「一度会社をやめてから転職活動をしたい」
「失業保険って誰でももらえるの?」
退職後の転職活動などの場合、失業した状態のため生活費に困ってしまうこともあるでしょう。そんなときに活用したいのが「失業保険給付(失業手当)」です。
本記事では、失業保険給付の概要や対象者、手続きの方法や注意点を紹介していきます。この記事を参考にして、失業保険給付をうまく活用してください。
失業保険給付とは何か

まずは、失業保険給付の概要を紹介します。
(参考:雇用保険制度)
(参考:雇用保険手続きのご案内)
(参考:雇用保険の具体的な手続き)
(参考:生活福祉資金貸付制度)
国の雇用保険による制度
失業保険給付とは、国の雇用保険による制度のことです。
転職中など失業状態にある人に対して、失業手当を給付しています。給与明細でも目にする「雇用保険」は、失業した際に役立つものなのです。
条件を満たした人が申請することでもらえる
では、そんな失業保険は、誰でも自動的にもらえるのでしょうか。結論から言えば、条件を満たした上で、自分で申請した人のみもらえることになっています。
また、申請してからすぐにお金がもらえるわけではありません。申請した後に厚生労働省(ハローワーク)で受給資格があるかどうか確認し、受給が決定します。
ある程度の時間がかかることを覚悟しておく必要があります。
そのため、「失業してしまいお金がなく、今すぐ援助してほしい」という場合には、「生活福祉資金貸付制度」などの制度の活用を考えましょう。
あくまでも失業保険給付は、失業者が再就職を目指すための手助けとなる制度です。緊急の場合には対応していません。
どんな人がもらえるのか

失業保険給付は、いくつか条件を満たさなければ申請できません。
また、年齢や退職理由に応じて支給金額が変わります。
ここでは、条件面と給付日数・給付金額を紹介していきます。具体例もあげて紹介していきますので、失業保険給付のイメージをしてみてください。
(参考:ハローワークインターネットサービス「基本手当について」)
(参考:ハローワークインターネットサービス「就職促進給付」)
(参考:インターネットサービス「雇用保険の具体的な手続き」)
(参考:知って役立つ労働法)
条件
まずは、条件を確認していきます。
失業保険給付に必要な条件は、主に以下の3つです。
- 「失業状態」の人
- 雇用保険の加入者(加入期間の条件もあり)
- 退職の理由は自己都合・会社都合どちらでもOK
詳細を詳しく解説していきます。
「失業状態」の人
失業状態と聞いて、どのようなイメージをもちますか。
失業保険給付の失業は、あなたが思い描いているイメージと異なるかもしれません。
以下に失業の定義を引用します。
「失業」とは、離職した方が、「就職しようとする意思といつでも就職できる能力があるにもかかわらず職業に就けず、積極的に求職活動を行っている状態にある」ことをいいます。したがって、次のような状態にあるときは、失業給付を受けることができません。
- 病気やけがのために、すぐには就職できないとき
- 妊娠・出産・育児のため、すぐには就職できないとき
- 定年などで退職して、しばらく休養しようと思っているとき
- 結婚などにより家事に専念し、すぐに就職することができないとき
このように、失業とは求職活動を行っている状態のことを指します。
あくまでも転職活動中であることが条件のため、「仕事をせずにしばらく自分を見つめたい」といった場合には、失業状態とはいえません。
失業状態でない場合には、失業保険給付は受けられないので注意しましょう。
雇用保険の加入者(ただし加入期間に条件あり)
失業保険給付は、雇用保険に加入している場合のみ対象となります。
また、雇用保険に加入している方の中でも、退職日から2年前までさかのぼったうち、12ヵ月以上の加入期間(被保険者期間)が必要です。
たとえば、退職日が2020年12月30日の場合、2018年の12月30日から2年間の間で、12ヵ月以上雇用保険に加入している必要があります。
ちなみに、雇用保険の被保険者期間は、1ヵ月のうち11日または80時間以上、賃金が発生していることが必要です。
自己都合・会社都合どちらでもOK
会社を退職する場合には、自己都合と会社都合の場合があります。転職をする場合は、ほぼすべて自己都合となる点はおさえておきましょう。
会社都合とは、会社が倒産してしまったり、リストラなどで解雇されてしまう場合などが当てはまります。自分が自己都合か会社都合かを確認したい場合は、「雇用保険被保険者離職票」を参考にしてください。
多くの場合、退職した会社から受け取る書類の一つです。
「雇用保険被保険者離職票−2」という書類の離職理由を見ると、離職理由がわかります。特に「具体的事情記載欄」をみるとわかりやすいです。
もらえるためにはどんなことが必要か

失業保険を受け取るためには、手続きが必須です。ここでは、具体的な手続きの方法を紹介していきます。
(参考:ハローワークインターネットサービス「雇用保険手続きのご案内」)
(参考:ハローワークインターネットサービス「就職促進給付」)
退職した会社から「雇用保険被保険者証」「雇用保険被保険者離職票」をもらう
まずは、退職した会社から「雇用保険者被保険者証」と「雇用保険被保険者」を受け取りましょう。
特に「雇用保険被保険者離職票」は、退職後に受け取ることになる可能性も高いので、要注意です。会社から発行されない場合には、催促してみることをおすすめします。
ハローワークに行き、「求職申し込み」と「書類の提出」をする
必要書類がそろったら、ハローワークで求職の申し込みをしましょう。失業状態を証明するためにも、まずは仕事探しからはじまります。
求職申し込みが終わったら、離職票をハローワークに提出しましょう。ハローワーク側で受給資格の確認をした後に、失業手当の受給説明会の日時が教えてもらえます。
失業手当の受給説明会に参加し、必要書類をもらう
受給説明会に参加をすると、「雇用保険受給資格者証」と「失業認定申告書」がもらえます。どちらも失業手当の受給に必要な書類なので、大切に保管しましょう。
そして、失業認定日についてもお知らせがあります。
転職活動をはじめる
受給説明会が終わった後も、積極的に転職活動に励みましょう。求職をしていることが、失業手当を受給する条件の一つとなっています。
もちろん、ハローワークだけでなく転職サイトや転職エージェントの活用も可能です。
失業認定申告書を4週間に一度提出する
一度失業状態の認定を受けた後は、4週間に1回ほど、失業状態の認定を受ける必要があります。認定を受けるためには、「失業認定申告書」に転職活動の状況を記入した上で提出することが求められます。
あわせて、「雇用保険受給資格者証」も提出しましょう。申告が通れば、失業状態が続いていると認定されます。
場合によっては就職促進給付の申請をする
仮に早めに転職が決まった場合には、就職促進給付を受けられる可能性があります。
就職促進給付にはいくつか種類があるので、転職先が決まり次第ハローワークに相談することをおすすめします。
受給額はどれくらいか

続いて、具体的な受給日数や受給額についてみていきます。
(参考:ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」)
給付日数
失業保険は、失業している期間のうち認定された期間だけ受け取ることが可能です。
ここでは、自己都合退職と会社都合退職の場合にわけて、給付日数を紹介していきます。
なお、先ほどもお伝えしましたが、転職の際には基本的に「自己都合退職」となる点はおさえておきましょう。
自己都合退職の場合
– | 被保険者であった期間 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
区分 | – | 1年未満 | 1年以上 5年未満 | 5年以上 10年未満 | 10年以上 20年未満 | 20年以上 |
全年齢 | – | 90日 | 120日 | 150日 |
自社都合退職の場合、雇用保険の加入期間によって給付日数が変わっていきます。たとえば、30歳・雇用保険の加入期間が8年の場合には、90日分の失業手当が支給されることになります。
(出典:ハローワークインターネットサービス – 基本手当の所定給付日数)
会社都合退職の場合
– | 被保険者であった期間 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
区分 | – | 1年未満 | 1年以上 5年未満 | 5年以上 10年未満 | 10年以上 20年未満 | 20年以上 |
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | – | |
30歳以上 35歳未満 | 120日日 | 180日 | 210日 | 240日 | ||
35歳以上 45歳未満 | 150日日 | 240日 | 270日 | |||
45歳以上 60歳未満 | 180日日 | 240日 | 270日 | 330日 | ||
60歳以上 65歳未満 | 150日日 | 180日 | 210日 | 240日 |
会社都合退職(倒産や解雇)の場合、給付日数は変わります。年齢・雇用保険の加入期間が長くなるにつれて、給付日数が高くなるように設定されているのが特徴です。
表を見ると、30歳・雇用保険加入期間が8年の場合には、180日の失業手当が給付されます。
およそ半年は、転職活動をしながら給付が受けられることになるため、転職活動による金銭的な負担が軽くなるでしょう。
(出典:ハローワークインターネットサービス – 基本手当の所定給付日数)
給付金額

支給日数がわかったら、給付金額を確認していきましょう。
金額は「給付日数✕基本手当日額」で決まる
金額は基本的に以下のような式で決定されます。
失業保険給付の給付日数✕基本手当日額
ここでいう「基本手当日額」とは、離職した日からさかのぼって半年間の賃金(賞与以外)を合計し、180で割った額の50%〜80%となっています(60歳〜64歳は45%〜80%)。退職直前の半年間の平均月給から、一定の割合が支給されることになるのです。
手当の上限・下限額
基本手当日額は、給与が高いほど高くなりますが、上限額がある点には注意しましょう。
2020年8月1日時点で、上限額は以下のようになっています。
30歳未満 | 6,850円 |
---|---|
30歳以上45歳未満 | 7,605円 |
45歳以上60歳未満 | 8,370円 |
60歳以上65歳未満 | 7,186円 |
(出典:ハローワークインターネットサービス – 基本手当について)
たとえば、30歳未満の場合には、1ヵ月(30日)で205,500円が上限となります。もちろんこの金額以下になることも多いため、失業手当はあくまでも補助的なものと考えておくと安心です。
気をつけたいポイント

最後に、失業保険給付の気をつけたいポイントを紹介します。
必ず以下4点をおさえておきましょう。
- ハローワークで手続きをしないともらえない
- 申し込みから保険金受給までは時間がかかる
- フリーランスとして活動しはじめる場合には対象外
- 会社都合・自己都合で納得できないことがあれば、すぐにハローワークに相談
(参考:厚生労働省「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~」)
ハローワークで手続きをしないともらえない
失業保険給付は、必ずハローワークでの申し込みが必要です。自動で給付されるものではないので気をつけましょう。
また、申し込み後も受給説明会や失業認定申告などの手続きが必要になります。転職活動と合わせて、スケジュールに組み込んでおくのがおすすめです。
申し込みから受給までは時間がかかる
失業保険給付は、申請してから受給まで時間がかかります。
自己都合で退職した場合には、受給手続きをした日から原則7日経過し、その翌日から3ヶ月間を経てからでないと受給が開始されません。
「給付制限」とも呼ばれています。
給付制限があることを知らないでいると、お金の工面に困ってしまう可能性があります。転職活動時には、すぐに失業手当がもらえないことに注意しましょう。
ちなみに、会社都合の場合には3ヵ月の制限はありません。申請手続きをした日から7日後に、失業認定されます。
主婦やフリーランスとして活動しはじめる場合には対象外
失業手当は、あくまでも転職活動をしている人を対象としています。そのため、専業主婦になる方は対象外です。
また、フリーランスやその他の手段でお金を稼ぐ人も対象外となります。
もしかすると、「売上がなければ、失業手当はもらえるの?」という方や「まだ自営業になる準備段階なんだけど…」という人もいるかもしれません。
実は、その場合でも失業手当の対象にはなりません。売上がなかったり準備段階であったとしても、転職活動をしていないことには変わりがありません。
もしも、転職以外の選択肢を考えている方は注意してください。
会社都合か自己都合かしっかりと確認する
相談離職票を確認した際に、「会社都合のはずが、なぜか自己都合になっている」という場合があれば、すぐにハローワークに相談しましょう。
ここまででもわかるように、会社都合か自己都合かによって、失業手当の額や受給開始時期が大きく変わります。
また、国民健康保険などの減免措置についても違いがあります。離職票を受け取ったら、まずは退職理由を確認するのがおすすめです。
まとめ
本記事では、失業保険給付について紹介しました。ポイントをまとめると以下のようになります。
- 失業手当は申請が必要で、給付まで時間がかかる
- 4週間に1回の失業認定がないと、手当は打ち切られる
- 退職理由に納得がいかない場合は、ハローワークなどに相談
なお、本記事で紹介した情報は、記事執筆時のものです。最新の情報は、厚生労働省のサイトまたはハローワークのサイトを確認してください。
こまめに制度が変更されているため、必ず最新情報を調べましょう。