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下がらなくなってきたドル円 金融抑圧がついに効いてきたのか?

公開日:2019年3月15日 7:00
最終更新日:2020年2月26日

ドル円の下がりにくい状況の原因は?

 2019年のマーケットを予測する際、考えたのは以下の点です。

◆米経済は絶好調だった2018年よりも減速する
◆減速するだけでなく、どこかでFRBの引き締め政策は頓挫する
◆欧州経済は悪い。ECBは引き締めに転じたいが、実現しない
◆中国等、新興国経済も減速する
◆日本経済に大きな変化はない
◆しかし、実質実行レートで見て円は歴史的な円安水準
◆オーストラリアなどチャイナマネーで不動産バブルのあった地域は不動産価格の低下に見舞われ、総じて世界はリスクオフ的になる

 まず、2019年の米金利は、2018年より低下します。日本の金融環境は変わらないので、日米金利差は縮小することになります。これは、ドル円にはネガティブです。

 オーストラリア等の金利も下がります。不動産価格の下落が徐々に問題になります。豪ドルは下落圧力を受け、リスクオフ的な環境もあり、豪ドル円も下落します。

 欧州は中国減速の影響を受けるので、ユーロ円は下落します。ユーロドルについては、欧州の方が悪いので、どちらかといえば下方向だが、決定的でもない。こういった感じです。

 総合的に、円には上昇圧力がかかるはずと思っていました。そして実際、世界経済は、思惑通りの方向に動いてはいます。しかし、その推論から来る円上昇にはつながっていません。年初、1月3日に「フラッシュ・クラッシュ」が起こり、一気に円高になりましたが、その後はジリジリ回復し、安値から8円近く上昇しています。つまり、円高は1日で終わり、その後はずっと円安局面です。

 何が円上昇を妨げているのでしょうか。実質実行レートで見て歴史的な円安水準でも強くならないということは、何か大きな変化が起こっているのでしょうか。

 市場から聞こえてくるのは、本邦機関投資家の行動変化です。日本の金融政策はおそらく変わらないとはいえ、2016年に導入された「マイナス金利」と「長短金利操作付き、量的質的緩和(いわゆるYCC=イールドカーブ・コントロール)」は本邦金融機関の経営を圧迫してきました。

 日銀もその点については、常に配慮しています。マイナス金利の金融機関に及ぼす影響は「累積的」という表現が使われています。また、このところは「リバーサルレート」という概念、すなわち、さらなる金融緩和が実体経済にむしろマイナスの影響を及ぼす水準があるという理論を紹介したのは黒田総裁ご自身です。

 しかし、この極端な金融緩和状況は、日本政府に非常に有利です。2%の物価目標が達成されないと、日銀は常に批判を浴びていますが、だからと言って消費者物価指数がマイナスになることは、ここ2年ぐらいありません。名目成長率が長期金利を上回っていれば、自然と財政再建ができますが、日本はそういう状況にあります。

 日本政府が金融抑圧から得ている利益は、本来であれば金融機関が享受すべきものです。金融機関の経営は苦しいが、政府の財政運営には多大な恩恵があります。そうなると、現在の日本の金融政策は、表向きは様々な事を発言しますが、実は一種の完成形であり、インフレで財政を再建する方法をさり気なく実現しているということです。この環境を政府・日銀が崩したいとは思わないでしょう。

 ところが、その結果、本来預金者や金融機関が得ていた利益が国に入っているということです。本邦金融機関の経営は厳しさを増しています。そうなると、どこかの時点で、積極的にリスクを取りに行かなければならず、それが今起こっていると解釈もできます。

 国内は金利ゼロとなれば、外に投資を向けるしかありません。そうしたフローがじわりと効いている感じがします。通常の為替分析からはわかりませんが、低金利に耐えかねて、本邦金融投資家の資金が海外に流れ始めていると言えるかもしれません。


【PROFILE】志摩力男(しま・りきお):慶応大学経済学部卒。ゴールドマン・サックス、ドイツ証券等、大手金融機関にてプロップトレーダー、その後香港にてマクロヘッジファンドマネジャー。独立後も、世界各地の有力トレーダーと交流し、現在も現役トレーダーとして活躍。市場参加者の動向やヘッジファンドの動き、外資系トレーダー等の動きは、メルマガ「志摩力男の実戦リアルトレード」で詳しく配信中。公式サイト(http://shimarikio-official.com/




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