イギリス「合意なきEU離脱」の可能性も 2019年のポンドは大荒れ?
公開日:2018年12月12日 20:00
最終更新日:2020年2月26日

12月11日メイ首相がEU離脱法案の英議会採決延期を決定し、英国のEU離脱が今後どうなるのか、一気に不透明感が増しています。採決延期は、どう見ても下院を通過する見込みがなかったからです。100票近い造反票が出るとの観測もありました。
大差で否決された場合、当然首相への責任論となり、党内からの辞任要求圧力が高まります。それを直前でかわしたとも言えます。
今後どうなるのか。選択肢は次の3つに絞られてきました。
(1)EU残留(国民投票が必要)
(2)英政府のEU離脱案に沿って離脱
(3)「合意なきEU離脱」
メイ首相がEUと合意した離脱案では、僅かな国境管理との見返りに対し、6兆円近い手切れ金をEUに支払い、なおかつかなり高い確率で英国はEU関税同盟から離脱できなくなり、EUへの隷属状態が続きます。離脱強硬派は「高い金を払って植民地にしてくださいなんて馬鹿げている。メイ首相は狂っている」と絶対反対姿勢です。
また離脱反対派は、離脱案では現状よりもかなり不利な立場に置かれることから、離脱しない方がよっぽどマシと考えます。時間的な成約は厳しいですが、国民投票実施を求める方向でしょう。
メイ首相の作戦としては、最終的に(2)の政府案か、(3)の「合意なきEU離脱」か、どちらかを選択せざるをえない究極の状況に至るので、「合意なきEU離脱」はどうしても避けなければならないと考える良識派は最終的に政府案を支持せざるを得ないだろうと踏んで、勝負にかけてきています。
しかし、それはあまりにも危険な賭けです。2019年3月29日までに最終的に十分な支持が政府案に集まらない場合、意図せず「合意なきEU離脱」になってしまう可能性が高まります。
多くの議員が政府によるEU離脱案に反対ですが、「合意なきEU離脱」に反対する人はそれ以上います。よって、最終的に「合意なきEU離脱」には至らず、何らかの妥協点が見つけられると考えている人がほとんどです。しかし、過半数が同意できる「離脱案」は事実上ありません。すなわち、可決できる法案はないのです。
時間的制約もあり、向こう数週間はポンドが売られやすい地合いが続くでしょう。ポンド/ドルは1.25が割れてきたので、次は1.20からもっと下を狙う展開になりそうです。ただ、何らかの解決策が生まれたり、国民投票が決まったりした場合、そのときポンドは激しく買い戻される可能性が高まります。その意味では、ストップロスオーダーを置くことが重要になります。
【PROFILE】志摩力男(しま・りきお):慶応大学経済学部卒。ゴールドマン・サックス、ドイツ証券等、大手金融機関にてプロップトレーダー、その後香港にてマクロヘッジファンドマネジャー。独立後も、世界各地の有力トレーダーと交流し、現在も現役トレーダーとして活躍。公式サイト(http://shimarikio-official.com/)
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