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「FX初心者は何から勉強すべき?」専業FXトレーダーに聞いた
FX初心者におけるFXの勉強は、どのような内容から始めればよいのだろうか。本サイト「マネーポストWEB」にも寄稿する専業トレーダー「天空の狐」さんが、おすすめの勉強法やトレードスキル上達のために学んだ方がいいことなどを紹介する。
【目次】
- 1.FX初心者おすすめの勉強法を専業FXトレーダーが紹介
- 2.FX初心者トレード上達の第一歩「取引の型」を勉強
- 3.FX初心者上達への第2段階「投資シナリオ」を勉強
- 3-1.取引する通貨ペアの決め方・売買判断を勉強
- 3-2.トレードの入口「エントリー価格の探し方」を勉強
- 3-3.トレードの出口「エグジット価格の探し方」を勉強
- 4.相場分析力がUPする「マーケット構図」も勉強
- 5.トレードの手間を削減できる「FX自動売買の活用法」を勉強
FX初心者おすすめの勉強法を専業FXトレーダーが紹介
【専業トレーダーが教える「FX初心者勉強のポイント」】
- 最低限の基礎知識を得る
- 自分に合う取引の型を作る
- 実践を繰り返すことで取引の型を習得する
FX初心者はどんなことを勉強すればいいのか。専業トレーダーである天空の狐さんはこう語る。
「FX初心者の方はまずは『取引対象の通貨ペアにはどんな種類があるのか、などの基礎知識』。そのあとは『自分に合う取引の型』を探し、『実践を繰り返し、取引の型を習得』する、というステップが良いと思います」
FXトレードに必要な基礎知識
FXの書籍やセミナー動画などで、FXトレードに必要な基礎知識を得ることは可能だが、仕事で忙しい人の中にはイチから知識を得るのは大変手間だと感じる人も少なくないだろう。
果たしてFX初心者が最低限覚えておきたい知識とはなんだろうか。
「FX初心者の方は『通貨ペアの種類』『通貨を交換するというFXトレードの仕組み』『チャートの簡単な操作方法』『東京時間、欧州時間、NY時間はいつから始まるのか』の4つくらいは簡単に調べておくといいですね。それ以外のトレード方法などは『トレードの型』を探すときに学ぶというスタイルで問題ないと思います」
自分に合う取引の型を作る
FX初心者はどんな取引方法で始めればいいのか。専業トレーダーの天空の狐さんが、安定して利益を残せるようになった背景には、自分に合う「取引の型」を作れたことことから始まったという。
「こういう相場のときはこのように取引した方がいい、という『取引の型』が確立できたことで、収益も安定していきました。FX初心者の方はそうした『勝てる取引パターンをストックする』ことから始めるのが良いと思います。テクニカルツールなどによるトレード方法だけに着目するのではなく、自分が取引しやすい相場状況やパターンを覚えることから始めてみてはいかがでしょう」
実践を繰り返すことで取引の型を習得する
天空の狐さんは、トレードの「実戦」回数をただ積み重ねるのではなく、自身の頭で考えた仮定に従いトレードを「実践」することが、勝てる取引の型を身に付けることに繋がるという。
「誰かが考えたトレード方法は、必ずしも自分に合うとは限りません。自分で取引する根拠を考え、実践し、その結果から得られた経験を次に活かそうとすることで、自分に合った取引の型が習得できるようになります」
FX初心者トレード上達の第一歩「取引の型」を作る方法
専業FXトレーダー・天空の狐さんがおすすめするFX初心者向けの勉強方法から、FX初心者のトレードスキル上達の第一歩は「取引の型」を作ることとわかった。ここでは「取引の型」の詳細や習得方法について聞く。
FX初心者でも実践しやすい「取引の型」の候補
「取引の型」を考える際は、まず大枠のトレードスタイルから選ぶといい。FX初心者は自分に合う「取引の型」の種類は何だろうか。
「FX初心者は1日程度でしか続かない短期のトレンドではなく、最初は2~3週間以上続くような中長期のトレンドをベースにした『取引の型』が実践しやすいでしょう。または1か月、2~3か月(四半期ベース)などの中長期トレンドなら、チャートに張り付いてトレードする必要もなく、仕事で忙しい人でもトレードしやすいと思います」
中長期のトレンドを狙った「取引の型」の例
FX初心者でも実践できそうな「取引の型」を天空の狐さんに聞いたところ、トレンドが中長期で綺麗に現れている通貨ペアは初心者でもトレードしやすいとのこと。
上の画像は2020年の豪ドル米ドルの日足チャートで、4月から9月にかけて綺麗に上昇していることがわかる。トレンドの勢いが生まれ、少し時間が経った5月頃に「買い」でトレードを始めても十分利益は獲れただろう。
「FX初心者は中長期でトレンドが明確に現れているときは、トレードしやすいでしょう。強いトレンドが生まれた相場なら、どうやって取引しよう…、と細かく悩む必要もなく、『トレンドの勢いがあるときは少しずつ買い増し、トレンドの勢いが弱まってきたときに決済してやめる』という方法でも取引できます」
為替相場には中長期のトレンド以外にも、「短期のトレンド」や「BOX相場(レンジ相場)」があるものの、これら相場を取引する際には中長期のトレンドを狙うよりも「考慮すべき点」が複雑になりがち。
短期のトレンドを狙うときに考慮する点
短期のトレンドを狙う場合、中長期のトレンドよりも「転換点を判断するタイミング」が早くなる。
例として上のチャート画像を見てみると、上昇トレンドが日本時間の20時から始まり、0時過ぎにはトレンドの勢いが弱まり、4時過ぎからはトレンドが反転し、緩やかに下落しだしている。
短期のトレンドを狙う場合、こうした判断を随時求められるため、FXトレードの経験が浅い初心者の中にはハードルが高いと感じる人もいるだろう。
BOX相場を狙うときに考慮する点
BOX相場はトレンドがはっきりせず、上下ランダムに動く相場のため、「いつ取引を始めるべきか」「いつ取引を終わりにすべきか」の判断が難しい。
直近の高値・安値を目途に取引する方法もあるが、それを簡単に突破することもよくあるため、「もう少ししたら上がりそう」と思って、下落している相場で買いを入れても、そのまま上がることなく損を被るFX初心者も散見される。
中長期のトレンドを狙う場合は、長らく上昇もしくは下落しているトレンドに沿う取引をするため、BOX相場よりもトレードの判断をシンプルに行いやすい。
FX初心者は短期向けのトレードをどう始める
FX初心者向けの短期トレード方法としては「FX初心者はスキャルやデイトレをどう始める? 専業FXトレーダーがコツや注意点を解説」にて、本ページの解説と同様に天空の狐さんに紹介してもらったので参考に。
FX初心者は取引しやすい相場条件を最優先に考える
「FX初心者は取引しやすい相場条件をまずは作るようにした方が良いと思います。上に例として挙げた豪ドル米ドルのように、『日足で判断できるほどの上昇相場』が現れたときだけ取引するという条件なら、初心者でも実践しやすいでしょう。
その取引できる相場条件を例えば4時間足や1時間足など短い時間軸などでもトレードできるようになれば、取引できる相場条件は増え、『取引の型』のレパートリーも増えることになります。ポイントは、自分が取引しやすい相場条件が来るまで、しっかり待つことです。相場は生き物のように鼓動するので、それら声に耳を傾け、自分と相性のいい相場との向き合い方を見つけましょう」
FX初心者は欲や感情に負けて、自分が取引しやすい相場条件ではないけど、なんとなく勝てそうなどの根拠でトレードしてしまうと、損をすることが多くなるため、注意してほしいという。
FX初心者上達への第2段階「投資シナリオ」を勉強
ひとつ前の「FX初心者トレード上達の第一歩『取引の型』を作る方法」の項目にて、自分で取引しやすそうな相場条件を見定め、自分に合う「取引の型」のイメージをぼんやり描けるようになっただろう。しかし、実際にトレードするまで、どのようなステップで行動すればいいのだろうか。
天空の狐さんは、投資を検討してから投資行動に移るまでの一連を「投資シナリオ」として、やることを細かく決めているという。ここでは「投資シナリオ」の作り方に関して解説する。
「投資シナリオ」とは?
投資シナリオとは「相場がこんな状況だから、こう動くだろう。だからこのように取引しよう」という一連の投資行動に対するイメージを描くことだという。
「自分が取引しやすい相場条件を決めたら、最終的にどうトレードを行うかイメージします。『投資シナリオ』は、実際のトレードまでどのような手順で進めるかを決めることです。
自分が思い描いた『投資シナリオ』どおりに相場が動くようならトレードを行い、もしそのシナリオ通りに相場が動かなければ、トレードはしません。チャンスが来れば取引するというスタイルなので、精神的にも楽な投資を実現できます」
FX初心者向け「投資シナリオ」の作り方
【FX初心者向け「投資シナリオ」の作り方】
- 取引する通貨ペア・売買方向を決める(トレンド分析)
- エントリーポイントを探す
- 利食い・損切りの目安を考えておく
「FX初心者向けのわかりやすい投資シナリオとして、上記のような3STEPで作れるものがあります。私が考える投資シナリオはさらに細かい要素で成り立ちますが、FX初心者の方はこれくらいシンプルなシナリオの方が始めやすいでしょう。
中にはチャートに多くのテクニカルツールを表示させ、複雑に相場を考える人も散見されますが、シンプルに考えることで、長期的に集中力を保ったまま相場と向き合いやすくなります」
天空の狐流「投資シナリオ」の作り方
投資シナリオは本来、為替相場だけではなく、様々な市場の状況と共に分析を行うものだという。
「FX初心者向けとして、シンプルな方法を紹介しましたが、本来は株式市場や債券市場、商品市場、仮想通貨市場など市場を多角的に分析し、シナリオを導き出します。市場分析だけではなく、ローソク足の動きやリズムなども取り入れ、分析の精度を高めていきます(本ページより詳しく知りたい方は『ALTS Investor Media』というサイトでのレポートを参照)。
また、トレードに至るまでも『マーケット構図を見る』⇒『シナリオ構築』⇒『トレード』という手順で行います。本ページでの解説は、FX初心者向けにわかりやすくするため、『シナリオを作る方法』⇒『マーケット構図の見方』と手順とは逆に紹介しています」
取引する通貨ペアの決め方・売買判断を勉強
ここでは投資シナリオ作成の第1段階である「取引する通貨ペアの決め方・売買判断(トレンド分析)」を解説してもらう。取引する通貨ペアを探し、その通貨ペアを「買い」もしくは「売り」のどちらで攻めるかを考える。
FX初心者向け「取引する通貨ペア」の決め方
取引する通貨ペアは中長期のトレンドが発生しているものの方が取引はしやすいという。目先の小さなトレンドを狙う場合、臨機応変の対応が必要となるため、FX初心者にはハードルが高い可能性があるようだ。
「大きなトレンドの中には、『小さなトレンド相場』と『BOX相場』があり、小さく短期的に変化するトレンドを追うことには経験が求められる場面もあります。FX初心者の場合は、小さなトレンドに惑わされず、大きなトレンドを狙うようにした方が、トレードはしやすいでしょう。取引する通貨ペアを選ぶときも、大きなトレンドに注目し、選ぶようにすると、FX初心者でも取り組みやすいと思います」
FX初心者が「買い」「売り」を判断する方法
「トレードは大きなトレンドに沿って、『上昇トレンドなら買い』『下落トレンドなら売り』とシンプルに決めた方がいいです。上昇トレンドだが、小さな下落トレンドを狙って売りを仕掛けたり、上昇トレンド中に急落が発生したからやっぱり売った方がいいのか、など迷いが出ると、負けが込むようになるので注意しましょう」
今のトレンドが「上昇」「下落」かパッと見で判断できる方法
大きなトレンドが発生している、と判断するためにはどうすればよいのだろうか。FX初心者でも実践できる分析方法を解説してもらう。
「日足チャートをもとに、中期トレンドは『単純移動平均線の期間55(MA55)』、長期トレンドは『単純移動平均線の期間200(MA200)』でトレンドを判断できます。主に、価格がMAより上なら上昇基調、MAより下なら下落基調、MAに価格が絡み上昇もしくは下落と判断しにくいときはBOX基調と判断できます。MA200は1年単位の長期トレンドなので、中期トレンドのMA55をもとに色々な通貨ペアをチェックしてみてください」
ローソク足のリズムによるトレンド分析も勉強
ローソク足のリズムからもトレンドを分析することができるという。
「ローソク足の陽線(上昇)と陰線(下落)の出現傾向から、規則的な展開があるかを確認し、未来のトレンドがどうなるかを予測する方法があります。例えば、陽線約5本が連続して上昇するリズムが現れ、その次に陰線約3本が連続して下落する場合、不思議と今後も同様のリズムで動くことがあります。
この分析方法は、感覚や経験により判断することが多いですが、こうした観点も用いて相場を確認すると、投資スキルの向上に役立つと思います。ちなみにプロトレーダーの中にもこうしたリズムによる相場分析を行う人はいます」
トレードの入口「エントリー価格の探し方」を勉強
投資シナリオ作成の第2段階である「エントリー価格の探し方」を紹介する。
「エントリー価格」は移動平均線を使い探す
トレードの「入口」として、新規ポジションを保有する際、FX初心者は移動平均線(MA)を頼りに、「買う場所」「売る場所」を決めることができるという。
「初心者はMA21とMA55での判断をおすすめします。価格が2つのMAより上にあれば『買い』、価格が2つのMAより下にあれば『売り』です。MAを超えて上昇もしくは下落の勢いが本格化したとき、エントリーを検討できます。
2つのMAの間で価格が推移している場合は、売買を保留するゾーンとなります。同じく、上昇・下落のトレンドがはっきりと現れていないBOX相場のときも売買は保留です。
『買い』『売り』の判断は、1つ前の見出しで解説したように、上昇トレンドなら買い、下落トレンドなら売りと決めます」
「エントリー価格」の探し方具体例
過去の相場価格を参考に、エントリー価格の探し方を具体的に解説してもらった。
「2020年1月から11月までのユーロ円を参考にエントリー価格の探し方を紹介します。ユーロ円の日足チャートを見ると、下落トレンド(1~5月頃)⇒上昇トレンド(6~8月頃)⇒BOX相場(9~11月頃)と3種類の相場で推移していたことがわかります(解説をわかりやすくするためトレンドは大まかな把握とします)。
前章で説明したように、FX初心者は『下落トレンドでは売り』、『上昇トレンドでは買い』『BOX相場では無理をせず取引は保留』というスタンスで臨む方が取引しやすいでしょう」
下落トレンドのケース
「画像の黒い線がMA55で、紫の線がMA21です。2月中にはMA55をMA21が下回り、どちらのMAも価格が下回るようになりました。2月上旬に1度は反発したものの、1月の安値を下回り、下落の勢いが生まれたところで、エントリーを検討できます(画像左のオレンジの丸)。
その近辺の価格推移だけを切り取ってみると、アルファベットのNのようなかたちで推移していることが分かると思います。国内外の様々な投資本でも指摘される有名な形で、エントリーするときに役立ちます(イアン・コプシー氏のHARMONIC ELLIOTT WAVEも参考に)。
もう1つのエントリーポイントの候補に関しても同様に、下落の勢いが本格化したときに新規の売りポジションを持つことが検討できます」
このときのユーロ円の下落トレンドは、コロナ・ショックの影響も大きく受けているため、相場は荒く変動している。トレンド判断となるMA55に価格がよく絡み、上昇・下落のどちらか判断しづらい場合は無理をしてエントリーする必要はないだろう。次の上昇トレンドの方が、FX初心者でも判断しやすい相場といえる。
上昇トレンドのケース
上の画像は価格がMA55を超え、上昇トレンドへの転換が起こりそうなときである。
「5月の後半から価格がMA55を超え、反落はしたものの、再度上昇の勢いが生まれたため、その近辺で買いエントリーを検討できます(画像左のオレンジの丸)」
このときはMA21がMA55を上抜く前なので、乗り遅れた人は無理をしてエントリー検討せず、次回のチャンスを待つという選択もできる。
「6月の上旬に大きく上昇して、反落しました。このとき、価格はMA21を下回りましたが、MA55よりは上にあります。しかし、ここは取引を保留しなくてはいけません(画像内の影で覆われた部分)。目線は買いですが、まだ下落を試す可能性もあるため、価格がMA21を上回るまでじっくり待ちます。
その後、7月に入ってから、価格がMA21を上回り、1度反落して上昇するという、Nの動きが確認でき、直近高値を上抜いたところで、エントリーを検討できます(画像左から2つ目のオレンジの丸)」
2つのエントリーでもNの字で推移するのは確認でき、初心者の人はこのサインを確認したところで、エントリーへの検討してもいいだろう。また、Nの字はある程度の期間を要して形成される「大きなNの字」と短期間で形成される「小さなNの字」があり、大きなN字は小さなN字より長期で推移するトレンドのサインとも考えられるので、エントリーに適したトレンドを探すには、N字の形に着目するのもひとつの手だ。
BOX相場の気配を感じたらエントリーは保留
9月中旬には、MA55を下回り、上昇トレンドは一旦終わったとも考えられる。
「10月以降は、価格がMA55とMA21を綺麗に上回ったり、下回ることが確認できず、上昇トレンドなのか、下落トレンドなのか判断しづらくなります。これはBOX相場の典型的なパターンのため、取引は控えても問題ないです。しっかりと判断ができないときは無理をしてエントリーしないように注意しましょう」
トレンド相場からBOX相場へ変わるときを察知する方法
ユーロ円のBOX相場に変化するとき、もし上図のようにNの字が完成していたなら、上昇トレンドは継続していたかもしれない。しかし、実際はNの字を作り切れず下落し、さらにMA55まで割るようになったため、BOX相場へ移行したと判断できる。
「ユーロ円がBOX相場に移行したことは、結果論ではなく、事前に察知できることでした。FX初心者の人は、『トレンド相場が再開するならNの字を完成させる』『MA21を下回る(もしくは上回る)ままではいない』などのサインをもとに、BOX相場への気配を感じるといいでしょう。
私の場合は『ローソク足の陽線・陰線の出現リズムがこれまでと変わる』、『高値・安値を更新しきれなくなる』、『1日の平均幅が減少(平均値に戻ってくる、MAとの乖離がなくなってくる)』というサインからもBOX相場への移行を意識します」
トレンド相場のようにBOX相場で取引したら負けやすくなるため注意
「BOX相場のトレードとトレンド相場でのトレードは全く方法が異なるため、BOX相場になってもトレンド相場のようなトレードをしていたら、負けやすくなります。トレンド相場を主戦場とするFX初心者の方は必ずBOX相場の兆候を見逃さないようにしましょう
上昇トレンドなら高値を更新しなくなった、下落トレンドなら安値を更新しなくなったなど、簡単に警戒レベルを上げられる判断基準をトレードの前にあらかじめ決めておくこともおすすめです」
エントリーするときは「ダマシ」にも注意
MAを使ってうまくエントリーできたと思ったが、相場はうまく動いてくれなかったということもある。為替相場には「ダマシ」と呼ばれる相場変動もあるので注意したい。
「『MAを使ったエントリー方法』というのは一般的なトレード方法のため、その動きを逆手にとり、利益を得ようとするプロ投資家も中にはいます。エントリーできそうなサインが現れても、相場に勢いが生まれず、意図した方向とは逆に動く『ダマシ』という現象が為替相場にはあります。
ダマシはトレンド転換直後などで散見されるので、『今エントリーすれば、さらに利益を期待できる!』と欲をかくと、損する可能性があります。FX初心者はトレンド転換直後ではなく、トレンドの勢いが本格化したときにエントリーするというルールを作ってもいいと思います(大きなNと小さなNを復習)。自身が描いたシナリオと冷静に向き合うよう努めましょう」
トレードの出口「エグジット価格の探し方」を勉強
投資シナリオ作成の第3段階である「利食い・損切り(エグジット価格)の目安」の考え方を紹介する。
損切り価格は「カウンターライン」が目安
損切り価格は一概にいくらとは言いづらいが、天空の狐さんは「カウンターライン」を参考にしている。
「カウンターラインとは『その価格を上回るもしくは下回ると相場の風景が変わる節目』です。
カウンターラインを決める方法は様々ですが、FX初心者でもわかりやすくシンプルに直近の高値・安値を参考にすることも可能です。また、上昇・下落のトレンドを判断する際にはMAをもとに目線を上なのか下なのかと判断するようにしましたが、それはカウンターラインを考える際にも効果的です」
カウンターラインをによって損切り価格の目安を探す方法に関しては、先ほど「エントリー価格の探し方」で参考にしたユーロ円のチャートをもとに解説してもらった。
損切り価格を「カウンターライン」で決める例
「ユーロ円で『買いエントリー候補』が2つありましたので、それぞれのカウンターラインを考えてみましょう。
損切り価格を決める参考例(1)
上の画像はひとつ目のエントリー候補をもとに、カウンターラインを考えます。エントリー価格から近い(1)の黒い横線で引いたカウンターラインは直近の安値であり、MA55を下回るラインです。また、エントリーを価格を探す際にこの場所は『エントリーを保留するゾーン』でもありました。
(1)のカウンターラインまで価格が下落した場合、目線がはっきりと上とは言いづらい価格帯まで落ちたということで、損切りをしてもいいという判断ができます(シナリオ再考のライン目安)。
(2)のカウンターラインにいたっては、そこまで下落したら、今度は上目線から下目線への判断まで求められるケースであり、損切りは絶対に行った方がいい、ともいえます。
このように直近の安値とMAをもとに、シンプルにカウンターラインを決めることもできます。
損切り価格を決める参考例(2)
ふたつ目のエントリー候補も同様にカウンターラインが引けます。(1)は直近の安値でもあり、もし価格がMA21を下回っていたら、買いエントリー保留ゾーンにも突入します。(2)はさらに下の安値であり、目線を下もしくはBOX相場に変更してもよい価格帯にまでなります」
利食い価格の目安
利食い価格も損切り価格と同様、シンプルに考える方法がベターのようだ。
「利食い価格もケースバイケースで考えなくてはいけませんが、目安としては損切り価格のように、相場の目線が変わりそうなゾーンで利食い、という方法がFX初心者でもわかりやすいと思います。
利食いは究極的には伸ばせられるだけ伸ばしたいですが、判断が鈍りせっかくの利益をゼロにしては後悔が残るので、経験を積みながらベストの価格を探せるようになると考え、『最初はシンプルな方針で始める』というスタンスでも良いと思います」
損切り価格で参考にしたユーロ円のチャートをもとに利食い価格の決め方の例を見ていこう。
「損切り価格の参考例でも使用したユーロ円の上昇トレンドのエントリー価格候補をもとに見ていきます。
利食い価格を決める参考例(1)
ひとつ目のエントリー候補から利食い価格の目安を探す場合、損切り価格を探すとき同様、カウンターラインを考えます。直近の高値が2020年1月頃の価格帯で、画像には載っていませんが、このラインは2019年の6月頃の高値でもありました。こうした過去にも高値として意識されていそうな箇所は、現在でも案外意識されることがあるので、参考にできます。
さて、このラインは上回ったものの、すぐに反落してしまいました。このラインを上回った状態を維持できなかったということで、一旦利食いをすることも検討できます。
さらに価格が下落すると、MA21よりも下になります。ここは何度も説明しているように、目線が買いとははっきりしない価格帯になりますので、ここでも一旦利食いを検討できます。これ以上我慢すると、エントリーポイントよりも下になる可能性があるので、反発する可能性を“期待”するより、利食いを優先しても、根拠としては問題ないでしょう。
利食い価格を決める参考例(2)
ふたつ目のエントリー候補では、高値ラインが2020年の期間にはないので、2019年3月頃まで遡ります。その後の推移を見てもわかる通り、案外過去のラインを意識されることがあります。ここのラインを越えられなかったから、一旦利食いをする、という選択肢が検討できます。
このラインで利食いをせず、少し我慢したら、売買保留ゾーンに突入します。ここはひとつ目のエントリー候補のケースと同様に、利食いをしても問題ありません。
利食いをした後に再度上昇が始まったら、という考えを持つかもしれませんが、それなら、高値ラインを超え上昇が再度本格化した際に、エントリーすれば良いです。そのケースを想定するなら、『売買保留ゾーンに突入したあと、高値ラインに再度接近するも反落』『売買保留ゾーンで止まらず、一気に下落』という可能性も考慮しなくてはいけません。
自分の都合のいいシナリオばかりが頭を巡るようなら、利食いをして、利益を確保する方がFX初心者は最善です。
利食い価格と損切り価格の比率は2以上:1以下
利食い価格と損切り価格の比率は、資金管理にも繋がるため、注意が必要だ。
「利食い価格は2以上:損切り価格が1以下となるように、意識した方がいいでしょう。損切りまでのラインが70pipsだった場合、140pips以上の利益は狙うようにしたいところです。エントリーポイント次第で、損切り・利食いのバランスは変化するので、なるべく損切り価格を低くしたいならエントリーポイントは入念に検討しましょう(もしくは取引額を小さくすることで、損切りとなった場合の損失額を軽減できます)。
また、中長期トレードの場合(四半期をベース)、損切りの最大ラインは250pips程度を目安に考えてもいいです。慣れてくれば、エントリーしてから含み益がうまく乗らないようだったら、すぐに損切りしても構いません。それはエントリーポイントが悪かったという判断のもと、再度エントリーポイントを探してもいいでしょう」
利食い価格を大きめに設定してるからといって、損切りを何度も行えば、もちろん損失が膨れ上がり、取り返せなくなる可能性が出てくるので、「入口」の見極めは重点的に練習した方がいい、と天空の狐さんは語る。
相場分析力がUPする「マーケット構図」も勉強
どんな通貨ペアが今後上昇するのか、下落するのかを分析する場合、「マーケット構図」を把握しておくと、分析がしやすくなると天空の狐さんは言う。ここではマーケット構図に関して解説する。
通貨ペアの相関によるマーケット構図
何かの通貨価格が上昇すれば、別の通貨価格が下落するなど、FXでは通貨間の価格に相関性があるといわれているが、FX初心者はまずどの相関性に注目すればいいのだろうか。
「日本円、ドル、ユーロ、ポンド、豪ドルなど、通貨は様々ありますが、最も注目すべきはドルを中心とした通貨ペアです。世界で最も取引されるユーロドルや次に取引高の多いドル円は特に注目すべきです。
現在の為替市場の大きな流れを確認するなら、対ドルの通貨ペア(ドルストレート)を確認することがベストです」
為替市場の大きなトレンドを確認する際には、ユーロ円やポンド円、豪ドル円といったクロス円(ドル円を除く)の通貨ペアは、活用しない方がいいとも指摘する。クロス円はドル円の動きにも左右されるため、為替市場の大きな流れを把握するという点では対ドル通貨ペアの方が、FX初心者にとってわかりやすいといえる。
対ドルの通貨ペアを見れば何が分かるのか
一般的な対ドルの通貨ペアは、ユーロドル、ドル円、ポンドドル、豪ドル米ドル、NZドル米ドルが挙げられるが、これらの相関性から何が分かるのか。
「取引高の多いユーロドルやドル円を見るだけでも、市場の『ドル安』『ドル高』『円安』『円高』といった大きな流れを把握することが可能です。円安・ドル高の大きな流れが為替市場で生まれているなら、ドル円は上昇するだろうからドル円の買いを検討できる、といったイメージです」
FX初心者向け対ドルの通貨ペアからわかる「為替市場の大きな流れ」
FX初心者でもイメージがつきやすいように、ユーロドルとドル円の上昇・下落パターンによる「為替市場の大きな流れ」を紹介してもらった。
【ユーロドルとドル円の上昇・下落から分かる「為替市場の流れ」】
- ユーロドル↑&ドル円↑:ドル安、円安、ユーロ高
- ユーロドル↑&ドル円↓:ドル安、円高、ユーロ高
- ユーロドル↓&ドル円↑:ドル高、円安、ユーロ安
- ユーロドル↓&ドル円↓:ドル高、円高、ユーロ安
※「↑」が上昇、「↓」が下落
注目したいのは「ユーロドルが上昇、ドル円が下落」のように、ユーロドルとドル円が逆の動き(逆相関)をしているときは、ドル安もしくはドル高が綺麗に働いている状況となりやすい。「ドル安」もしくは「ドル高」がわかりやすく現れている相場状況なら、FX初心者でも取引しやすい環境になっている可能性が高い。ドルストレート通貨が複数ペア、一方向に動いていると、その動きは本物可能性が。
株式市場・ドル・債券価格の相関によるマーケット構図
株式市場や債券価格とドルの相関も見ながら、マーケット構図を把握する方法もある。株式市場は主に米株市場が指標として活用しやすいため、FX初心者は「NYダウ」や「S&P500」を頼りに株価の方向性を判断することもできるという。
NYダウとドルの傾向でマーケット構図を把握する方法
「為替市場は株式市場や債券市場などとも相互に影響しており、電車のようにつながっています。マーケット構図のパターンとしては、『株高、ドル高』『株高、ドル安』『株安、ドル高』『株安、ドル安』の4つあります。最低限の関係性を知っておくだけで、FX取引に活かすことも可能です。
2020年の米大統領選後の11月の各相場に目を向けると、マーケット構図は『NYダウは上昇基調⇒株高』、『ユーロドルは上昇基調⇒ドル安』と判断できます。株高、ドル安の構図が主として展開している最中はそのトレンドに乗り取引することも可能です。しかし『株高、ドル高』に変化したら、マーケット構図が転換を迎えている可能性があるため、様子見もしくは決済を行うという判断でも問題ないでしょう。
自分が想定しているシナリオと現在の相場状況が異なるようなら、無理をして投資しないよう注意しましょう」
株式市場や債券価格とドルの傾向でマーケット構図を把握する方法
「株と債券(ここでは主に米国市場を想定)、ドルの相関性は例えば下記のようなケースがあります。
【米金利とドル、米株の相関性】
- 米金利↓(米債券価格↑):ドル安や外需輸出企業株価↑に波及
- (例えばアメリカの景気が冷え込み、米金利を下げた場合、ドルよりも金利の高い通貨が魅力的に&企業や個人の資金調達がしやすくなり、株価の下支えに⇒結果としてドル安と外需輸出企業の株価に好影響)
- 米金利↑(米債券価格↓):ドル高や内需輸入企業株価↑に波及
- (例えばアメリカが好景気で米金利を上げた場合、他の低金利通貨よりもドルが魅力的に&企業や個人は株などのリスク資産よりも債券や預金などに資金を移動⇒結果としてドル高、一部企業の株価は下落するが、輸入系企業はドル高に伴いコストが抑えられ株価に好影響)
※「↑」が上昇、「↓」が下落
※実際は景気サイクル等によりこのように推移しない可能性もあるが、マーケットの相関性による一般論を紹介
FX初心者の人は、簡単な知識として上記の関連性を覚えておくことでも、取引に活かせる可能性があります」
株・為替・債券・金/原油・仮想通貨の相関によるマーケット構図
機関投資家やプロの投資家などは、様々な市場に資産を分配し、注目を集める市場に資産を移動することもある。どの市場がマーケット構図の主役となっているのか、見極めることで、今後のトレンドを予測することも可能だという。
「プロの投資家は、話題のマーケットを常に意識しており、株式、為替、債券、商品(金や原油など)、仮想通貨市場(ビットコインなど)など、ひととおりの市場に目配りをしています。
プロたちの多くがどの市場に資産を分配しているかを意識すれば、『主役となる市場』が見えてきます。各市場の代表的な銘柄と特徴を覚えるだけでも、今のマーケット構図を把握することに役立つでしょう。
例えば、今の主役がNYダウであるとします。NYダウが節目となる価格帯に近づき、上昇もしくは下落が弱まった場合、その他の為替や債券などの市場もNYダウと同様に、これまでの勢いが失われている可能性があります。
こうしたマーケット構図の把握は、投資生活とのほどよい距離をとることにも繋がり、チャートに張り付かなくてもよい環境を作ることがでいます。時間を浪費せず、精神的にも楽に投資を続けるなら、マーケット構図を把握した方がいいでしょう」
トレードの手間を削減できる「FX自動売買の活用法」を勉強
FX自動売買とは、「設定した取引ルールをもとに、FXトレードを自動化させる」方法で、天空の狐さんは自身でもFX自動売買でトレードをし、自動売買のプログラムの開発まで行う。
FX初心者は自動売買をどう活用すればよいのだろうか。初心者向けの自動売買の活用法を解説する。
自動売買ならトレードの時間を削減できる
FX自動売買は、買い・売りの価格や利食い・損切りを指定し、その取引条件を満たせば、自動で取引してくれる。自動売買を活用することで、PCやスマホからチャートをチェックする時間も手間も削減できる。
こうした自動売買を提供するFX会社の中には、自身で自動売買プログラムを開発・用意しなくても、FX会社提供のサービスを使用することで、手軽に自動売買を始められるところもある。
投資シナリオを自動売買で実現することも
これまで紹介してきた「投資シナリオ」を使って、FX自動売買に取引を任せることも可能だ。
例えば上のユーロ円のトレンド(エントリー価格を探す方法で活用したチャート)においては、下落トレンドが始まったら「一定間隔の価格で売りを行う自動売買」、上昇トレンドが始まったら「一定間隔の価格で買いを行う自動売買」を仕掛けておけば、利益を狙うことも可能。
自動売買を活用するときも、「入口と出口をどうするか」が勝つためには重要となるので、「投資シナリオ作り」は手を抜かないようにしたい。
天空の狐流「FX自動売買」の活用法
FXや株・仮想通貨の専業トレーダーである天空の狐さんは、FX自動売買をどう活用しているのだろうか。下記にて自動売買の活用方法やFX初心者向けのアドバイスを紹介する。
天空の狐さんは自動売買でどんな運用をしている?
「トレンド相場用・BOX相場用それぞれの自動売買戦略を練り、現状の相場環境に合わせて自動売買は稼働させています。機械的に取引した方がいい相場というのは年に何度もあるので、そうしたときは自動売買に任せた方が精神的にもラクに稼げるときがあります。
また、投資シナリオは大筋間違っていないのに自分で取引したらなぜかうまくいかない、という『相性の悪い銘柄』はどうしても存在するもので、そうしたときに自動売買を活用することもあります」
天空の狐さんおすすめのFX初心者向け自動売買は?
「FX初心者は『トレンド相場ならトレンド向きの自動売買戦略』『BOX相場ならBOX向きの自動売買戦略』をしっかり理解して稼働させることが重要です。
これは『投資シナリオ作り』で紹介した『今の相場は上昇・下落・BOXのどれか』『買い・売りのどちらで攻めるべきか』というで考えたを身に付けていれば、難しくないはずです」
天空の狐さんが考える「自動売買でうまくいくコツ」は?
「安定的に利益を生みやすい自動売買は、『シンプルな自動売買戦略である』ことが多いので、そうした観点で自動売買の戦略を選ぶ・作成するのもいいでしょう。
また、相場変動幅(ボラティリティ)が大きいときに損失が少なく、収益を残しているものも、優秀な自動売買として今後も利用を検討できます」
FX初心者はどんな点に注意すればいい?
「FX初心者が特に注意してほしいのは『過去実績を鵜呑みする』ことです。過去実績は過ぎ去った相場のパフォーマンスであり、今の相場環境に適応した自動売買戦略を選び続けないと、負けてしまいます。
また、巷のバックテスト結果を判断する技術も養いましょう。勝率100%など好都合な結果だけを切り抜き、あたかも今後の相場でも活用できるように紹介しているサイトやサービスもあります。トレンド相場向きの自動売買はBOX相場では負けるし、BOX相場での自動売買がトレンド相場でうまくいくとは限りません。
FX初心者は過去の利益に囚われず、中立公正に『今の相場でその自動売買が通用するのかどうか』を考えるようにしましょう」
まとめ
専業トレーダーである天空の狐さんに、初心者がFXトレードに関し勉強する上で、どんな点に注目すればよいのかを紹介した。ここでは基礎となる点をひととおり紹介したので、自身で実際にトレード経験を積むことで、自分に合う取引方法を見つけやすくなるだろう。
取引の経験をリアルトレードで積む際は、無理をせず小さな取引量から始めることをおすすめする。
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