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FX初心者はスキャルやデイトレをどう始める? 専業FXトレーダーがコツや注意点を解説

 FXのトレーディング手法の中で「スキャルピング」や「デイトレード」は有名なものの、どう始めればいいのか悩んでいる人もいるだろう。本サイト「マネーポストWEB」にも寄稿する専業トレーダー「天空の狐」さんが、FX初心者でも始められるスキャルピングやデイトレードのやり方、トレードのコツ、注意点を解説する。

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解説者PROFILE

天空の狐
天空の狐

天空の狐(てんくうのきつね):FXや株、仮想通貨のトレーダーで、PythonやMT4・MT5による自動売買の開発も行う。ドイツ企業INTALUS.日本代表、ドイツ金融アルゴリズムTradesignal日本代表を経て、専業トレーダーに。オルタナティブ投資のメディア「ALTS Investor Media」でもマーケットレポートを配信中。Twitter:@firmamentfox

■IFTA国際テクニカルアナリスト連盟・認定テクニカルアナリスト

■ESTA名誉会員(日本人で唯一)

ヘンリー・ビジネス・スクール ヘッジファンド・プログラム修了

ヘンリー・ビジネス・スクール ヘッジファンド・プログラムのアドバイザー従事

    【目次】

  1. 1.スキャルピングやデイトレードの長所・短所
    1. スキャルピングとは
    2. デイトレードとは
    3. スキャルピングやデイトレードの長所
    4. スキャルピングやデイトレードの短所
  2. 2.FX初心者はスキャルやデイトレをどう始める?
    1. 短期トレードは「投資判断」「分析力」が重要
    2. スキャルやデイトレ習得を助けるトレードステップ
  3. 3.FX初心者向けデイトレードのコツ
    1. 投資シナリオの準備(目線決め)
    2. 投資シナリオの完成(エントリー価格を探す)
    3. シナリオどおりに相場が動いたらトレード
    4. NY時間が終わるまでになるべく決済をしてしまう
  4. 4.FX初心者向けスキャルピングのコツ
    1. 1分足もしくは5分足でトレード
    2. スキャルピングは本格始動の前に修業することがおすすめ
    3. 損切りは躊躇しない
    4. 短期ローソク足で価格推移のリズムをつかむ
    5. 転換シグナルは見逃さない
    6. チャートから離れる時間も意識する
  5. 5.FX初心者必見のスキャル、デイトレ注意点
    1. シナリオどおりに相場が動かなければトレードしない
    2. 1日の平均変動幅を超えた場合は注意
    3. 月初や月末など「月単位」の特性もチェック
    4. 「曜日の特性」を把握
    5. 「東京」「欧州」「NY」の時間帯の意識を高く持つ
    6. エントリー後プラスになるのが遅ければ損切りを検討
    7. トレードは1日数回程度まで
    8. トレード後には必ず反省を行う

スキャルピングやデイトレードの長所・短所

 FXトレード手法の「スキャルピング」や「デイトレード」について特徴を見ていこう。

スキャルピングとは

 スキャルピングは、数銭~数十銭の細かい値幅で決済を行うトレード手法。新規でポジションを保有してから、最短では数秒程度で利益確定もしくは損失確定を行う。

デイトレードとは

 デイトレードとは、「1日で新規取引⇒決済取引を完結させる」トレード手法。スキャルピングのように数分単位のトレードは行わないが、その日中にポジションを決済するので、短期トレードの1種とも考えられる。

スキャルピングやデイトレードの長所

【スキャルピングやデイトレードの長所】

  • ポジション保有リスクを限定できる
  • テストトレードがしやすい

 スキャルピングの長所は「ポジション保有リスクを限定できる」「テストトレードがしやすい」という2点が考えられる。

ポジション保有リスクを限定できる

 短期トレードはポジション保有リスクを長期トレードより限定できる。現時点では穏やかに推移している相場でも明日には大荒れの相場になる可能性があり、スキャルピングやデイトレードはそうした相場変動による損失の可能性を軽減できる。

 長くポジションを保有すれば、金利変動リスクやロスカットリスク、追加証拠金(追証)によるリスクなどにも晒される可能性があるが、短期トレードはこれらリスクに関しても対応しやすいといえるだろう。

テストトレードがしやすい

 短期的なトレードは、市場の動きと自分の予想が合致しているのか、というテストも行いやすい。

 ポジションを保有することで相場の先行きや相場の勢いに関するイメージはより具体的になり、自身の相場予想を強化することができる。

 何ら根拠を持たず、単純にトレードを重ねるだけでは損を増やすだけになるかもしれないので、その点初心者は注意が必要だが、トレードから得られる情報は有効活用できるケースが多いことも覚えておきたい。

スキャルピングやデイトレードの短所

【スキャルピングやデイトレードの短所】

  • トレード技術が求められる
  • 欲や感情に左右されない精神力が必要

 スキャルピングやデイトレードといった短期トレードは「トレード技術が求められる」「欲や感情に左右されない強い精神が必要」という2点があることにも注意したい。

トレード技術が求められる

 短期トレードは「チャート分析力」「取引ルール」などが高度な水準でないと、利益を獲得することは難しい。為替相場のレートは、短期間になればなるほど、素早く動き予測が難しくなる。その中で、的確に利益確定・損切りを行う必要があり、スキャルピングの場合はこれを何十回とこなすため、特に高いトレード技術が求められる。

 一般的に初心者が投資を行う際、長期投資がおすすめされるのは、こうしたトレード技術を持ち合わせていない状態でも利益を狙えるためである。

欲や感情に左右されない強い精神が必要

 短期トレードは高いトレード技術に加え、強い精神力も必要である。スキャルピングでは数十回もの細かいトレードを行う中で、「なんとなくもう少し保有してみよう」「今買いポジションを持てばうまくいきそう」といった感情に流されては、安定した利益を残すことはできない。

 デイトレードはスキャルピングほどトレード回数は行わないことが多いものの、「昨日は取引がうまくいったから、今日もたぶん大丈夫だろう」などの淡い欲でトレードしてしまっては、損する可能性は高くなる。

 短期トレードはトレードルールを厳格に守るメンタルがなければ、ただ短期間で何度も取引するだけで、むしろリスクを増やしてしまうトレードになってしまう。

FX初心者はスキャルやデイトレをどう始める?

 スキャルピングやデイトレードはFX初心者におすすめできるのか、を考察する。

短期トレードは「投資判断」「分析力」が重要

 短期トレードは、相場状況に応じて素早く「投資判断」を行う必要があり、経験が浅い初心者や未経験者が適切な投資判断をすることは難しいと思われるため、安易におすすめできない。

 また、「投資判断力」を支える「分析力」も未熟では、スキャルピングやデイトレードを行っても、儲かることはできないだろう。

 FX初心者でこれからスキャルピングやデイトレードを習得したいなら、「分析力」と「投資判断力」の2つを磨くことから始めてみては

 別記事では、FX初心者向けに「FXのトレード方法をイチから勉強する方法」を紹介しているので、こちらも参考に。

スキャルやデイトレ習得を助けるトレードステップ

「分析力」と「投資判断力」を磨くためには、取引を(1)「マーケットがどう動くかというシナリオを考える」(2)「シナリオ通りに動くことを確認」(3)「トレードする」という3つのステップを踏むように心掛けるといい。

 FX初心者は(2)を甘く行うケースが散見される。特にスキャルピングやデイトレードは「うまくいけば短期間で儲けられる」という欲に誘惑される可能性が高く、(2)をおざなりにして大損する人もいる。

 スキャルピングやデイトレードを習得する方法は様々あるが、以下では私のトレード実績や様々なトレーダーを見てきた経験に基づき、トレードにおけるコツや注意点を紹介する

FX初心者向けデイトレードのコツ

【デイトレードのコツ】

  • 投資シナリオの準備(目線決め)
  • 投資シナリオの完成(エントリー価格を探す)
  • シナリオどおりに相場が動いたらトレード
  • NY時間が終わるまでになるべく決済をしてしまう

 デイトレードの方からFX初心者向け取引におけるコツや注意点を紹介する。

投資シナリオの準備(目線決め)

【投資シナリオの準備(目線決め)】

  • 取引する通貨ペアを決める
  • 目線を決める

 投資シナリオの準備とは、「現在の相場がどういう状況」で「どういった条件で取引をスタートするか」を考えることである。投資シナリオを作るまでの参考例をここでは紹介する。

取引する通貨ペアを決める

 取引する通貨ペアを選ぶときは、トレンドがわかりやすく現れているものから検討したい。私の場合は株式市場や債券市場など、他市場の状況も考慮に入れて、取引する通貨ペアを選ぶが、FX初心者にはハードルが高い可能性もあるので、まずは「上昇もしくは下落トレンドがはっきり把握しやすい通貨ペア」から選ぶという方法がある。

 中でも初心者でもトレードしやすい通貨ペアは、「ユーロドル」を始めとするドルストレート(対米ドルの通貨ペア)だろう。ドル円やクロス円(ユーロ円やポンド円などの対円の通貨ペア)は取引しやすいときと取引しない方がいいときがあるので、迷っているときはドルストレートに絞って検討しても問題ない。

 トレンドのわかりやすい通貨ペアを探す方法を参考までにひとつ紹介する。下記はドル円やユーロドルといった「ドルストレート」の通貨ペア6種で、日足チャートの画像である(チャートはヒロセ通商より)。チャートには期間21の単純移動平均線を表示しており、移動平均線の上もしくは下を価格が綺麗に推移しているときは、上昇もしくは下落トレンドがわかりやすく現れているときである。

 一方、移動平均線に絡むように価格が推移しているときはBOX相場の可能性があり、FX初心者の中にはどうトレンドを判断していいかわからなくなる人もいるだろう。そういった通貨ペアは取引候補から外すということも検討できる。

ユーロドルの日足チャート

ユーロドルの日足チャート(画像はクリックすると拡大)

ドル円の日足チャート

ドル円の日足チャート(画像はクリックすると拡大)

豪ドル米ドルの日足チャート

豪ドル米ドルの日足チャート(画像はクリックすると拡大)

ドルスイスの日足チャート

ドルスイスの日足チャート(画像はクリックすると拡大)

ポンドドルの日足チャート

ポンドドルの日足チャート(画像はクリックすると拡大)

米ドルカナダドルの日足チャート

米ドルカナダドルの日足チャート(画像はクリックすると拡大)

目線を決める

「目線を決める」とは、現状の相場が「上昇」「下落」「BOX(レンジ)相場」のどの状態にあるかを判断し、買い・売りのどちらで攻めるかを決めること。

 相場が上昇しているなら目線は「上」で買いで攻める、反対に相場が下落中なら目線は「下」で売りで攻める。

 BOX相場でも、短い時間足で見れば上昇・下落は発生しているので、それにあわせて買い・売りを決めることはできるが、FX初心者でデイトレードの経験も少ないなら、最初は「BOX相場は取引しない」と決めても問題ない

 この段階で決めた「目線」は、短期トレードになったら変更するということはない。日足などの長期時間軸で決めたトレード方向は「買い」だけど、短期の時間軸では「売り」も行うということは避けるように。

※現状の相場を見て目線を決めるときは「月初・月末の特性」「曜日の特性」「時間帯の特性」も把握していると精度は向上する。後述の「FX初心者必見のスキャル、デイトレ注意点」でもまとめてあるので、のちほどチェックしてほしい。

投資シナリオの完成(エントリー価格を探す)

 直近の相場状況を確認したあとは、最初に決めた目線に沿って、エントリーポイント(新規ポジションを保有する価格)を決める。

移動平均線を活用したエントリーポイントの決め方

 エントリーポイントを決めるとき、FX初心者でも実践しやすいのは「テクニカルツール」を使った方法である。中でも移動平均線はデイトレードでも活用できる。

 例えば「期間を21に設定した単純移動平均線」で、その移動平均線を目安に価格が上抜き上昇の勢いがついたところで買う、または価格が移動平均線を下抜き、下落の勢いがついたところで売る、というルールでもトレードは可能だ。

 エントリーポイントを決める際のテクニカルツールは好みがあるので、自分に合うツールを探してほしい。ただし、シンプルな分析の方がスキルの上達は早いので、ツールは多くても3つ程度までに絞ることをおすすめする。

Nの価格推移も活用したエントリーポイントの探し方

 エントリーには価格推移の基本的リズムでもある「上昇⇒下落⇒再上昇(下落の場合は下落⇒上昇⇒再下落)を活用したエントリー」も初心者には取り組みやすいだろう。

 このアルファベットのNに似た価格推移は、国内外の様々な投資本でも指摘される有名な形(イアン・コプシー氏のHARMONIC ELLIOTT WAVEはとても参考になります)。

 目線を「上」に設定したケースで、15分足からNの形をもとにエントリーポイントを決める参考例を紹介する。FX初心者は移動平均線も活用すると、エントリーポイントを検討しやすくなるだろう(チャートはヒロセ通商、移動平均線は先ほどと同じく期間21の単純移動平均線)。

移動平均線を価格が追い越し⇒調整期間を経て⇒上昇の勢いが増す相場リズム。エントリー目安は丸印のあたり

【例1】移動平均線を価格が追い越し⇒調整期間を経て⇒上昇の勢いが増す相場リズム。エントリー目安は丸印のあたり(画像はクリックすると拡大)

 1つ目の例は、移動平均線の下に価格があり、移動平均線を追い越してトレンドが生まれ、調整で少し下落したのち、本格的なトレンドが始まる、という価格推移。調整後の再上昇でうまく勢いに乗れるポイントでエントリーをするイメージ。

移動平均線に近づき反発するというイメージのもと、移動平均線付近でエントリーを検討できる

【例2】移動平均線に近づき反発するというイメージのもと、移動平均線付近でエントリーを検討できる(画像はクリックすると拡大)

 2つ目は、上昇後に調整で下落することを視野に入れ、もし移動平均線のあたりで反発したらエントリーを検討する、という例。エントリーをする場合は相場が反発したことを確認してからが最適だろう。

 

 期間内における価格の平均値を表した移動平均線は過去の価格推移をビジュアルで確認できる点は初心者にとっても便利なツールだが、「移動平均線付近で必ず反発する」などとは過信しないように注意。過去の傾向だけに注目せず、「チャートの右にある余白(未来の価格)を意識する」よう心掛けてほしい。

シナリオどおりに相場が動いたらトレード

 準備した投資シナリオのとおりに相場が動いたら、トレードを始める。用意した投資シナリオどおりに相場が動かなかった場合、無理をしてトレードすることは絶対に避けてほしい。損するリスクが高まるだけである。

エントリーは成行き? 指値?

 エントリーする方法は、成行き注文でも、指値注文でもどちらでもよい。私の場合はエントリーポイント付近でアラートを設定し、アラートが鳴ったら、相場をチェックしシナリオどおりに相場が動いているようだったら、成行きでエントリーする。

 仕事に追われ、成行きでエントリーすることが難しいという人は、指値注文でもトレードは可能である。

利食い・損切り幅はどうする?

 エントリーと同時に必ず損切りの設定はしておくように。成行きで損切りすればいいと思わず必ずストップロスは入れておこう。

 デイトレードの損切り幅は平均変動幅に対して10~20%、例えば平均変動幅が100pipsなら10~20pipsとなる。

 利食い幅も平均変動幅を参考にでき、平均変動幅が100pipsで、今日の始値からすでに40pips動いている状態なら、60pipsを目安に利食いを行うというイメージ(平均変動幅については、後述の「FX初心者必見のスキャル、デイトレ注意点」の項目内における「1日の平均変動幅を超えた場合は注意」でも紹介)。

NY時間が終わるまでになるべく決済をしてしまう

 デイトレードとして「その日のうちに取引を完結する」というスタイルをとるなら、NY時間が終わるまでに決済することを最初は心掛けてもいいだろう。設定した損切り幅・利食い幅に到達する前に保有ポジションを決済し、尾を引くことなくその日のトレードを終了させよう。

 本来なら利益は伸ばせるところまで伸ばす方が理想的ではある。

 しかし、初心者の場合、決済方法を「ケースバイケース」として始めると、判断に迷いが出てうまく利益を確保できない可能性があるので、先ほど利食い幅の目安を紹介したように本ページでは敢えてルールを決める方針で紹介する。

FX初心者向けスキャルピングのコツ

 スキャルピングも先ほど紹介したデイトレードと基本的には同じ要領で取引する。「シナリオを準備」⇒「シナリオどおりに相場が動いたらトレード」というステップだが、デイトレードとは異なる点をここでは紹介する。

1分足もしくは5分足でトレード

 デイトレードと同じように日足で目線を決めた後、エントリーポイントを決める際は1分足もしくは5分足で検討する。エントリーポイントを決めるときは、デイトレードよりも相場リズムを把握することが重要となるので、トレードをする前にチャートのローソク足をしっかり確認し、相場状況を把握しておきたい。

スキャルピングは本格始動の前に修業することがおすすめ

 スキャルピングを始めるまで1か月ほど、1000通貨以下の少ない取引量で、修業期間を設けることをおすすめする。失敗をすることで、「相性の良い銘柄」「相性の悪い銘柄」「相性の良い相場局面」「相性の悪い相場局面」がわかり、「自分はどんな値動きをするときのトレードが勝ちやすいか」が見えてくる

「コツコツドカン(コツコツ利益を得て、ドカンと大きな損で貯めた利益を飛ばす)」「経済指標が発表される週のトレード、発表後のトレードの違い」「その他突発的な相場変動による勝ち・負け」などFX初心者が陥りやすい失敗を修業期間で経験することで、本番のトレードではその失敗を繰り返さないようにしたい。

損切りは躊躇しない

 スキャルピングはエントリーしてから、投資シナリオどおりに相場が動かなければ、すぐに損切りをしてもいい。損切りをスムーズにできないようなら、先ほど紹介したスキャルピングの修業期間中に克服するようにしておきたい。

 スキャルピングの損切り幅は2~10pips程度が目安にはなるが、トレード経験を重ねることで、自分に最適な損切ラインが見えてくるだろう。

短期ローソク足で価格推移のリズムをつかむ

5分足のローソクから上昇・下落のリズムを見て、価格がどう推移するかイメージする(画像はクリックすると拡大)

5分足のローソクから上昇・下落のリズムを見て、価格がどう推移するかイメージする(画像はクリックすると拡大、チャートはヒロセ通商)

 スキャルピングは相場のリズムをつかむことで、エントリーに活かすことができる。5分足で直近における陰線・陽線がどう出現しているかを確認し、上昇・下落のリズムを見ると、今後価格がどう推移するか、どこでエントリーした方がよいか、という予想が立てやすくなる。

 価格推移のリズムをつかむやり方は、(1)ローソク足のリズムを確認する箇所は「トレンドの形成が明確になったとき」からで、(2)日足で「今日は陽線もしくは陰線のどちらになるか」をイメージする、(3)短期足(15分足や5分足)で直近のローソク足のリズムをカウントする、というステップ。

 例えば(2)今日は陽線が形成されそうとわかり、(3)短期足でローソク足を見ているとき、陽線が5~7本(上昇リズム)、陰線が3~4本(下落リズム)という間隔で推移し、陰線の2本目が形成されている状況なら、「あと2本陰線が作成されれば、反発し始めるかもな」とイメージできるようになる。

 感覚的なものなので、身に付けるまで練習する必要はあるが、スキャルピングに限らずデイトレード及び中長期トレードにもこうした相場のリズムは活かすことができる。

転換シグナルは見逃さない

左から十字線(クロス)、ハンマー(とんぼ)、逆ハンマー

左から十字線(クロス)、ハンマー(とんぼ)、逆ハンマー

 ローソク足の転換シグナルはスキャルピングでも有効活用できる。ハンマー(とんぼ)や十字線(クロス)は、相場が反転する可能性を示唆しているので、確認できたら「シナリオを再考すべきかどうか」など注意しておきたい。

 トレーダー仲間にはローソク足のアルゴリズムだけで取引する人もいるほど、ローソク足の形状は意外と活用できる。

チャートから離れる時間も意識する

 平日24時間動いている為替相場だが、チャンスは24時間あるわけではない。早く取引を完結できるスキャルピングは「どの相場でも利益を狙いやすい」というのは大きな間違いである

 PCの前に張り付いて、チャートをずっと見続ける必要もない。自分の構築した投資シナリオではNY時間でのトレードが適切と思えばそれ以外の時間はチャートを見なくてもOKで、私自身、欧州時間やNY時間を主戦場としているため、東京時間はPCの前から離れていることも多い。さらに言えば、描いた投資シナリオが来るのは明後日以降だなとわかるようになれば、チャートを見ない日もある。

 テクニックの面ばかり注目するのではなく、継続的に稼ぐトレードスタイルを身に付けるため、チャートから離れる時間を意識することをおすすめする。今後「相場とどう向き合うか」を考える上で大変参考になるだろう。

FX初心者必見のスキャル、デイトレ注意点

 スキャルピングやデイトレードを行う際の注意点も紹介する。

シナリオどおりに相場が動かなければトレードしない

 自分が想定した投資シナリオのとおり、相場が動かなければ、トレードは見送るように。これはスキャルピングやデイトレードに限らず、相場に合わせて都合のいいように投資シナリオを変えるようになれば、必ず負けるようになるので注意してほしい。

 専業トレーダーが相場状況に応じて縦横無尽にトレードするというイメージは間違いで、プロのトレーダーは利益を残した投資シナリオの中でも再現性の高いシナリオを多くストックし、そのシナリオが来たら的確にトレードし利益を伸ばすことができる人たちである。

 FX初心者の方は、まずは投資シナリオの構築とシナリオに沿ったトレードをしっかり遂行できるようになることを目指したい。

1日の平均変動幅を超えた場合は注意

 取引する通貨ペアにおける「1日の平均変動幅」を超えて動くような日は注意してほしい。「マーケットは食べ過ぎで、太って大きく動かない」というのは私の師匠の教えで、それ以上相場が動かなくなる可能性もあれば、大相場が来る可能性もある

 こういったときは一旦立ち止まり目線を再考する、もしくはスキャルピングやデイトレードの取引を休んでも構わない。

「1日の平均変動幅」は、最近の日足の変動幅をもとに計算できる。ネット検索をすれば「1日の平均変動幅」を紹介しているサイトもあるが、自身でチャートを見ながら日足の変動幅(高値-安値)で確認すれば今後自然と覚えられるようになる。

「1日の平均変動幅」に関しては、直近の高値、安値を参考にその期間内をボックスで囲み、それを現状の相場にあてはめると、変動幅の目安としても使うことも可能だ。

平均変動幅のボックスはその日のデイトレ、スキャルの辞め時の目安にも

平均変動幅のボックスはその日のデイトレ、スキャルの辞め時の目安にも

月初や月末など「月単位」の特性もチェック

 スキャルピングやデイトレードでも大きな相場の流れは把握しておいた方が収益は向上するだろう。

「月末」や「期末」にも、機関投資家やヘッジファンドのポジション整理により相場が大きく値動きする可能性があるため、警戒の意識を持つ。月末月初はそれまでのトレンドが一気に転換することもあるため、無理をする必要はなく、私も様子見することが多い。

 また 経済指標の発表や要人発言のある週は、ポジション量を半分にしてもいい。様々な思惑が交錯し、突発的に急上昇・急下降することもあるため、トレードをするにしても取引量は小さくするなど、細心の注意を払いながら取引を行うように。

 米雇用統計は日本人だけ盛り上がっている印象もあるが、機関投資家やヘッジファンドが注目する指標というのは移り変わるもので、現在はGDPや消費物価指数の方が相場への影響度は高いだろう。

 また、祝日は「欧米の祝日」に注目する。ネットで調べて、自身の手帳やスケジュールアプリに登録しておいてもいい。祝前日はポジション整理で動く可能性も大きいため、警戒が必要だ。

「曜日の特性」を把握

 投資シナリオを考える上で参考となる「曜日の特性」についても紹介する。

 基本的に、月曜日は様子見。先週の動向を受け、他のトレーダーが利食いなどを行うのか、今週は上昇・下落のどちらで勢いづくのか、などを確認する。私の場合はトレーダー仲間と週末に突如現れた情報やヘッジファンドの指針などを相談することもある。

 火曜日には市場参加者の投資指針も輪郭が見え始めるため、火曜日からテストトレードも検討する。木曜日までにはトレンドが形成され、金曜日にはそれまで形成されたトレンドに乗ってきたトレーダーたちのポジション整理なども現れるため、トレードの辞め時には注意が必要である。

 ビットコインは土日でも取引がされ、ビットコインの値動きが月曜日の値動きに先行指標として現れることもあるので、参考にすることもある。

 このように「曜日の特性」を把握した上で、週初めにはその週の流れをイメージする。今週は「上昇のイメージ」もしくは「下落のイメージ」、また「荒れそうだから様子見」といったスイングトレードのような視点も持ちながら、曜日の特性も意識して短期トレードに臨んだ方が勝率は高くなるだろう。

「東京」「欧州」「NY」の時間帯の意識を強く持つ

 FXには「東京時間(およそ8~16時)」「欧州時間(日本時間でおよそ16~翌2時)」「NY時間(日本時間でおよそ22~翌5時)」の3つの主要時間帯ごとに値動きの特徴が変わるので、これら3つの時間帯への意識はしっかりと持っておきたい。

 例えば東京時間にポジションを保有してうまく利益が乗り始めていても、欧州時間になると相場が反転し損を抱える、ということもある。必ずしも各時間帯で相場が反転するわけではないが、スキャルピングやデイトレードのような短期トレードを行うなら、普段以上に3つの時間帯への注意を怠らないようにした方が無難である。

 相場の動きを体感しておくこと。自分の目線があっているか、再考する。

エントリー直後プラスになるのが遅ければ損切りを検討

 エントリーしてから少し時間が経ってもプラス域に乗らないようなら、損切りを検討したい。そういった場合は、マーケットとの呼吸があっておらず、損切りラインまで待ったとしても、逆転する見込みが低くなりやすい。私の場合、数pips程度でマーケットとの呼吸を判断して、違和感があれば損切りを素早く実行する。

 我慢していれば相場が反転して利益が生まれた、という結果の可能性も否定できないが、そもそも我慢しなくてはいけないところで、エントリーしていることがトレードのミスであるとも考えられる

 こうした損切りが頻発するようなら、トレードを休止して、投資シナリオやエントリーポイントを見直した方が賢明だろう。

トレードは1日数回程度まで

 スキャルピングは1日に数回程度、デイトレードにいたっては1日に3回までに抑えるように。多く取引することで利益を残すトレーダーもいるだろうが、初心者の場合は、1回のトレードを大切にした方がスキルは伸びやすくなるので、1日のトレード上限回数を決めて臨んでほしい

 慣れていない人が多くのトレードをこなしたところで、疲弊して翌日のトレードが疎かになり、大損するということも考えられる。継続できる取引方法を身に付けることを第一に、無理をせずトレードに臨みたい。

トレード後には必ず反省を行う

 トレードが終わった後には、必ず反省を行ってほしい。エントリー・エグジットの際にはチャートをキャプチャーしておけば、反省する際の手間を減らせる。

 利益を出せたトレードに至るまでの「相場のリズムや形状」、「なぜその投資を行おうとしたのかという取引根拠」を振り返ることで、次に同じパターンの相場が訪れたとき、勝ちトレードを再現できる可能性が高くなる

 また、負けトレードを記録しておくことも重要で、失敗してしまった投資シナリオと取引根拠をそのときのチャートと共にプリントアウトして机に貼っておけば、損するリスクを軽減することにも繋がる。

まとめ

 FX初心者向けにデイトレード、スキャルピングのやり方を紹介してきたが、トレードの基本方針は中長期の方法と変わらないため、短期トレードがうまくいかないという人は、デイトレードやスキャルピング以外の取引方法の模索をおすすめする。

 また、本ページではFX初心者向けということで投資シナリオの考え方などは相当シンプルにしてあるが、本来なら様々な市場をもとに為替相場を分析するので、FXトレーダーであっても、株式市場や債券市場など他市場への関心を持ち、マーケット構図をよく見るようにしてほしい。

 さらに、デイトレードやスキャルピングがあわないようなら、自動売買をおすすめする。自動売買は取引戦略を精査する知見が広がるため、短期トレードにおいてもエントリー・エグジットのポイントを探す参考になる。

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