発注系・リピート系自動売買とは? 運用方法や失敗例を紹介
公開日:2018年3月11日 20:00
最終更新日:2021年3月2日
FX自動売買ツールのひとつである「自動発注系・リピート系」。本記事では発注系自動売買ツールの基礎情報から失敗例まで紹介する。
- 1.発注系・リピート系自動売買の基本情報
- 2.コツコツ取引する発注系自動売買の基本「ボックス戦略」
- 3.発注系自動売買の応用「ボックスコア戦略」
- 4.発注系自動売買の基本的な設定項目
- 5.発注系自動売買で勝てない人の特徴
【目次】
発注系自動売買の基本情報

発注系自動売買は「ここで買い⇒ここで決済」という注文を複数仕掛け、そのルールどおりにFX会社のシステムに売買させる自動売買。
注文を仕掛けることは手動でも可能だが、発注系自動売買を使えば、一度設定した注文は何度も同じ場所で取引が行うことも可能。例えば1ドル=100円のとき「買い」、1ドル=102円になったら「決済」という設定で稼働させたなら、上図のように価格が通れば通るだけ何度も取引が行われる。
こうした自動売買は自動発注系、リピート系などと呼ばれる。設定どおりに売買注文が発注され、自動で取引は行われるが、どのように注文を仕掛けるかという「設定」を自分で考える必要がある。
もう1つの自動売買「シストレ」は、注文を出すルールが元々定められている売買プログラムを使い、運用するので、そういった点で自動発注系とは異なる。
発注系自動売買のメリット
-
(1)取引の心理的負担を抑えられる
-
シストレと同様に取引における心理的負担を抑えられる。設定どおりに注文が発注され、規則正しい取引を実現できるため、手動で取引する裁量FXよりはメンタルへの負担を軽減できる。
-
(2)年単位でのほったらかし運用も可能
-
発注系の自動売買は、運用方法によっては年単位でほったらかしにする運用が可能(やり方はのちに紹介する「ボックス戦略」を参照)。シストレは相場状況に応じて、売買プログラムを入れ替える手間がある。
-
(3)シストレより自由度が高い
-
発注系自動売買はシストレよりは応用がききやすい。短期的な取引戦略から中長期の取引戦略まで、投資家の好みに応じて、設定の調整が可能。
発注系自動売買は2タイプの戦略がある
発注系自動売買は大きく2タイプの戦略に分けられる。
- <基本>ボックス戦略
- <応用>ボックスコア戦略
コツコツ取引する発注系自動売買の基本「ボックス戦略」
発注系自動売買は幅広い価格帯に注文を仕掛けることで、中長期の運用が可能となる。こうした取引は相場に「注文のボックス」を置くようなイメージが近いだろう。
為替相場を広くボックスのように捉え、「長期的(横幅)」に「価格幅(縦幅)を広く」使った戦略だ。
例えばドル円は2014~2019年の5年間は1ドル=約100~125円の間で推移しているため、その間に「買い注文」を等間隔に仕掛ければ、5年間はなにもせずに定期的に取引が実行されたということ。
【ボックス戦略の特徴】
- 中長期のFXトレードを実現できる
- 短期的な相場予想を必要としない
- 一撃で大きく稼げないが、コツコツ利益を狙う
- サラリーマンなどFXに時間を割きにくい人でも実践できる
「ボックス戦略」のメリット
ボックス戦略のメリットをまとめると、下記3点。
FXの知識・経験を深く必要としない | 幅広く一方向に「買い」「売り」を仕掛ける戦略なので、直近の相場がどう動くかは全く考える必要がない。 |
FXのために時間を割かなくていい | ボックス戦略は最初の設定が完了し、運用がスタートすれば、基本的にすることはない。為替レートを確認したり、為替相場の分析をする必要なし。ボックスの縦の幅(為替変動幅)を5~10年分のデータに基づきをもとに設定すれば、数年間なにもしない取引を実現することも可能。 |
為替相場が「動くだけ」で、利益を狙える | 為替レートが何円になろうとも、仕掛けた注文の範囲内であれば、為替相場が動くだけ、仕掛けた注文が自動で取引される、という戦略を実行することも可能。 |
「ボックス戦略」の注意点
ボックス戦略を実践する上で、下記2点には注意してほしい。
利益が溜まるには時間がかかる | ボックス戦略は1本あたりの注文の取引量を抑え、注文を多く仕掛ける戦略。1回あたりの利益は少ないが、長い目でコツコツ利益を貯めることを目指す。 |
資金を多めに用意する必要がある | ボックスの縦幅(為替変動幅)を長くとることで、長期の運用を実現できるが、幅広く多量の注文を仕掛けるためには、多くの資金が必要となる。また、含み損にも耐えられるようにしなければいけない。 |
発注系自動売買の応用「ボックスコア戦略」
ボックス戦略を応用させた「ボックスコア戦略」は、「縦幅(為替変動幅)」と「横幅(時間軸)」を限定させて、効率的に稼げるコアを作るイメージ。
「ボックスコア戦略」のメリット
短期の収益性がUP | 横幅(時間軸)や縦幅(為替変動幅)を限定させれば、仕掛ける注文数を増やしたり、1本あたりの注文にかけられる通貨量を増やすこともできる。ボックス戦略では1回1000円程度の利益だったのが、ボックスコア戦略なら1回あたり10000円にすることも可能。 |
トレンド相場での利益向上 | ボックス戦略では上昇・下落のトレンドは気にせず「50銭おき」など間隔をあけて注文を仕掛けるが、ボックスコア戦略では間隔をあまりあけず「20銭おき」など注文幅を狭めれば、ボックス戦略より短期的に利益を狙える。注文幅を狭くした場合、上昇トレンドの相場で発生する小さな下落後の上昇でも利益が獲れるようになるので、狙える収益チャンスも増えるのだ。 |
「ボックスコア戦略」の注意点
ボックスコア戦略は、ボックス戦略よりもFXの能力が求められるため、下記注意点はしっかり確認してほしい。
定期的に相場と設定がマッチしているか確認 | 今の相場に合っている設定なのか、設定を1週間ごとなど、定期的に確認する必要がある。 |
設定の調整間隔が短くなる可能性も | 自分で取引しないので、裁量FXよりメンタルへの負荷は軽減できるだろう。しかし例えば上昇トレンドに乗れて、買い注文を置く戦略が通用していたが、上昇トレンドは終了し、下落トレンドに転じたというケースで、「買い注文を放置するのか」「損切りしてやり直すか」「資金を追加するか」など、判断を求められるタイミングは中長期向けのボックス戦略より早く訪れる可能性がある。 |
発注系自動売買の基本的な設定項目
発注系の自動売買はシストレと異なり、自分で取引ルールを設定する必要がある。代表的なサービスの自動売買設定項目を紹介するので、自分はどのサービスなら理解しやすいのか、参考にしてほしい。
トラリピの場合
マネースクエアが提供する「トラリピ」の場合、7つの設定をする。
【トラリピ設定項目】
- 通貨ペア
- 買いor売り
- 取引をするレンジ幅(上限)
- 取引をするレンジ幅(下限)
- 注文の本数(トラップ本数)
- 1本あたり何通貨で取引するか
- 1本で狙う利益(利食い幅)
トライオートFX
インヴァスト証券が提供する「トライオートFX」は、「自動売買セレクト」というツールのランキングから設定を選ぶか、自動売買セレクト内の「ビルダー」という機能から自身で作成するかを選べる。
「ビルダー」機能で作成した自動売買の設定は、約2年分の過去相場をもとに、シミュレーションを行うこともできる。

「ビルダー」マルチカスタムの場合
「自動売買セレクト」のビルダー機能を選んでから、最初にマルチカスタムかシングルカスタムを選択する。マルチカスタムは「ボックス戦略」のような自動売買。
【「ビルダー」マルチカスタム設定項目】
- 通貨ペア
- 買いor売り
- 取引するレンジの幅
- 注文の本数
- 1本あたり何通貨で取引するか
- 利食いの幅
- スタート価格
- (損切やフォロー値は任意)
「ビルダー」シングルカスタムの場合
シングルカスタムは自身で1本1本注文の設定を行うタイプ。
【「ビルダー」シングルカスタム設定項目】
- 通貨ペア
- 買いor売り
- 1本あたり何通貨で取引するか
- エントリー価格
- 利食いの幅
- 損切やフォロー値
ループイフダン
アイネット証券が提供するループイフダンは設定項目が5つ。
【ループイフダンの5つの設定項目】
- 通貨ペア
- 買いor売り、1本あたりの利食い幅を決める
- 損切りをするorしない
- 1本あたり何通貨で取引するか
- 最大で何個の注文を発注するか
<設定画面1>
<設定画面2>
iサイクル2取引
外為オンラインが提供するiサイクル2取引は2つのタイプがあり、タイプに応じて設定項目も少し異なる。
マトリクス方式
【マトリクス方式の設定項目】
- 通貨ペア
- 数値算出のための参考期間
- 買いor売りorトレンド
- トレンドを判定するテクニカルツール
- 日足などの期間
ボラティリティ方式
【ボラティリティ方式の設定項目】
- 通貨ペア
- 数値算出のための参考期間
- 想定変動幅
- 買いor売りorトレンド
- 対象資産
<マトリクス方式設定画面>
<ボラティリティ方式設定画面>
発注系自動売買で勝てない人の特徴
自動売買で勝てない人の特徴とは? 勝てない人に共通する要素を見ていく。
設定に対して用意した資金が少ない
自動売買の設定に対し、資金が少なく、ロスカットギリギリのところで運用するケースは勝てない原因に繋がりやすいだろう。発注系自動売買は複数の注文を仕掛けることで、利益を狙う手法なので、注文が多くなればなるほど、用意しなくてはいけない資金も増える。
設定と資金のバランスは運用前にしっかりチェックしよう。
中長期の運用モデルなのに、取引額が大きすぎる
中長期で利益を狙う設定の場合、1本あたりの取引額は1000通貨単位で始めるのがベーシック。しかし、1本あたりの取引額を10000通貨にすれば得られる利益も大きくなるから、と欲を出すと危険。取引額を増やすということは損失額も大きくなるため、用意した資金に対して過剰なリスクをとる可能性がある。
中長期でコツコツ利益を狙う自動売買の場合、最初は無理をせず1000通貨単位で始め、自動売買の運用に慣れてきた段階で、自己資金に対するリスクのバランスを考えながら、取引額を増やすかどうかの検討をすることが理想的だろう。
短期と中長期の設定の違いを理解していない
自動売買は設定次第で、短期向けと中長期向けのどちらも運用が可能だが、本記事でも紹介した「ボックス戦略」と「ボックスコア戦略」ではリスクが異なる。
リスクが異なれば、設定方法・資金・相場をチェックする頻度も変わる。自己資金に対する許容リスクを理解した上で、自動売買の設定を決めることが求められる。また、通貨ペア選びも関連するので、「FX自動売買おすすめ通貨ペア 選び方の基準と投資家の秘訣も紹介」も参考に。
過去実績のランキングを安易に利用する
過去実績のランキングから設定を選ぶ、ということは各FX会社のサービスで可能だが、その設定内容を理解せずに運用をスタートすることは避けたい(参考「FX自動売買の設定を決める方法と過去実績の良い設定の使い方」)。
設定内容を把握せず稼働させると、「利益がでているとき・損失を被っているとき」のいずれも、いつ止めるべきかの適切な判断ができない。
過去実績のランキングは「自分がこんな攻め方をしたい」⇒「過去実績のランキングのなかに、自分の思い描く理想的な設定があり、しかも過去の実績は悪くない」⇒「検討してみるか」などのステップを踏むことがいいだろう。「過去に利益を生んでいた」=「今後も利益を生むかもしれない」という安易な考えで運用をスタートしたところで、適切な対応ができない可能性がある。
利用しているFX会社の自動売買ツールが自分に合わない
発注系自動売買は取引の設定が肝となり、取引ルールや仕組みを理解しづらいツールでは、イメージする自動売買設定で運用をスタートできない可能性がある。
自分が操作・理解しやすい取引ツールに巡りあうために、複数社の自動売買ツールを触ることも検討できる。口座開設は無料で、口座維持費なども発生しないため、リアルマネーを投じて運用する前に自分に合うツール探しは行いたい。
FX自動売買ツールの関連記事
FX自動売買ツールの関連記事
自動売買ツールの比較
各サービス・会社詳細
■自動発注・リピート系のFX会社
■シストレ系FX会社
自動売買ツールの基本情報
自動売買の運用に関する参考記事