ドル円が米国株同様に突然動き出す? 原因はオプションプレーヤーか
公開日:2018年2月14日 12:00
最終更新日:2020年2月26日

「死角なし」と思われていた米国株が大きく崩れました。原因は諸説ありますが、一度大きく下落すると、それがとてつもない動きになるということはわかっていました。理由は「ショート・ボラティリティ」です。
VIXが歴史的低水準でずっと推移しました。VIXとは、一般的には「恐怖指数」と呼ばれたりもしますが、S&P500のプットオプション(特定日時に銘柄を売る権利)を指数化したものです。
S&P500等、株価の万が一の下落に備えるとき、プットオプションを買ったりしますが、そのプットオプションが買われればプットオプションの値段は上がり、VIX指数は上昇します。逆に、下落の可能性がほとんどないと想定するならば、プットオプションを売るプレーヤーが増え、VIX指数は下落することになります。
2017年の特徴は、株価の上昇も然ることながら、株価の変動率が極めて小さかったことです。毎日の様に最高値を更新しましたが、一日の値幅が0.5%にも達しない日が続きました。これは高い変動率が当然視されていた株式市場本来の姿を考えると、極めて「異様」でしたが、それに気付かないプレーヤーが多かったのでしょう。
株価の変動率がほとんどないということは、オプションを売っているプレーヤーが多いということです。オプションを売ると、反対にマーケットはオプションを買わされることになります。
専門的に言うとガンマロングという状態になるのですが、株価が下がれば買い、株価が下がれば売りというオペレーションをすることになります。オプションを買わされている人が多くなると、株価の動きに対して反対売買しなければならないプレーヤーが増え、マーケットは動かなくなります。
経験を積んだトレーダーがそのようなマーケットを見れば、そのマーケットがかなりオプションを売っている、すなわち「ショート・ボラティリティ」だということはわかります。かなりの金額が売られている。だからこそ、マーケットは膠着して動かなくなってしまいます。
しかし、一度、大きな下落があると、状況は一変します。オプションを売っていたプレーヤーが損失回避のために株を大量に売らなければならなくなるからです。同時に、莫大な損失を覚悟でオプションを買い戻さなければならなくなります。10以下でずっと推移していたVIX上昇指数が、瞬時に50になるというのは異様でした。
さて、問題は、「ショート・ボラティリティ」は解消したのか?という点でしょう。ある程度のショート・ボラティリティは解消したとは思いますが、まだまだ潜在的に残っています。今後の米国株の推移には注意が必要です。
ボラティリティをショートにしているプレーヤーは米国株にとどまりません。世界中のあらゆるアセットのオプションを売る(=ボラティリティを売る)プレーが蔓延していました。” The Global Short Volatility Trade” と呼ばれてます。
いまこうしたトレードが米国株に留まらず、精算を迫られています。
この場合、米国株同様、これまで動かなかった市場こそ注意が必要です。米国株同様、ボラティリティを売っているプレーヤーが多かったということになるからです。身近で最も危険そうなマーケットは何か。私はドル円だと思います。
これまで、ほとんど動かなかったドル円市場ですが、米国株同様、突然猛烈な動きを始める、そのタイミングが迫っている感じがします。要注意でしょう。
【PROFILE】志摩力男(しま・りきお):慶応大学経済学部卒。ゴールドマン・サックス、ドイツ証券等、大手金融機関にてプロップトレーダー、その後香港にてマクロヘッジファンドマネジャー。独立後も、世界各地の有力トレーダーと交流し、現在も現役トレーダーとして活躍。公式サイト(http://shimarikio-official.com/)
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