見えてきた「景気後退」 2019年のマーケットは全く違う姿に
公開日:2018年11月14日 20:00
最終更新日:2020年2月26日

原油価格が急落しています。10月3日高値76.90ドルから11月13日には54.75ドルへと、わずかな期間に28%もの下落となっています。これだけ大きな下げは2008年、そして2014年以来です。
2008年の急落は、リーマンショックによる需要急減です。2014年はシェールオイルによる供給過剰でした。今回は、米国がイラン産原油の購入を8か国に特別認めたために、短期的な需給が緩んでしまったためともいえますが、サウジアラビアは「顧客からの需要が50万バレルほど減少した」と発言しています。
サウジアラビアから原油を輸入しているのは、日本、中国、米国、韓国、インド。日本の需要は安定しているでしょうし、米国経済は好調です。そうなると、需要が低下したのは中国? ということになります。米中貿易戦争の影響が出てきているのかもしれません。
米国経済は今年絶好調でしたが、米国株を牽引してきたハイテク株には陰りが見えます。iPhoneの売上が伸びてないとの観測が流れています。このところアップルは高価格路線を取り始めました。それ故、これまで1~2年程度のサイクルで消費者は買い替えていましたが、そのサイクルが伸びている可能性があります。
半導体の売上も、今年は減少しています。アプライド・マテリアルといった半導体製造装置の販売会社の株価は不調です。AIが世の中を変える、そう信じられてきました。もちろん、将来そうなるのでしょうが、今すぐに自動運転車等が走り出したりするわけではありません。未来に対する過度な期待がいったん萎む時期に入っている感じがします。
現在米国経済は絶好調ですが、トランプ減税効果は次第に消滅します。来年、徐々に減税効果は減少し、再来年にはほとんどなくなってしまいます。
そのためトランプ大統領は、今後中間層への減税や、インフラ投資等を進めることで、経済を刺激したいと考えているでしょう。しかし共和党は下院の過半数を失いました。民主党の協力なしには法案は通らないことになります。民主党も中間層減税やインフラ投資には意欲がありますが、2020年の大統領選挙を前にしてトランプ大統領に花をもたせる形で妥協をすることは無いでしょう。
そうなると、米国経済は今がピークという可能性が高まります。「米中間選挙後は株価が上がる」「9、10月は米国株が調整しやすく、そこで買えば高い確率で春先には利食いを入れることができる」こうした格言と言うか、アノマリーですが、これまでは事実でした。
今年はどうなるでしょうか。未来は単純に過去を繰り返したりしません。11月に買った株が例年通りに利食いすることができるでしょうか。それはわかりません。私が現在考えているように、景気後退が世界を覆うとすれば、株式市場でリターンを出して行くことは、簡単ではなくなります。
リーマンショックから10年、株価は底値から3倍になりましたが、転換点を迎えている感じがします。
【PROFILE】志摩力男(しま・りきお):慶応大学経済学部卒。ゴールドマン・サックス、ドイツ証券等、大手金融機関にてプロップトレーダー、その後香港にてマクロヘッジファンドマネジャー。独立後も、世界各地の有力トレーダーと交流し、現在も現役トレーダーとして活躍。公式サイト(http://shimarikio-official.com/)
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