割れとか、125円突破といった予想は見受けられません。
2017年に円高派だった人は、今年も円高方向を見ています。円安派の人は今年も円安派です。結局、2017年は何処にも相場が行かなかったので、円高派の人も円安派の人も相場観を変える必要がありません。ただ、心持ち円高派が増えている感じがします。
ドル円相場は動きませんでしたが、ドルをインデックスで見れば下落しました。ドルインデックスはその構成要素の6割ほどがユーロなので、ほぼユーロドルと同じと考えてもよいのですが、2017年はユーロ反発、ドルが下落した一年でした。
カナダドルもカナダ経済の好調を背景に上昇。ユーロとカナダドルが2017年を象徴する通貨だったと思います。豪ドルやNZドルといったコモディティ通貨は、これといった動きのある相場ではありませんでした。
それでは2018年はどうなるのか。
一番の変化は、トランプ税制改革の成立です。法人税は35%から21%へと大幅に減税され、個人所得税も減税、15.5%ながらリパトリ減税も実現しています。
米国経済はただでさえ好調なのに、減税も加わり、2018年のGDPは従来予想より0.4~5%程度そこ上げされるはずです。市場予想ではFRBは2018年3回ほど利上げする予定です。もっともトランプ大統領に任命されたパウエル氏ですから、利上げにすごく積極的ではないでしょうが、利上げは続きます。
欧州経済も好調です。今年も2%前後のGDP成長が見込まれています。1月からは資産購入額が半分になり、9月にははっきりと引き締め方向に動くものと見込まれています。
米欧が金融引締めに向かう一方、日本の金融政策は変わらないと考えられています。外人勢の一部には、黒田総裁が「リバーサルレート」に言及したことから、日本の金融政策が転換し、円高に向かうというストーリーを作っている人もいますが、それは実態と乖離していると言わざるをえません。
日本のインフレ率は依然として目標の2%から遠く離れています。日本の金融政策が変わるとしても、それはある時期をもって変わるというより、「万が一、円安に振れた場合」に変わることぐらいしか考えられないからです。金融引締めは円安ありき、円高に推移した場合に政策変更はありえません。
すなわち、金融政策の方向性だけを見ていれば、円安なのです。
しかしながら、為替相場には金融政策以外にも理由があります。まず、円が割高か割安かといえば、これは圧倒的に安いとしか言いようがありません。海外旅行に行けばわかります。どの国に行っても、物価が高く感じられます。購買力平価から見た円の適正レートは95円前後ではないでしょうか。
経常収支も大きな黒字です。今年も20兆円以上の黒字が見込まれます。毎年20兆円近い数字が続いていますが、これが累積すると大変な金額になります。アベノミクスの初期の頃は、貿易収支が大幅な赤字となり、経常収支ももしかしたら赤字?という懸念がありましたが、今は史上最大規模に近い黒字額になっています。
これに加え、最近の円高派は、トランプ政権が通商第一の姿勢をとるため、政治的な円高圧力が加わってくるのではないかと懸念しています。もちろん、北朝鮮問題も潜在的には2018年の大きなテーマでしょう。確率は極めて低いですが、米軍による北朝鮮攻撃があった場合、これはもう相場になりません。素直に円買いポジションをもつべきでしょうか。
トランプ政権は失敗ばかりの政策運営でしたが、この年末に税制改革法案を通して、一気に巻き返しました。この法案にはオバマケアを骨抜きにする内容も含まれているため、トランプ氏は自分が目指していたことをほぼ達成したことになります。有言実行なのです。そうであるならば、他の公約も実現に向けて動くはずとの観測も無視し得ないものがあります。
そうなると、2018年は円高、円安、どちらに振れたとしても納得できそうな年です。私自身の予想としては、年明けリパトリ減税の効果もあり、ドルが買い進められると考えています。しかし、それは数か月で終わり、年末に向けてドル安相場に転じるのではと思っていますが、信念と呼べるほど強い予想では決してありません。
むしろ、あまり予断を持たず、マーケットの動向をよく注意観察して、動きに付いて行く。それが2018年相場には良いような気がしてます。
【PROFILE】志摩力男(しま・りきお):慶応大学経済学部卒。ゴールドマン・サックス、ドイツ証券等、大手金融機関にてプロップトレーダー、その後香港にてマクロヘッジファンドマネジャー。独立後も、世界各地の有力トレーダーと交流し、現在も現役トレーダーとして活躍。公式サイト(http://shimarikio-official.com/)
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