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南アフリカランド円スワップ比較! 運用検証データと失敗回避の対応策

 南アフリカランドは、日本でFXの個人投資家が増え始めた頃から注目を集めていた。高スワップポイント(金利差損益)で、購入価格が安めであることが特徴。

 南アフリカランドのスワップポイントを狙ったFXにはどのようなメリット・デメリットがあるのかを見ながら、スワップポイントが高いFX会社、運用の検証データ、失敗しないための対応策を紹介する。

    【目次】

  1. 1.南アフリカランド円のスワップポイントで10社比較
  2. 2.南アフリカランド取引のメリット・デメリット
    1. 南アフリカランド円を取引する上でのメリット
    2. 南アフリカランド円を取引する上でのデメリット
  3. 3.自動売買で南アフリカランド円からW利益を狙う方法
    1. 南アフリカランド円を自動売買するとは?
    2. 南アフリカランド円で約2年自動売買をした場合の検証
  4. 4.南アフリカランド円で「自動売買+買い持ち」の検証
    1. 南アフリカランド円を約2年買い持ちした場合の損益
    2. 「自動売買+買い持ち」の損益
  5. 5.南アフリカランド円の運用で失敗を避けるための対応策
    1. 価格を分散して少しずつ購入
    2. 下落トレンド中は特に資金に余裕を持たせる
  6. 6.南アフリカランド円の取引は危険なのか?

南アフリカランド円のスワップポイントで10社比較

 南アフリカランド円を10000通貨保有した際のスワップポイントをFX会社別に比較(GMOクリック証券のみ10万通貨)。買いスワップポイントと売りのスワップポイント両方を掲載する。

※(図表はスクロール可能)

会社名

南アフリカランド円買いスワップポイント(1日あたり) 南アフリカランド円売りスワップポイント(1日あたり)

アイネット証券

(ループイフダン)

10円 -20円

トレイダーズ証券

(LIGHT FX)

10円 -10円

ヒロセ通商

6円 -16円

FXプライム byGMO

7円 -7円

GMOクリック証券

(くりっく365)

73円 -73円

SBI FXトレード

7円 -9円

外貨ex byGMO

5円 -20円

GMOクリック証券

(FXネオ)

70円 -100円

マネーパートナーズ

(パートナーズFX)

2円 -19円

DMM.com証券

(DMM FX)

6円 -9円

※2020年12月2日、各会社のHPより調査

南アフリカランド取引のメリット・デメリット

南アフリカランド円を取引する上でのメリット

(1)価格はリーマン・ショック以降、1南アフリカランド=6~12円で推移

 南アフリカランド円は、リーマン・ショック以降、約6円幅で推移している。ドル円なら1年間で6円以上はほぼ必ず変動するが、南アフリカランドはドル円よりも小さな変動幅。価格の下落幅もドル円より予想しやすいとも考えられる。

(2)購入価格の安さ

 南アフリカランド円は2015年以降、1南アフリカランド=10円以下で推移しており、ドル円の約10分の1と、購入価格は相当安い。

南アフリカランド円を取引する上でのデメリット

(1)政策金利変更の懸念

 南アフリカランドの政策金利は2020年2月時点で6.25%だが、今後利下げする可能性もある。政策金利変更はスワップポイント額にも影響するので、政策金利は注視しなければならない。

(2)取引量が多くなる可能性も

 南アフリカランド円は安く購入できるため、10万通貨単位でも1南アフリカランド=7円なら、28000円から取引できる。ドル円などよりも少額で取引しやすいが、10万通貨で取引した場合、1円の下落で約10万円の損を抱える。10万通貨単位で購入すれば、もらえるスワップポイントも多くなるが、資金管理の意識が緩まないよう細心の注意を払う必要がある。

自動売買で南アフリカランド円からW利益を狙う方法

 南アフリカランド円の買いポジション保有で、スワップポイントをもらいながら、「自動売買」で細かく売買利益を狙うことも可能。こうした「Wで利益を狙う」方法について考察する。

南アフリカランド円を自動売買するとは?

 自動売買ツールを活用すれば「南アフリカランド円を買い、5銭上がったら決済」という細かい取引も自動で行える。もちろんポジション保有中はスワップポイントも獲得できる。

 自動売買は同じ価格で何度も「新規買い⇒決済」をオートで行えることも特徴で、1本の注文を仕掛けるだけなら手動でもできるだろうが、これを毎日数年に渡り実践し続けることは、人間には不可能だろう。

 南アフリカランド円で細かく利益を狙える自動売買ツールは、「トライオートFX」や「トラリピ」、「ループイフダン」などがある。最新のFX自動売買ツールはこちらを参照。

南アフリカランド円で約2年自動売買をした場合の検証

【南アフリカランド円の自動売買検証】

  • 実現損益:38万2392円
  • 評価損益:-48万770円
  • 総合損益:-9万8378円

※トライオートFXのシミュレーション機能を使い、期間は2018年1月~2020年3月4日で、1つの注文は10000通貨で検証

※注文は1南アフリカランド=9.2円から5銭おきに6.75円まで買いを配置。利益確定幅は5銭で決済後は再度同じ価格で新規買い注文を発注する(想定される手数料やスワップポイントも込み)

 南アフリカランド円で約2年間の自動売買の検証をした結果はマイナスであった。実現損益(決済損益)は38万円を超えたので、760回以上もコツコツ500円ほどの利食いをしたことになる(10000通貨で5銭の決済利益は約500円)。

 しかし、検証期間中の南アフリカランド円は右肩下がりに価格が下落してしまったので、評価損益は含み損が貯まり、総合的な収益はマイナスに落ち込んだ。今後、価格が上昇すれば、収益は持ち直す可能性がある。


南アフリカランド円の価格推移

2018年以降、南アフリカランド円は下落トレンド(画像はクリックすると拡大)


南アフリカランド円で「自動売買+買い持ち」の検証

 自動売買は細かく決済を繰り返すので、ポジションの保有数が少ないときは、スワップポイントが減ることもある。そこで、スワップポイントを貯めるだけのポジションを手動で持つ場合も組み合わせると、利益はどうなるのだろうか?

南アフリカランド円を約2年買い持ちした場合の損益

【南アフリカランド円を10万通貨で約2年買い持ち】

  • 実現損益:7万9300円
  • 評価損益:-20万円
  • 総合損益:-12万700円

※2018年1月2日の始値に近い1南アフリカランド円=9円で買い、2020年3月4日までポジションを保有し、最終レートは1南アフリカランド円=7円で試算。スワップポイントは10万通貨あたり1日100円を想定(手数料等は考慮せず)

 先ほどの自動売買の検証期間中と同じく、2018年1月から南アフリカランド円の買いポジションを保有して、2020年3月4日の損益はどうなるのか検証したところ、結果はマイナスであった。

 マイナスの大きな原因は評価損益で、1南アフリカランド円=9円という高い価格で買ってしまうと、含み損は収益に大きく影響する

「自動売買+買い持ち」の損益

【約2年「自動売買+買い持ち」した場合の損益】

  • 評価損益:-68万円770
  • 総合損益:-22万9078円

 先ほどの約2年間における「自動売買」と「買い持ち」の損益を合算すると、約22万円のマイナスとなった。マイナスの大きな要因は含み損なので、南アフリカランド円の価格が今後上昇するようであれば、含み損は減り、総合損益はプラス圏内に復活できるかもしれない。

南アフリカランド円の運用で失敗を避けるための対応策

 南アフリカランド円の運用において、最も損益に影響するのは「含み損」だろう。「自動売買」、「買い持ちしてスワップポイント狙い」のどちらの運用方法でも共通していえること。

 含み損は南アフリカランド円の価格が下落しているときに膨らむので、下落トレンド中は特に注意を払いたい。

【南アフリカランド円運用の含み損への対策】

  • 価格を分散して、少しずつ購入
  • 下落トレンド中なら、資金には余裕を持たせる

価格を分散して少しずつ購入

 購入価格を分散していれば、南アフリカランド円の価格が下落した際の含み損は軽減できる。1度に通貨を購入した場合と価格を分散して購入した場合の損益を比較した。価格を分散して購入すれば、含み損を抑えられ、今回の検証では、総合損益も向上していた。

【10万通貨を1回で購入し、約2年買い持ち(※1)】
スワップポイント損益:7万9300円
評価損益:-20万円
総合損益:-12万700円
【10万通貨を5回に分けて購入し、約2年買い持ち(※2)】
スワップポイント損益:5万6020円
評価損益:-10万円
総合損益:-4万3980円

※1 2018年1月2日の始値に近い1南アフリカランド円=9円で買い、2020年3月4日までポジションを保有し、最終レートは1南アフリカランド円=7円で試算。スワップポイントは10万通貨あたり1日100円を想定(手数料等は考慮せず)

※2 2018年1月2日に1南アフリカランド円=9円で20000通貨を購入して以降、50銭おきに20000通貨で購入。その他条件は※1と同じ

下落トレンド中は特に資金に余裕を持たせる

 中長期のFXは多少の価格変動も耐えられるように、余裕を持たせた資金で取引することが一般的。南アフリカランド円のような近年は価格が下落傾向にある通貨ペアを取引する場合は、資金をさらに多く準備する意識を持った方が賢明だろう。運用途中で強制ロスカットにならないように注意したい。

南アフリカランド円は2006年頃から緩やかな下落トレンド?

 南アフリカランド円の価格推移を月足チャートで確認すると、2006年から2020年3月までは緩やかな下落トレンドを描いているようにも見える。上昇する局面はあったものの、価格はズルズルと下落してきた。

2002年以降の南アフリカランド円価格推移

2002年~2020年3月までの南アフリカランド円価格推移(画像はクリックすると拡大)

必要な資金は運用前に「取引量」と「下落目途」をもとに計算

 どれくらいの資金で運用するかの試算は「取引量」と「下落目途」をもとに考えられる。

 取引量は「合計、何通貨で取引するか」ということを必要最低資金(必要証拠金)と共に決める。また、「1南アフリカランド=○円まで下落しても耐えられる目途」も取引前に想定しておく。

 例えば1南アフリカランド=7円のとき、10万通貨の南アフリカランド円を購入する場合は、レバレッジ5倍なら14万円は購入にあたり必要となる。そして1南アフリカランド=3円まで下落しても耐えるためには、必要資金に40万円を加えれば大丈夫かな、といった想定を取引前にできれば、たとえ南アフリカランド円の価格が急落してもパニックになるリスクを軽減できる。

南アフリカランド円の取引は危険なのか?

 南アフリカランド円の取引に関していくつかの検証を紹介してきたが、その期間中の総合損益はすべてマイナス圏となった。収益が芳しくなかった大きな原因は、南アフリカランド円が下落トレンド中にあったことだろう。

 今後、中長期に南アフリカランド円の価格が上昇していくようであれば、紹介してきた検証データの損益も向上する可能性はある。

 高金利通貨ペアは、スワップポイントや価格の安さが魅力的に見えるものの、こうした価格下落による危険性を必ず確認し、リスクとリターンのバランスを把握した上で、取引を検討する必要がある