世界で金利が消える? 日本の次はヨーロッパか
公開日:2019年4月11日 9:00
最終更新日:2020年2月26日

2019年の為替市場は、年初こそ「フラッシュ・クラッシュ」的な動きで急激な円高となりましたが、その後は多くの市場関係者の期待を裏切る、極めて大人しい展開となっています。
現在のドル円1か月物ボラティリティは5%を割り込みつつあり、それより短い期間のボラティリティは4%台です。数年前には考えられなかった低変動率です。
なぜここまで動かないのか。様々な要因があるとは思いますが、その根本には日本の金利マーケットがゼロで固定化されており、目先的にも、将来的にも動きそうにないということがあると思います。
「長短金利操作付き、量的質的緩和」、いわゆるYCC(イールドカーブ・コントロール)です。
かつて、中央銀行は短期金利をコントロールできても、長期金利をコントロールすることはできないと言われていました。しかし、日銀は2016年以来長期金利をゼロ近辺にガッチリと抑えています。最近では、日本国債を目標の80兆円買わなくても、ゼロ近辺に抑えることに成功しています。
日本は、いくら低成長とはいえ、年間1%程度の成長はありますし、消費者物価指数も1%弱のところで推移しています。つまり、名目成長率1%台半ばぐらいはあります。本来であれば日本国債の金利も1%を超えるようなところにあったとしても不思議ではないはずです。
名目成長率>国債金利であれば、日本の債務は発散せず、徐々に小さくなっていくことになります。
なんと言っても、金利ゼロで国債を発行できるということはすごい。日本の債務はGDPの200%を優に超える規模ですが、金利負担がほとんどゼロで債務を維持することができます。インフレ率2%を目指し、やむにやまれず現在の政策を取っている様に見えますが、実はゼロコストで債務を維持できる今の体制に持っていくことが、隠れた目標だったのではないかと勘ぐりたくなります。
一時的とされた政策ですが、これは長く続きそうです。日本の金融緩和政策は、政府の債務維持という目的から見ると、大成功モデルです。
そうなると、誰も口にはしないですが、日本同様の政策を取りたいと思う政策当局者は多いでしょう。絶対いるはずです。
おそらく、次はECBです。欧州にはイタリアの問題があるからです。現在のままでは、イタリア国債の金利が下がりません。ドイツがゼロ金利、フランスは0.3%程度の国債金利ですが、イタリアだけ2.5%前後の金利となっており、このままだとイタリアの財政は発散し、維持できなくなります。ECBの腕力でイタリアの長期金利を抑え込んでも良いのではないかと思います。
日本で金利が消え、そして欧州で消えていくことになります。その他の先進国も、景気が過熱しなければ、次第に金利は消えていくトレンドにあるのかもしれません。
金利がなくなると、為替レートも動かなくなるでしょう。少なくとも、難しくなります。金利の上下動がなくなるので、株価の上下動こそが、為替マーケットに影響を及ぼすことになりそうです。米国は金利もあり、株価も強い。そのことを考えると、米ドルが強い状況は簡単には変わらなさそうです。
【PROFILE】志摩力男(しま・りきお):慶応大学経済学部卒。ゴールドマン・サックス、ドイツ証券等、大手金融機関にてプロップトレーダー、その後香港にてマクロヘッジファンドマネジャー。独立後も、世界各地の有力トレーダーと交流し、現在も現役トレーダーとして活躍。公式サイト(http://shimarikio-official.com/)
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