本邦機関投資家の苦悩 渋々リスクテイクを迫られる理由とは
公開日:2018年4月11日 19:00
最終更新日:2020年2月26日

1980~90年代、生保を始めとした日本の機関投資家は、動かす資金量も、影響力も世界最大級でした。生保が動くと相場も動きました。
ところが金融危機を経験し、金融庁設立以降は、その行動はすっかりおとなしくなりました。かつての外債投資はヘッジ比率を大胆に変えましたが、2000年台に入って以降ぐらいから、外債投資は基本的にフルヘッジ投資になり、海外の長短金利差を取りに行く格好となり、為替相場への影響はほぼゼロとなりました。
今の為替市場は昔と比べて動かなくなったとよく言われます。実際、ボラティリティの数字もかなり違います。フルヘッジ投資が主流になったため、本邦機関投資家が為替市場で大暴れすることがなくなったことが一つの大きな要因だと思います。
本邦機関投資家の収益はどこからくるのかというと、まずは国内債投資です。しかし、アベノミクス以降、日銀が大胆に国債を買い進めたため、日本の機関投資家は必然的に国内債市場からはじき出されつつあります。
もう一つの収益の柱といえるのは、各国の長期債への投資です。短期債で資金調達をして、長期の米国債等を買うことによって長短金利差で稼ぎます。
しかし、ここに来て海外市場の長短金利差を取りに行くというのが、かなり難しくなってきました。資金調達コストが馬鹿に出来ないほど高くなり、結果として長短金利差がほとんどなくなり、投資をする意味がなくなってしまいました。マイナス金利の影響がこうしたところから漏れ出てきています。
日本の生保保険会社は2%前後の約束をしています。なんとかして2%の運用リターンを出さなければなりません。そうなると、不承不承ながら、どうしても米国株や日本株等を買って、高い利回にチャレンジしなければなりません。
ここは大きな決断になります。長い間、積極的なリスクテイクを避けてきた本邦機関投資家は「変身」しなければなりません。3月の対外証券投資の数字を見ると、生保が7644億円、年金が4994億円相当の外のものを買っています。まあまあの水準です。
ドル円の105円前後が固かったのは、こうしたフローが入り始めているからなのでしょう。今年は勝負です。
【PROFILE】志摩力男(しま・りきお):慶応大学経済学部卒。ゴールドマン・サックス、ドイツ証券等、大手金融機関にてプロップトレーダー、その後香港にてマクロヘッジファンドマネジャー。独立後も、世界各地の有力トレーダーと交流し、現在も現役トレーダーとして活躍。公式サイト(http://shimarikio-official.com/)
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