事実、厚生労働省が3月7日に発表した毎月勤労統計調査によると、物価上昇分を除いた実質賃金は22か月連続のマイナスとなっている。岸田政権は声高に「賃上げ」を叫んでいるが、実現しているとは到底言えない。株価がいくら高騰しても、春闘が満額回答だったとしても、大多数の国民は「貧しいまま」ということなのだ。
「このままでは国民の不満が高まって政権がますます危うくなるのは想像に難くない。岸田政権としても、賃上げを切に望んでいるのは本当でしょう。しかし、充分な利益を出せずに賃金を上げたくても上げられないような“ダメな企業”ばかりが生き残っているのがいまの日本の現状。それこそが低賃金の温床になっているという面があります」(加谷さん・以下同)
外国人投資家にとっては大バーゲンセール状態
なにより、いまの株価高騰は、企業の業績がよく、株価も賃金も右肩上がりだったバブル期のような「実態を伴うもの」とはかけ離れている。
「円相場は2021年初頭には1ドル=100円台だったものが、ここ1年の間は150円台で推移することも珍しくなくなりました。わずか2年ほどで、日本円の価値は3分の2に暴落したといえる。諸外国からみれば、いまの日本は株も不動産も、それまでの3分の2の価格で買える大バーゲンセール状態。
つまり、外国人投資家たちがこぞって日本の株を買い集め、その結果株価が上がっているだけ。そのため、今回の株高でいちばん利益を得ているのは外国人投資家なのです」
この株高で儲けを得て金持ちになったのはごく一部の富裕層と外国人だけ。1980年代は多くの国民がその恩恵を受け、誰もが「もっと景気がよくなるに違いない」と期待しすぎた結果バブル崩壊につながったが、株高に実態が伴っていないいまはもはや、崩壊するほどのバブルすらない。
ほとんどの日本人にとって「実感なき株高」なのだ。
※女性セブン2024年4月18日号