内閣府『がん対策に関する世論調査』(平成28年)によれば、がんが怖いと思う理由の上位に「治療費が高額になる場合があるから」が挙げられている。だが、その「治療費の総額」を知っている人は、どれくらいいるだろうか。怖いのは、「お金がかかること」よりも「正しい金額を知らないこと」なのだ。
怖いから不安、不安だから怖い
アメリカンファミリー生命保険会社(現アフラック)が行なった「がんに関する意識調査」(2011年)では、がん治療にかかわる費用(入院、手術、薬代など)がどの程度かかると思うかを尋ねたところ、がんにかかったことのない回答者の半数以上が「300万円以上、もしくは300万円程度」と回答した。
一方で、がん治療を経験した人の66%が「50万円程度」ないし「100万円程度」と回答。このギャップは現在も歴然と存在し、がん罹患経験のない人は「がん治療にかかる総費用」に関する知識が乏しいままだ。
そうした不安を如実に反映しているのが「がん保険」だ。高額な医療費に備えた「先進医療特約」は根強い人気を誇り、保険会社の“ウリ”になっている。
“がんになるといくらかかるかわからず心配だから、万一に備えて特約を付けておこう”―加入者の心理が働いているのだろう。「がん治療費.com」を運営する笠井篤氏が指摘する。
「『がんになったけど治療費はどれくらいかかりますか?』と相談をされる方は非常に多い。実際には、公的保険制度が適用される標準治療なら意外とおカネはかからないのですが、その事実を知らず、経済的な不安を漠然と感じている人が大勢います。がん治療にかかる自己負担の『総額』がいくらなのかを正しく知ってさえおけば、がんに関する治療費の不安も解消されるはずです」