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イギリスのEU離脱騒動 英政局混乱=ポンド売りは間違い

公開日:2019年1月25日 20:00
最終更新日:2020年2月26日

イギリスが混乱=ポンド売りは危険?

 EU離脱を巡る英政局の混乱は信じ難いほどです。メイ政権が2年間EU側と必死に交渉しなんとかこぎつけた離脱案を、英国下院は432対202という歴史的大差で葬り去りました。

 確かに、離脱案は離脱派と残留派の間をとった折衷案のようなものであり、どちら側からも批判を浴びる内容です。強行離脱派にはEUの植民地になるように見えるでしょう。残留派の人たちは、再度の国民投票から残留という可能性になんとか賭けてみたいでしょう。

 メディアはメイ首相の離脱案があまりに(今は)不人気なので、「合意なき離脱」の可能性が高まっていると喧伝します。報道だけを見ていると、もう「合意なき離脱」しかなく、英国は大変なことになり、世界はリーマン・ショック以上の混乱に巻き込まれそうです。

 しかし、ポンド相場を見ていると着実に買い戻されています。メディアが間違っているのか、それともマーケットが間違っているのか。

 メディア報道とは裏腹に、水面下では「合意なき離脱」回避に向けた超党派的な議員の動きがあると聞こえてきます。一部の離脱強硬派を除いて、誰も「合意なき離脱」を望んではいません。離脱強硬派は現在70名ほど。英下院の過半数320には遠く及びません。時間切れとなって、ハプニング的に「合意なき離脱」が選択される可能性はわずかにあるのかもしれませんが、可能性としては極めて低いと言えます。

 英下院の構成を考えると、離脱強硬派以外の保守党議員は245名、労働党は257名いますが、この合わせて500名ほどは「合意なき離脱」を望んではいません。ただ、全員が合意できる統一案がないことが問題なのですが、期限が近づくにつれ、おそらく大差で葬り去ったメイ首相の離脱案に収斂して行くのではないかと思っています。

 問題は「バックストップ」です。北アイルランドは1998年に締結されたベルファスト条約により、アイルランドとの国境(ハードボーダー)を作らないことになっています。かつて北アイルランド紛争により、沢山の血が流れました。北アイルランドとアイルランドの間に国境を作ることは、過去の紛争の時代に戻ることになりますが、それは避けなければなりません。

 その一方、EUから離脱するのであれば、モノの輸出入に対して関税をかけなければならないので、どこかでハードボーダーを設けなければなりません。北アイルランドとアイルランドの間に置けないのであれば、アイリッシュ海に線引して、グレートブリテン島の3国と北アイルランドとの間に置く案もありますが、それでは北アイルランドが差別的扱いを受けることになり、受け入れられないとDUP(北アイルランド民主統一党)は主張します。

 この大問題をすぐに解決できないので、良いアイデアが出てくるまで、一時的にイギリス全体がEUの関税同盟内に残ろうというのが「バックストップ」です。しかし、明確な期限がないことで、強行離脱派は反対しています。

 しかし、DUP(北アイルランド民主統一党)は非公式ながらもメイ首相の離脱案に賛成すると報じられました。大きな前進です。離脱強硬派は態度を決めないといけません。おそらく、期限を設定することで保守党内の同意が得られることになるのではないでしょうか。

 そうなると、メイ首相案に沿った、極めてソフトな離脱が進むことになります。しばらく(どのぐらいの期間になるか、今は不明ですが、長くなる可能性があります)英国はEUの関税同盟に残ることになるので、ほぼ現状と同じ状態が続くことになるでしょう。

 そうなると、2016年の国民投票時に大きく下落したポンドは買い戻されることになるのが必然です。まだ、具体的に何かが決まったわけではないですが、「合意なき離脱」の可能性がほぼゼロに近いのであれば、メイ首相の離脱案にしろ、再度の国民投票からの残留にしろ、非常に割安に放置されたポンドは再評価されることになります。はっきりとしたターゲットはわかりませんが、5~10%程度ポンドは反発余地があるのではないでしょうか。


【PROFILE】志摩力男(しま・りきお):慶応大学経済学部卒。ゴールドマン・サックス、ドイツ証券等、大手金融機関にてプロップトレーダー、その後香港にてマクロヘッジファンドマネジャー。独立後も、世界各地の有力トレーダーと交流し、現在も現役トレーダーとして活躍。市場参加者の動向やヘッジファンドの動き、外資系トレーダー等の動きは、メルマガ「志摩力男の実戦リアルトレード」で詳しく配信中。公式サイト(http://shimarikio-official.com/




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