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2019年年初の為替相場で起きた「フラッシュ・クラッシュ」の原因

公開日:2019年1月12日 8:00
最終更新日:2019年1月12日

瞬間的な暴落「フラッシュクラッシュ」はまた起こる

 2019年、年明け直後の1月3日午前7時過ぎ、ドル円は108円を割り込み、一気に104円台後半へと突入しました。豪ドル円はもっとひどく、76円割れたかと思うと、次に価格を見たときには71円割れとなっていました。ポンド円は137円割れ後131.70円前後が安値だったでしょうか。この突然の動きに驚かれた方も多かったのではないでしょうか。この「突風」の被害にあわれた方も多かったと思います。

 こうした瞬間的に値が飛ぶ暴落は、最近「フラッシュ・クラッシュ」呼ばれています。暴落はかつても今も変わらずありますが、この「フラッシュ・クラッシュ」の特徴は一瞬にして値が飛ぶことです。市場取引が完全にコンピューター化されているために起こります。

 なぜコンピューター化されることで値動きが瞬間的に動くのかと言えば、人が声で値段を伝達するブローカー取引では、話すスピードに限界があるので、必然的に市場の瞬間スピードにも限界があります。ある意味、当たり前の話ではあります。

 暴落は、市場の売りと買いのバランスが崩れることで起こります。事前に予測できるかと言えば、できないこともないと思いますが、多くの参加者が予測できてないからこそ、売りと買いのバランスが崩れるのだと思います。

 ただし、今回の様な「フラッシュ・クラッシュ」の場合、コンピューター化によるスピードの速さ、そのことそのものが売りと買いの需給を歪めてしまうのです。具体的に、1月3日に何が起こったのか推測してみたいと思います。

 為替取引証拠金業者の方々は、通常NY市場が終わったあと(今回の場合冬時間のため、日本時間午前7時)、顧客ポジションの値洗いを行います。かつてであれば、損失が限度額を超えた顧客ポジションに対しては「強制執行」が行われますが、今ではリアルタイムに自動的に執行されるので、このタイミングで「強制執行」が行われることは稀です。ただ、値洗いを行っている間、証拠金業者の売買は止まります。その分、市場は薄くなります。

 この時間帯は実質的にシドニーとウエリントンだけ、東京は本格的には参加していない、そして香港・シンガポール不在なので、一日の中でも市場が極めて薄くなります。その上、日本はお正月の休場、参加者はほとんどいなかったのでしょう。

 通常であれば、多くの実需の買いオーダー等に阻まれて市場を動かすことはできませんが、極めて「薄い」時間帯を狙ってドル円を売り仕掛けた参加者がいたとしても不思議ではありません。2018年年末から円高に推移しており、108円を割り込むとチャート的にも大きめのストップロスオーダーがありそうでした。ドル円だけでなく、豪ドル円やポンド円等でも大きめのストップロスが置かれそうなチャート形状だったと言えるでしょう。

 証拠金会社や先物等を使って売買しているプレーヤーの口座は、値動きにより瞬時に損益が計算され、一定のレベルを下回った口座は「強制執行」されます。それが起こったのでしょう。

 また、スピードが速いために、ドル円を買いたいと思っていたプレーヤーがいても、彼らが気付く前にストップロスが執行されます。スピードが速いために売りと買いのバランスが崩れるわけです。そして、ロングポジションが一瞬のうちに消滅したあとに、買いたかったプレーヤーがやってきて買います。ロングポジションがなくなっているので、実はその後のマーケットは簡単に上がっていきます。あとからチャートを見ると、スパイク・ロー、大きな陰線一本、もしくは下ヒゲの極めて長い線だけの形になります。

 最近、ダブルボトムという形はあまり見なくなってきました(ヘッドアンドショルダーもあまり見ません)。テクニカル分析も現状に合わせてアップデートが必要になってきていると思われます。

 市場のコンピューター化によって、市場の動きは明らかに変化しました。コンピューター化によって、一般の方々が容易に為替市場に参加できるようになり、市場に厚みが増し、売買スプレッド(売値と買値の差)も信じ難いほどに狭くなりました。また、コンピューターそのものもAIが導入され、自己判断で売買し始めています。

 市場の厚みがました結果、通常のマーケットにおける変動率は低下してきています。今は極めて低い。普段はほとんど動かなくなりました。その一方、先日のように需給のバランスが崩れたときには、市場は瞬時に大きく動きます。

 通常は動かないが、時折「フラッシュ・クラッシュ」に見舞われる、これが現代マーケットだと思います。

 しかし、前回のコラムにも書きましたが、今後、通常の変動率も高まってくると思われます。市場には潜在的に円売りポジションが多く、何かのタイミングで先日の様な「フラッシュ・クラッシュ」が起こることは、今後も多いと思います。

 これまでは、低い変動率に合わせた売買戦略が功を奏していたのですが、今後は違ってくるでしょう。瞬間的な急変動をも考慮に入れたトレーディングが必要になってくると思います。

【PROFILE】志摩力男(しま・りきお):慶応大学経済学部卒。ゴールドマン・サックス、ドイツ証券等、大手金融機関にてプロップトレーダー、その後香港にてマクロヘッジファンドマネジャー。独立後も、世界各地の有力トレーダーと交流し、現在も現役トレーダーとして活躍。市場参加者の動向やヘッジファンドの動き、外資系トレーダー等の動きは、メルマガ「志摩力男の実戦リアルトレード」で詳しく配信中。公式サイト(http://shimarikio-official.com/



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