2011年の東日本大震災で千葉県浦安市の自宅が液状化現象で被災したことを機に防災への取り組みに目覚め、防災アドバイザーとして主婦目線の防災術をテレビや講演で提唱する岡部梨恵子さん。そのこだわりは財布の中身にまで及び、災害に備えるすべての要求を満たす財布を探るうち、長財布に辿り着いたという。
「2016年の熊本地震、2018年の北海道胆振東部地震、2019年に房総を直撃した台風15号などで、被災地では停電が続き、レジやキャッシュレス決済が使えず、現金を持たない人は買い物を断念せざるを得ませんでした。そんな被災時の実情を知るにつけ、ふだんキャッシュレス派でも、現金を携帯すべきだと痛感しました。
そこで私は、千円札10枚と小銭、テレホンカードや交通系電子マネー、マイナンバーカードを財布に常時入れておくようにしています。
さらにふだんの生活でポイントを逃す損をしたくないので、クレジットカード7枚、キャッシュカード3枚、各種ポイントカードもすべて収納し、小まめに使い分けています」(岡部さん・以下同)
たとえば、停電でキャッシャーが使えず、お釣りが出せない場合、一万円札や五千円札だと躊躇するが、千円札や五百円玉であれば、お釣りを断念してもダメージは少ないため、必要な物を手に入れやすい。
また、災害時、クレジットカードは通信や電力が断たれると使用不可になる可能性があるが、自動販売機なら小銭や電子マネーで事足りる。
マイナンバーカードや運転免許証などは顔写真付きの身分証明書になる。あまり知られていないが、大規模な災害時に通帳や印鑑がなくても金融機関でこれらを提示すれば、銀行で10万円、郵便局では20万円まで預貯金を引き出せる。
「さらに私は、チャック付きのビニール小袋を財布の中に入れ、そこに五百円玉1枚、百円玉1枚、十円玉3枚の計630円を入れています。これは試行錯誤の末、導き出した、硬貨で財布が重くなりすぎない必要最小限の小銭です。
また、そこに家族などの電話番号を書いた紙と家族写真を入れておくと、家族とはぐれたときに役立ちます」
災害や事故の際は冷静さを失うが、「これ1つ持って逃げれば何とかなる!」と思える財布を持てば安心できる。
「災害大国日本では、財布は最も身近な非常用アイテム。機能性重視で、なおかつバッグの中でも視認しやすい明るい色を選ぶのもコツです」
財布について「6つの質問」
Q1.財布はどこで買うことが多い?
A.通販サイト『フェリシモ』の財布(1万円)を主に愛用。
Q2.どのくらいで買い替える?
A.2年ごとに買い替えている。
Q3.現在の所持金は?
A.千円札を10枚持つのがこだわり。この日は五千円札1枚と小銭650円の計1万5650円を所持。
Q4.クレジットカードの枚数は? そのうちメインカードは?
A.10枚。『アトレ』でよく買い物をするためJREのVISAカードをメインで利用している。
Q5.現金、カード以外に入れているものは?
A.家族の電話番号メモと小銭630円をビニール小袋入りで。ほかに、身分証明書やテレホンカード、Suica、ポイントカード各種。
Q6.現金派? それともキャッシュレス派?
A.キャッシュレス決済95%:現金払い5%。
【プロフィール】
防災アドバイザー・岡部梨恵子さん/1963年生まれ。防災士・ファイナンシャルプランナー・整理収納アドバイザーなど多様な資格を生かし、主婦目線の防災術を提唱。東京都小池知事推進「女性目線の防災本」発案者。
撮影/浅野剛
※女性セブン2023年4月27日号