FX初心者向け通貨ペアとは? 基礎知識とおすすめの選び方を紹介
公開日:2017年5月30日 7:00
最終更新日:2020年7月6日
FXの取引対象である「通貨ペア」について、表記方法の基礎知識から通貨ペアの選び方まで本ページで解説する。
FXの取引対象「通貨ペア」の基礎知識
FXは2つの通貨を“交換する”取引であり、1つの通貨だけを買ったり、売ったりすることはできないため、「ペア」で呼ばれる。
通貨ペアの表記
日本語表記 | 英語表記 | 日本語表記 | 英語表記 |
ドル/円 | USD/JPY | ユーロ/円 | EUR/JPY |
ユーロ/ドル | EUR/USD | ポンド/ドル | GBP/USD |
ポンド/円 | GBP/JPY | 豪ドル/円 | AUD/JPY |
NZドル/円 | NZD/JPY | カナダ/円 | CAD/JPY |
スイスフラン/円 | CHF/JPY | ユーロ/ポンド | EUR/GBP |
南アフリカランド/円 | ZAR/JPY | トルコリラ/円 | TRY/JPY |
FXの通貨ペアはドルや円、ユーロなどの組み合わせで表示される。日本人に馴染み深い通貨ペアは「ドル/円(USD/JPY)」だろう。通貨名を区切る「/」などは省かれる場合もある。
通貨ペアは英語表記もあり、FX会社の為替レート一覧では英語表記のことが多い。
通貨ペアの表記の意味
FXでは「ドル/円」を“買う”・“売る”という表現をする。FXは2つの通貨を交換するので、「ドル/円」の“買い”は、「ドル買い/円売り」という取引がされる。逆のドル/円の“売り”の場合は「ドル売り/円買い」である。「ユーロ/ドルの買い」ならば、「ユーロ買い/ドル売り」である。
通貨ペアの取引数量
FXは「○○通貨買う(または売る)」という言い方をする。1ドル=100円の時、ドル/円で「1通貨を買う」ということは、「1ドルを買い/100円を売る」ということになる。
FXの場合、個人投資家の一般的な取引数量は「1000通貨」「10000通貨」。1000通貨でドル/円を買うということは、「1000ドルを買い/10万円を売っている」という意味。
「買い」もしくは「売り」で保有中の持ち高を「ポジション」と言う。買いポジションが1000通貨あるといえば、「保有中の買い」が1000通貨あるということ。建玉(たてぎょく)とも言われる。
通貨ペアの値動き幅の単位
ドル/円は「1銭動いた」「1円動いた」など、日本人に馴染み深い言い方がされる。
一方で、「ユーロ/ドル」や「ポンド/ドル」といった海外通貨によるペアでは、「1銭動いた」という言い方をせず、1pip動いた、という表現をする(※)。
1pipはレートの最小変動単位を表し、ドル/円でいう1円の値動きは100pipsにあたり、海外通貨同士の場合は例えばユーロ/ドルは1pip=0.0001ドルとして考える。
【通貨ペアの値動き例】
- 1銭=1pip
- 1pip=0.0001ドル
- 1円分の値動き=100pips
チャート上の「上昇」「下落」の意味
FXではチャート(過去の値動きを示したグラフ)を見ることが多くなる。
チャート上で通貨ペアが「上昇する意味」「下落する意味」はドル/円で考えるとわかりやすい。ドル/円が上昇する、ということはチャートを見ると、円安になっていることがわかる。
円安になる、ということは「ドル買い/円売り」(ドル/円の買い)が多く行われたとき。同じようにユーロ/ドルでも考えてみると、ユーロ/ドルが上昇するときは「ユーロ高/ドル安」になるときだ。「ドル買いが多発している」というニュースが出たら、「ドル/円は上昇し、ユーロ/ドルは下落しているか?」など、各通貨の動きがイメージできようになるといい。
FX初心者も多く取引する「クロス円」
「クロス円」とは日本円が絡んだ通貨ペアのこと。ここではクロス円の特徴を紹介する。
クロス円とドルストレートの例
日本円が絡んだ通貨ペアのことを「クロス円」といい、米ドルが絡む通貨ペアを「ドルストレート」と言う。
【ドルストレートとクロス円の通貨ペアの例】
- ドルストレート
-
ユーロ/米ドル、豪ドル/米ドル、ポンド/米ドル、米ドル/カナダドル、米ドル/スイスフラン
- クロス円
-
ユーロ/円、豪ドル/円、ポンド/円、カナダドル/円、スイス/円など
クロス円の方が大きく変動する場合がある
クロス円とドルストレートの値幅の違い(チャートはヒロセ通商、クリックすると拡大)
クロス円はドルストレートよりも値動きが大きいときがある。値動きの幅が大きければ、収益チャンスは大きくなる可能性もある(もちろんリスクも同等に変動)。
上の画像内では、ユーロ/ドルとユーロ/円を比較している。同じ時間内に下落した幅がクロス円であるユーロ/円の方が大きかった。必ずクロス円の方がドルストレートより値幅が大きくなるわけではないが、こうしたケースは散見される。
FX初心者にはクロス円の値動き理由がわかりにくいときも
クロス円は「なぜ上昇したのか」「なぜ下落したのか」という理由が見えづらいときがある。クロス円は2つの通貨ペアの値動きに影響を受けることが原因のひとつ。
たとえばドル/円でいえば、相場が「ドル高ムード」になると、「ドル高/円安」となり、素直に反応しやすい。同じドル高の状況でも、ポンド/円に目を向けると、ポンド/円は「ポンド/ドル+ドル/円」という2つの通貨ペアを掛け合わせてレートを作るので、ドル高となっても、「ポンド安/ドル高(ポンド/ドルの下落)」「ドル高/円安(ドル/円の上昇)」となり、素直に上昇するのか・下落するのかわかりにくくなることがある。
通貨ペアの組み合わせに関して詳しく把握できないときは、クロス円の上昇・下落要因を理解することに苦労するだろう。
FX初心者向け通貨ペア選びの4つのポイント
FX初心者は取引する通貨ペアを選ぶ際のポイントを参考までに4つ紹介する。
【FX初心者向け通貨ペア選びの4つのポイント】
- 取引量の多い通貨ペア
- トレンドが明確に現れている通貨ペア
- 値動きの原因を把握しやすい通貨ペア
- トレードスタイルに合う通貨ペア
取引量の多い通貨ペア
取引量が多い通貨ペアは、世界中のトレーダーが取引するメジャーな通貨ペア。メジャー通貨とは、例えば「ドル/円」や「ユーロ/ドル」である。ユーロ/円やポンド/円といったクロス円は国内では多く取引されるが、海外ではそれほど取引量が多くないこともある。
トレンドが明確に現れている通貨ペア
上昇や下落といったトレンドが明確に現れている通貨ペアは取引がしやすい。チャートを見ながら、3か月や6か月といった中長期でトレンドが続いている通貨ペアを探してみるといい。
トレンドは半年や1年以上ほど続くこともあれば、1か月や1週間など、短期間で終わるケースもある。FX初心者の場合は、短期トレンドの取引は難しいため、なるべく長い期間トレンドが続いている通貨ペアの方が注文を出しやすく、ある程度大きい利幅を狙える可能性も高くなるだろう(参考:FXチャートの見方 初心者がトレンドを把握するため4つのコツ)。
値動きの原因を把握しやすい通貨ペア
なぜ上がっているのか、下がっているのかという原因を把握しやすい通貨ペアをFX初心者は選ぶといい。例えばメジャー通貨のドル/円と高金利通貨メキシコペソ/円を比べると、ドル/円の方が値動きに影響する情報を得やすいため、今の値動きの原因を考えやすい。
なんとなく知っている通貨だから、もしくはキャッシュバックなどのキャンペーン対象の通貨ペアだからといった理由で取引しても、上昇・下落の理由がわからなければ、勝てる可能性は低くなるだろう。
トレードスタイルに合う通貨ペア
自身のトレードスタイルに応じて取引しやすい通貨ペアが異なる場合もある。例えば、デイトレードを行うなら、ボラティリティの高い通貨ペアを選ぶ人もいるだろう。一方で自動売買を行う場合は、中長期でレンジ相場で推移する通貨ペアの方が取引しやすいケースもある。
トレードスタイルによって、取引しやすい通貨ペアは異なるため、自身の取引方法・戦略も合わせて考えたい(初心者向けトレードスタイルに関してはこちら)。
FX初心者おすすめの通貨ペアは?
FX初心者おすすめの通貨ペアはこれ!と一概には言いづらいが、これまで紹介してきたポイントを頼りに取引できそうな通貨ペアをまずは自分で探してみるといい。
トレンドが現れており、取引量も多く、自分のトレードスタイルでも無理なく取引できそうな通貨ペアを見つけられたなら、それはFX初心者でもおすすめできる通貨ペアといえるだろう。
こうしたポイントを参考にしても、取引できそうな通貨ペアが見つからないと嘆き、焦って取引することは避けるように。過去を振り返っても、強いトレンドが現れ、初心者でも勝てる確率が高くなる相場は何度も訪れてきた。
例えば、2012年後半からのアベノミクス相場では、ドル円はわかりやすく上昇していており、また2014年のユーロドルは下落トレンドが翌年の3月まで続いていたため、この期間中にトレンドに沿った売買をしていれば大きく儲けられた。2016年以降のドル円は1ドル=105~112円程度のレンジ相場であったため、レンジの下限付近になれば買い、レンジ上限付近になれば売りという取引も可能だった。
通貨ペア選びは勝敗に大きく影響する要素なので、適当な選択をしないように注意したい。
通貨ペアのリクイディティとボラティリティ
FX初心者にとっては少し難しいかもしれないが、FX取引において重要な要素となる「リクイディティ」と「ボラティリティ」についても紹介する。
「リクイディティ(流動性)」と「ボラティリティ(変動率)」の違い
リクイディティ(流動性)とは「その通貨ペアの交換のしやすさ」を指す。通貨ペアの流動性は、取引量とも関連するので、「取引量が多い通貨ペアを選ぶ」ことで流動性の低い通貨ペアを避けることも可能だ。
通貨ペアの値動きの変動幅を表す「ボラティリティ(変動率)」と流動性とは混同しないように注意したい。
流動性が低い場合のリスク
流動性が低い通貨ペアは、取引したいときに取引できないリスクを孕む。
FXの通貨ペアは、取引量の多く比較的値動きが安定している「メジャー通貨」も、世界的にも取引量が少ない「マイナー通貨」もすべて並列に表示されてしまうため、各通貨ペアの流動性を知った上で取引を検討したい。
【流動性が低いときの2つのリスク】
- 大暴騰・大暴落のとき、逃げられない
-
2015年のスイス・ショックのとき、大きく影響を受けた通貨ペアが「スイスフラン/円」「ユーロ/スイスフラン」だった。ドルストレートに比べると流動性が低い通貨である。
スイス・ショックでは「ユーロ/スイスフラン」は一時3800pips変動し、スイスフラン/円にいたっては一時50円近く動いた。この間、FX会社含め多くの人が取引できない状態になったため、「損切り」を入れていたとしても、全く意味をなさなかった、というケースが多発。
流動性が低い通貨を取引する場合、「損切り」を入れていても、逃げられなくなる場合があるのだ。逃げられなくなるほどの大惨事は誰も予想できないときに来るものなので、普段の取引から注意しておくほうが賢明だろう。
- 暴騰・暴落が起きやすい
-
流動性が低い、ということは暴騰・暴落にも繋がりやすくなる。流動性が安定しているドルストレートに比べ、価格が一瞬で“飛ぶ”(動く)ことも少なくない。
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